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胃がんへの理解を深める!―進化する治療と早期発見・予防の重要性

  • 公開日: 2026/5/29
アストラゼネカ株式会社が、「知っておきたい胃がんのいろは」と題したメディアセミナーを開催しました。ここでは、木下敬弘先生(国立がん研究センター東病院 胃外科 科長)の講演をレポートします。


胃がんの現状

 日本では、年間約100万人が新たにがんと診断されています1)。生涯でがんにかかる確率は2人に1人と言われており1)、がんの克服は国および国民にとって極めて重要な課題です。

 かつて罹患数が第1位であった胃がんですが、現在の順位は変化しています。部位別の罹患数は大腸がん、肺がんに次ぐ第3位、死亡数は肺がん、大腸がん、膵臓がんに次ぐ第4位となっています1)。しかし、順位こそ下がったものの、依然として上位に位置する身近な疾患であることに変わりはありません。

 一方で、「がんは不治の病」というイメージは過去のものになりつつあり、現在の日本における胃がんの5年生存率は約67%です2)。ただし、生存率は発見時のステージ(進行度)に左右されるため、ステージ1であれば5年生存率は90%を超えますが、他臓器への転移がみられるステージ4になると6.6%まで低下します2)。胃がん治療において早期発見がいかに重要であるかがおわかりいただけると思います。

胃がんの原因

 胃がんの最大の原因は、ヘリコバクター・ピロリ菌(ピロリ菌)の感染です。ピロリ菌の陽性者は胃がんの発症リスクが高く、喫煙や塩分の多い食事などの生活習慣が重なることで、そのリスクはさらに増大します。

 ピロリ菌に感染している場合、通常は服薬により約95%の確率で除菌に成功しますが、除菌したからといって、胃がんのリスクがゼロになるわけではありません。例えば、幼少期に感染して60歳で除菌に成功したとしても、胃粘膜が受けてきたダメージは残ります。したがって、除菌後も定期的な内視鏡検査を継続することが求められます。

 ピロリ菌の減少に伴う新たなリスクにも注意が必要です。ピロリ菌が除菌されると、これまで抑制されていた胃酸の分泌が活発になり、逆流性食道炎が起こることがあります。胃酸が食道を刺激し続けると、食道と胃の接合部にがん(食道胃接合部がん)が発生しやすくなります。

進行度に応じた胃がん治療の選択肢

 胃がんの転移形式には、リンパ節転移、血行性転移、腹膜播種の3つがあります。がんが胃の粘膜層にとどまり、転移の可能性が低い場合は、内視鏡でがんを切除できるケースも多くあります。

 リンパ節転移の可能性がある場合や胃壁の深くまで浸潤している場合は、手術により胃の切除を行いますが、がんを外科的に取り除いたとしても、肉眼では確認できないレベルでがん細胞が残存しているおそれがあります。そのため、病理検査の結果により、必要と判断した場合には、術後に抗がん剤を投与する術後化学療法を行います。

 がんがさらに進行し、手術で取り除けるかどうか判断が難しい場合や、スキルス胃がんのように手術で切除できても再発するリスクが極めて高い場合は、術前化学療法を選択します。肉眼では確認できない微小ながん細胞をあらかじめ死滅させ、がんを小さくしてから手術を行うことで、がんを残さず切除できる確率が高まりますし、本来なら胃を全摘しなければならなかった症例で胃を部分的に残せる可能性もあります。また、体力が温存されているうちに化学療法が行える点もメリットといえます。

 がんがかなり進行して、切除不能と診断される患者さんもいますが、決して手立てがないわけではありません。近年の薬物療法の進歩は目覚ましく、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬が登場したことで、個々のバイオマーカーに基づく薬物療法(個別化医療)が行われるようになりました。薬物療法を半年〜1年継続することでがんが縮小し、手術による切除が可能になるケースもあります。ただし、すべての患者さんがこうした効果が得られるわけではないため、繰り返しになりますが、やはり早期に発見し、適切な治療を受けることが重要です。

胃がん手術の変遷

 外科手術の世界では、低侵襲手術へのシフトが進んでいます。日本の胃がん手術において、開腹手術の件数は減少の一途をたどっています。代わって台頭したのが腹腔鏡手術、そして2018年に保険収載されて以降、多く行われるようになってきているロボット支援下手術です。

 従来の腹腔鏡手術では、長いお箸を使うような直線的な動きしかできませんでしたが、ロボットのサージカルアームは医師の手のように柔軟に動きます。これにより、残る臓器(周囲の組織)をほとんど傷つけることなく、がんを切除することが可能になりました。

 さらに、ロボット支援下手術にAIを搭載する研究も進んでおり、熟練した医師の質の高い手術をAIで再現できるようになってきています。

術後の経過・症状

 医療機器や技術の進歩、そして日本の外科医の熱心な姿勢やトラブルへの迅速な対処により、現在の胃がん手術の平均入院期間は約10日間にまで短縮されました。術後の合併症や死亡率も、海外に比べ極めて低い水準を誇っています。

 しかし、どれほど低侵襲で手術を行ったとしても、後遺症を訴える患者さんは多くみられます。胃を全摘した場合、15〜20%の体重減少が起こり、胃を部分的に残しても10%程度の体重減少が生じてしまうことがあります。また、食べた物が逆流したり、腸に流れ込んだりすることで起きるダンピング症状(腹痛、下痢、動悸、低血糖症状など)に苦しむ患者さんもいます。

 外来診療において、患者さんから「どうしても食べられない」「体重がものすごく減ってしまった」という声を聴くのは、私たち外科医にとって一番つらいところです。だからこそ、患者さんの生活の質(QOL)を保つことが重要であると考え、レシピ本の監修や病院敷地内のレストランと共同で専用メニューを開発するなど、手術をしてもなるべく食事を楽しんでもらえるように心がけています。

病院の選び方

 胃がんの治療を受ける際、どの病院を選べばよいかは多くの患者さんが迷うところです。手術件数も1つの判断材料にはなりますが、現在は手術だけでなく、薬物療法やバイオマーカーの測定などを含めた総合力があるかどうかが重要です。

 総合力を見極める際は、がん診療連携拠点病院に認定されているか、日本胃癌学会の認定施設であるかどうかを目安にするとよいでしょう。ほかに、現在はオンラインでも利用可能となったセカンドオピニオンを活用することも有効な手段です。

 ここまで、胃がんの現状や治療などについてお話ししてきました。患者さん一人ひとりに合わせた個別化医療や術式選択が重要視される時代ですが、何よりも大切なのは早期発見と予防であることを、最後に改めてお伝えしたいと思います。

引用文献

1)がん情報サービス:最新がん統計 1.最新がん統計のまとめ.(2026年5月22日閲覧)https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
2)がん情報サービス:最新がん統計 がん種別統計情報 胃 4.生存率 1)臨床進行度別生存率(2026年5月22日閲覧)https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/5_stomach.html

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