修正アシュワーススケール(modified Ashworth scale:MAS)|痙縮評価スケール
- 公開日: 2023/12/1
修正アシュワーススケールは何を判断するもの?
修正アシュワーススケール(modified Ashworth scale:MAS)とは、脳血管障害などの疾患による痙縮の程度を評価するためのスケールです。特別な道具や検査を必要とせず、評価者による診察で簡易的にスケーリングできるため、臨床の場で広く活用されています。
痙縮は、脳血管障害、頭部外傷、脊髄損傷、脳性麻痺、多発性硬化症などにより起こる後遺症の一つで、上位運動ニューロンが障害されることで意思とは関係なく筋緊張が高まり、四肢がつっぱったり、固まったりするなどの症状を認めます。
重度な痙縮は日常生活に支障を来すこともあり、患者さんの状態に合わせて、内服治療、ボツリヌス療法、バクロフェン髄注療法(ITB療法)、神経ブロックなどの治療やリハビリテーションが行われます。適切な治療やリハビリテーションにつなげるためにも、MASを用いて痙縮の程度を評価することが必要です。
修正アシュワーススケールはこう使う!
MASでは、痙縮の程度を6つの段階に分類します(表)。評価を行う際は、患者さんを背臥位でリラックスした状態にし、痙縮がみられる四肢を他動的に伸張させたときの抵抗感によって評価します。
MASを用いると、筋緊張の状態や関節可動域などから痙縮の程度を簡易的にスケーリングすることができ、日常的な評価にも適していますが、評価者の主観や経験に左右されやすい側面をもちます。そのため、正確な評価ができないケースがあること、微細な痙縮の変化が見逃されやすいことなどがデメリットとして挙げられます。特に、治療効果を正確に反映できない可能性もあるため、MASに加えて、筋電図検査や超音波検査などを行うこともあります。
表 修正アシュワーススケール(MAS)
0 | 筋緊張の亢進はない |
---|---|
1 | 軽度の筋緊張の亢進がある。引っかかりと消失、または屈曲・伸展の可動域の最終域でわずかな抵抗がある |
1+ | 軽度の筋緊張の亢進がある。引っかかりが明らかであり、それに続くわずかな抵抗が可動域の1/2以下でみられる |
2 | より顕著な筋緊張の亢進がほぼ全可動域でみられるが、他動運動は容易に可能である |
3 | かなりの筋緊張の亢進がみられ、他動運動は難しい |
4 | 患部が固まり他動屈曲・伸展が困難である |
修正アシュワーススケールの結果を看護に活かす!
痙縮が起こると、手足の関節が変形したり、筋緊張により手足を思うように動かせなくなったりするため、患者さんは大きなストレスと負担を抱えることになります。看護師には、精神的なケアとあわせて、患者さんが治療やリハビリテーションに継続的に取り組めるように支援することが求められます。また、特にグレードが高いほど転倒リスクも高くなることから、慎重な状態観察も必要です。
痙縮は進行するケースもあります。初期評価よりも重症度が上がっていると考えられるときは、速やかに医師や理学療法士などの診療チームに報告することも大切です。
参考文献
http://jpn-spn.umin.jp/sick/g.html
●鈴木俊明:1ページ講座 理学療法関連用語~正しい意味がわかりますか? アシュワーススケール.理学療法ジャーナル 2005;39(1):65.
●辻哲也,他:脳血管障害片麻痺患者における痙縮評価-Modified Ashworth Scale (MAS) の評価者間信頼性の検討.リハビリテーション医学 2002;39(7):409-15.