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【連載】スケール・評価基準を使いこなそう!

日本語版modified Rankin Scale(mRS)判定基準書

  • 公開日: 2020/2/4

1.このスケールは何を判断するもの?

 日本語版modified Ranking Scale(mRS)判定基準書とは、脳出血や脳梗塞などの脳血管障害、パーキンソン病などの神経疾患といった神経運動機能に異常を来す疾患の重症度を評価するためのスケールです。

 このスケールでは患者さんの状態を「まったく症候がない」状態から「死亡」まで7つの段階に分類するのみで、細かい項目がないため簡便に評価を行えるのが特徴です。また、患者さんの状態を把握するのみではなく、治療前と治療後の段階の変化、時間経過に伴う段階の変化などを評価することができます。このため、臨床現場では、このスケールの判定の変化状況が治療の有効性を示す指標として用いられることも少なくありません。
ただし、このスケールは歩行ができるか否かが大きな基準の一つとなるため、疾患を発症する以前から歩行に問題があった

 高齢者などでは病状に即した正確な判定ができないことがあります。また、評価は評価者の主観に基づくため、判定結果に偏りが生じる場合があるといったデメリットもあります。

2.スケールはこう使う!

 日本語版modified Rankin Scale(mRS)判定基準書では、神経運動機能の状態について、7つの段階に分類します。

日本語版modified Rankin Scale(mRS)判定基準書
* 介助とは、手助け、言葉による指示および見守りを意味する。
1 歩行は主に平地での歩行について判定する。なお、歩行のための補助具(杖、歩行器)の使用は介助には含めない。

篠原幸人,他:modifies Rankin Scaleの信頼性に関する研究―日本語版判定基準書および問診票の紹介―.脳卒中 2007;29:6-13.より引用

アセスメントにあたっては見るべき項目が少ないため簡便に評価できるのがメリットの一つですが、発症前の生活の状態を正確に把握しておく必要があります。外来・入院を問わず、評価を行う際には家族や施設職員などから詳しく患者さんの状態を聴取するようにしましょう。
また、このスケールによる評価は一度だけでなく、繰り返し行うことが大切です。特に重症度が上昇していると評価される場合は、治療やリハビリ方法を見直す必要がありますので注意しましょう。

3.スケールの結果を看護に活かす!

 日本語版modified Rankin Scale(mRS)判定基準書は、外来・入院問わず患者さんの転倒などのリスク予測につながるスケールでもあります。特に入院患者さんで4~5と判定された場合は転倒や転落のリスクが非常に高いため、慎重な見守りと頻回な見回りが必要であると考えられます。一方、2~3と判定された場合でも、神経運動機能に異常を来しているため転倒や転落のリスクは高いと考えて対応するように心がけましょう。

 また、経過中に判定が低下する場合は新たな異常を来している可能性もありますので、できるだけ早く医師に報告することが大切です。

参考文献

1)脳卒中合同ガイドライン委員会:脳卒中治療ガイドライン2009.一般社団法人日本脳卒中学会(2019年12月11日閲覧)http://www.jsts.gr.jp/guideline/35051.pdf
2)井建一郎他:日本語版簡易modified Rankin Scale質問票(J-RASQ)の開発と検証.一般社団法人日本神経学会(2019年12月11日閲覧)https://www.neurology-jp.org/Journal/public
pdf/059070399.pdf
3)篠原幸人,他:modifies Rankin Scaleの信頼性に関する研究―日本語版判定基準書および問診票の紹介―.脳卒中 2007;29:6-13.

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