Fisher分類
- 公開日: 2024/1/30
Fisher分類は何を判断するもの?
Fisher分類とは、くも膜下出血の程度から、脳血管攣縮の発生リスクを予測するためのスケールです。
脳は、頭蓋骨や髄膜(硬膜・くも膜・軟膜)で覆われ、厳重に保護されています。髄膜のうち、くも膜と軟膜の間のスペースをくも膜下腔といい、くも膜下腔に出血が起こった状態を「くも膜下出血」といいます。くも膜下出血の多くは、脳動脈瘤が破裂することで起こり、突然の激しい頭痛や意識障害を来します。脳卒中のなかでも死亡率が高く、合併症(再出血、脳血管攣縮、水頭症)が起こったり、救命できたとしても重篤な後遺症が残ったりするケースも少なくありません。
より効果的で適切な治療につなげ、予後を良好に維持するためにも、Fisher分類を用いてくも膜下出血の程度を客観的に評価し、合併症のリスクを把握しておくことは重要です。ただし、Fisher分類によるスケーリングは、くも膜下出血の重篤な合併症の一つである脳血管攣縮のリスクを予測するのに役立つとされる一方で、単純にGroupが高いほど、くも膜下出血の重症度も高くなるとは限らない点に注意が必要です。
Fisher分類はこう使う!
Fisher分類では、単純CT画像で出血の拡散の程度、脳内出血や脳室内出血の有無を確認し、くも膜下出血の程度を4つのGroupに分類します(表)。前述したように、Groupによる単純な重症度の評価ができない点に注意が必要です。脳内出血や脳室内出血の有無にかかわらず、くも膜下出血があればGroup1~3のいずれかに分類されますが、Group4に該当するのは脳内出血や脳室内出血のみを認めるケースであり、くも膜下出血はみられないかその可能性が低く、脳血管攣縮のリスクも低いと評価されます1)、2) 。
なお、Fisher分類が提唱された当時は、脳内出血や脳室内出血のみでは脳血管攣縮は起こらないと考えられていましたが3)、脳室内出血のみでも脳血管攣縮は引き起こされるとの報告も上がっており4)、近年では新たな研究結果を加味したmodified Fisher分類が提唱されています5) 。
表 Fisher分類
Group1 | 血液を示す所見がみられない |
---|---|
Group2 | びまん性の出血または血腫のある差が大脳半球間隙、島槽、迂回槽いずれでも1mmに満たない |
Group3 | 限局性の血塊または血腫の厚さが1mm以上 |
Group4 | びまん性の出血あるいはくも膜下出血はないが、脳内や脳室内出血がある |
Fisher分類の結果を看護に活かす!
脳血管攣縮は、くも膜下出血発症から数日~数週間で起こり、脳への血流が低下することで、意識状態の悪化や種々の神経症状を引き起こす重篤な合併症です。高度な攣縮の場合、脳梗塞を来すおそれもあるため、くも膜下出血の患者さんの管理を行うときは、Fisher分類による脳血管攣縮の発生リスクを把握し、予防と早期発見に努めることが重要です。
バイタルサインや検査データはもちろん、頭痛の訴えやいつもと違う様子がみられないか注意して観察し、脳血管攣縮の可能性が疑われるようであれば、速やかに医師に報告します。脳血管攣縮が発生した際は、検査や薬剤の投与などが行われることがあるため、早急に対応できるよう準備します。
引用・参考文献
1)小宮山雅樹,他:Fisher group 4の誤解.脳卒中の外科 2015; 43(3):: 232-3.2)鈴木秀謙,他:スパズムの概念および治療の変遷と現状の課題.脳外誌 2018;27(3):216-21.
3)Fisher CM,et al:Relation of cerebral vasospasm to subarachnoid hemorrhage visualized by computerized tomographic scanning. Neurosurgery 1980;6(1):1-9.
4)Claassen J,et al:Effect of cisternal and ventricular blood on risk of delayed cerebral ischemia after subarachnoid hemorrhage: The Fisher scale revisited.Stroke 2001;32(9): 2012-20.
5)Frontera JA,et al:Prediction of symptomatic vasospasm after subarachnoid hemorrhage: the modified Fisher scale. Neurosurgery 2006;59(1):21-7.