発作性夜間ヘモグロビン尿症の重症度分類 (溶血所見に基づいた重症度分類)
- 公開日: 2023/11/7
発作性夜間ヘモグロビン尿症の重症度分類は何を判断するもの?
発作性夜間ヘモグロビン尿症の重症度分類 (溶血所見に基づいた重症度分類)は、発作性夜間ヘモグロビン尿症の重症度を評価するためのスケールです。
発作性夜間ヘモグロビン尿症は、遺伝子の後天的な変異によって造血幹細胞がクローン性に拡大することで、血管内溶血を引き起こす疾患のことを指します。発症すると、ヘモグロビン尿、貧血、黄疸などの症状を認め、白血球や血小板の減少を伴うケースや白血病に移行するケースもあります。日本では非常に稀な疾患ですが、重症例では腎障害や肺高血圧症など命にかかわる合併症が起こることもあるため、重症度を正確に評価して、治療方針を決定していくことが必要です。
なお、発作性夜間ヘモグロビン尿症の重症度分類は、医療費助成制度の対象になるかを確認する際の指標としても活用されています※。
※医療費助成制度の対象については、「発作性夜間ヘモグロビン尿症の重症度基準(平成25年度改訂)」が用いられている1)
発作性夜間ヘモグロビン尿症の重症度分類はこう使う!
発作性夜間ヘモグロビン尿症の重症度分類では、溶血所見に基づいて、発作性夜間ヘモグロビン尿症の重症度を軽症・中等症・重症に分類します(表)。
表 発作性夜間ヘモグロビン尿症の重症度分類(令和4年度改訂)
軽症 | 下記以外 |
---|---|
中等症 | 以下のいずれかを認める ◆溶血 ・中等度溶血※1、または時に溶血発作※2を認める |
重症 | 以下のいずれかを認める ◆溶血 ・高度溶血※3、または恒常的に肉眼的ヘモグロビン尿を認めたり、頻回に溶血発作※2を繰り返す ・定期的な輸血を必要とする※4 ◆溶血に伴う以下の臓器障害・症状 ・血栓症またはその既往を有する(妊娠を含む※5) ・透析が必要な腎障害 ・平滑筋調節障害:日常生活が困難で、入院を必要とする胸腹部痛や嚥下障害(嚥下痛、嚥下困難) ・肺高血圧症※6 |
※2 溶血発作とは、肉眼的ヘモグロビン尿を認める状態を指す。時にとは年に1~2 回程度、頻回とはそれ以上を指す。
※3 高度溶血の目安は、血清LDH値で正常上限の8~10倍程度。
※4 定期的な赤血球輸血とは毎月2単位以上の輸血が必要なときを指す。
※5 妊娠は溶血発作、血栓症のリスクを高めるため、重症として扱う。
※6 右心カテーテル検査にて、安静仰臥位での平均肺動脈圧が25mmHg以上。
発作性夜間ヘモグロビン尿症の重症度分類の結果を看護に活かす!
発作性夜間ヘモグロビン尿症は非常に珍しく、看護に当たる機会はほとんどないかもしれませんが、看護を行うことになった場合は、患者さんがどの程度の重症度であるか把握し、適切なケアの提供につなげられるとよいでしましょう。患者さんの訴えや症状などから、重症度の進行が疑われる場合は、速やかに医師に報告することが大切です。
発作性夜間ヘモグロビン尿症の根本的な治療は骨髄移植ですが、合併症のリスクが高いため、重症例以外では各病態に対する対症療法が中心となります2)。中等症以上の患者さんでは、抗補体薬〔エクリズマブ(ソリリス®)、ラブリズマブ(ユルトミリス®)〕が用いられることがありますが2)、抗補体療法中は髄膜炎菌による感染症のリスクが高くなることに加え、発作性夜間ヘモグロビン尿症の患者さんのなかには、白血球の減少により易感染状態にある患者さんもいます。そのため、十分な感染対策を行うことが求められます。
引用文献
2)厚生労働省:発作性夜間ヘモグロビン尿症診療の参照ガイド 令和4年度改訂版.p.23-9.(2023年10月12日閲覧) http://zoketsushogaihan.umin.jp/file/2022/Paroxysmal_nocturnal_hemoglobinuria.pdf