HIV感染症の最新動向
- 公開日: 2026/6/22
ヴィーブヘルスケアは、「ヴィーブヘルスケアの事業展望とHIV感染症の最新動向~HIV流行終結に向けた取り組みと新たな治療オプションへの展開~」と題して、記者会見を開催しました。このセミナーでは、ヴィーブヘルスケアのHIV感染症領域での今後の展望とHIV感染症の最新動向について解説されました。
HIVの領域に100%特化したグローバル・スペシャリストカンパニー
ヴィーブヘルスケアは「HIVとともに生きる人を誰ひとりとして置き去りにしない」というミッションに基づき、事業を展開しています。HIVの領域に100%特化したグローバル・スペシャリストカンパニーであり、グラクソ・スミスクライン、ファイザー※、塩野義製薬から出資を受け、HIV感染症に取り組んできました。
※現在は、グラクソ・スミスクラインと塩野義製薬のみの出資
日本におけるHIV感染症の患者数は増加傾向
日本国内のHIV感染症患者さんの累計報告数は約35,000人で、年間の新規報告数は約900人前後で、数年にわたって新規の報告が増えている状況です。また、新規報告数の30%ほどがエイズを発症しており、その割合は過去から変わっていないという課題があります。検査などを介し、少しでもHIVの新規報告数を減らしていくことが求められていると考えています。
HIVとAIDSの違い
HIVは「ヒト免疫不全ウイルス」のことを指し、感染すると免疫細胞、特にCD4陽性リンパ球を攻撃し破壊します。HIVに感染したとしても、すぐに症状が出たり後天性免疫不全症候群(AIDS:Acquired Immunodeficiency Syndrome)になるわけではありません。HIVに感染し、免疫が低下した状態でニューモシスチス肺炎などの日和見感染症や悪性リンパ腫など国が指定する23の疾患を発症した時点でエイズ発症と診断されます。
HIVは一般的な日常生活では感染しない
HIVの感染経路は主に3つあるといわれています。1つ目は、感染リスクのある性行為またはコンドームなしの性行為。2つ目は、注射薬物の使用。3つ目は、いわゆる垂直感染と言われる母子感染です。日本では、感染リスクのある性行為またはコンドームなしの性行為が、最も多い感染経路と考えられています。
血液や体液を介して感染する可能性が指摘されている一方で、トイレの便座の接触やくしゃみ、キス、ハグ、汗、食器の共有といった一般的な日常生活では感染しないといわれています1)。ただし、一般の方には認知されていないために、そこから偏見が生まれることが未だにあります。
HIVに感染したあと治療を行わないと「急性感染期」と言われる風邪に似た症状が起こり、その後体内のリンパ球が回復し、ウイルスと対抗できる免疫状況になると「無症候期」となります。エイズを発症すれば「AIDS期」となり、やがて亡くなるという経過をたどります。
無症候期は長い人では10年何もない場合もありますが、1年でエイズに至ることもあります。現在は、治療を行うことで、HIV陽性者の平均寿命が約78歳になると推測されています。
治療は、作用機序が異なる薬剤を2~4種類組み合わせて行います。初回治療は経口薬による治療が基本であり、治療によりウイルス量がコントロールされれば注射薬も選択肢になります。
ウイルスを身体から完全に除去することは現時点では難しく、治療を一生涯続けていかなければならない現状があります。治療によって体内のウイルスを一定量以下に抑え込み、その状態が6カ月以上続いていれば、性交渉による他者への感染リスクがゼロとなると報告されています2)。この考え方は、U=U(undetectable=untransmittable)といいます。まだまだ認知度が低い状態にあるため、新しい知識を広めていくことも、重要だと考えています。
重視されるQOL
HIV治療の長い歴史の中で、これまでは、患者さんの寿命を延ばすことを目標としてきました。治療が進歩し、副作用の少なさや利便性の高さ、長期的な投薬による影響が少ないものが求められるようになり、現在は、ウイルスコントロールに関してはある程度満足がいく状況となっています。近年では、患者さんの寿命を延ばしていくとともに、QOLを高めていくことも治療目標に加えられるようになっています。
ここで、国際共同エイズ・UNAIDSが出している治療目標「95-95-95 targets」3)を紹介します。
・HIVに感染している人のうち95%がHIV診療を受けている(受診・治療)
・抗HIV治療を受けている人のうち95%がウイルス抑制されている(治療によるコントロール)
しっかりとHIVをコントロールできている状況を満たしましょうということですが、ここに新たに4つ目の要素の95%として掲げられているのが、「健康関連QOLがよい状態である」というものです。疾患をしっかりコントロールしているだけではなく、HIV陽性者の方が自分自身のQOLが高いと認知できることが重要だとされているのです。
実際にHIV陽性者を対象に行われた調査では、全体的健康、身体的健康、精神的健康、性的健康のどの項目においても、「至適」と回答した人は60%以下でした。やはり、95%という指標にはまだ一定の距離がある結果となっています。
もう1つ、QOL改善に重要な要素として、治療にHIV陽性者が関与しているかどうかが挙げられます。調査でも、治療関与度が高いほうが、健康状態が至適になりやすいことが示唆されました。医療従事者とのコミュニケーションをとることが治療に対するかかわり、意思決定につながっていると考えられています。その一方で、医療従事者と副作用や長期的影響といった内容を話すことに患者さんが抵抗を感じていることもわかっています。よりよいコミュニケーションが治療の満足度、QOLの改善に役立つといえます。
QOL改善に向けての課題
HIV陽性者は、毎日の服薬に偏見やプレッシャーといった課題を抱えているということも、調査で明らかになりました。
治療薬の服用を覚えておくことなどにストレスや不安を感じたり、毎日服用することで自身がHIVであると思い出してストレスになったりするといった回答が見られました。また、半数以上の方がHIVであることを周囲に知られないよう、治療薬を隠したことがあるといいます。プライバシーの問題によって治療薬を飲み忘れた経験がある方も、一定数いることがわかりました。
さらに、治療薬を隠したことがある方では、そうでない方に比べQOLが低い傾向にありました。HIV陽性者自身が治療薬に対してネガティブな印象をもっていると、全体的な健康状態にも影響を与えてしまうということです。
毎日のHIV治療薬の服用は、ネガティブな経験やセルフスティグマを伴い、健康アウトカム不良に関連している可能性があります。治療選択肢と治療の柔軟性をHIV陽性者に提供することは、QOL改善の促進に役立つのではないでしょうか。
引用文献
1)API-Net:感染経路(2026年5月29日閲覧)https://api-net.jfap.or.jp/knowledge/
2)Alison J Rodger,et al:Risk of HIV transmission through condomless sex in serodifferent gay couples with the HIV-positive partner taking suppressive antiretroviral therapy (PARTNER): final results of a multicentre, prospective, observational study.Lancet 2019;393:2428-38.
3)UNAID:UNDERSTANDING FAST-TRACK.Fadt-Track Targets by 2030(2026年5月29日閲覧)https://www.unaids.org/sites/default/files/media_asset/201506_JC2743_Understanding_FastTrack_en.pdf
