1. トップ
  2. 看護記事
  3. 診療科から探す
  4. 呼吸器科
  5. 呼吸器科の看護技術
  6. 血液ガス分析
  7. 血液ガスデータで呼吸状態を評価する

【連載】急がば学べ! 呼吸のしくみ

血液ガスデータで呼吸状態を評価する

  • 公開日: 2014/3/23
  • 更新日: 2020/10/22

まず、呼吸ケアの基本中の基本である、呼吸とガス交換のメカニズムをおさらいしましょう。呼吸がどのようなもので、それによって体の中でどのようなことが起こっているのかを、ここでしっかり理解しておけば、血液ガスデータの意味や病態生理を正しく把握することができます。


【血液ガスまとめ記事】
* 【血液ガス】血液ガス分析とは?基準値や読み方について


血液ガスデータが示すもの

 呼吸状態が正常であれば、動脈血は十分に酸素を含んでいなければなりません。つまり、動脈血中に含まれる酸素や二酸化炭素などの成分を分析すれば、呼吸の状態を判断することができるというわけです。それが血液ガス分析です。

 皆さんが手にする血液ガス分析の結果には、表のデータが示されていると思います。

 PaO2とSaO2からは「酸素化」が、PaCO2からは「換気」、HCO3からは「代謝(腎機能)」、pHからは「酸塩基平衡」がわかります。ここでは、主に呼吸の状態を示すPaO2、PaCO2、SaO2について述べておきます。

[PaO2

 酸素化の能力を表しています。この値が高いほど、血液中に酸素が行き渡っていることになります。PaO2は、高齢になるに従って低下していくため、年齢によってその正常値は異なります。「105-0.3×年齢」がその平均値で、正常値の目安となります。ただし、これは仰臥位の場合で、座位で測定した場合は「105-0.4×年齢」になります。

[PaCO2

 肺の換気能力および二酸化炭素を排出する能力がわかります。この値が高いと二酸化炭素が溜まっていることになり、二酸化炭素が十分に排出されない低換気の状態を示します。逆に、値が低いときは、換気をし過ぎている過換気の状態となります。

[SaO2

 血液中のヘモグロビンがどの程度酸素と結合しているかを示しています。酸素の多くは、ヘモグロビンと結合して全身に運搬されるので、PaO2と同じく重要な酸素化の指標です。

血液ガス分析で得られるデータ
(表1)血液ガス分析で得られるデータ

血液ガスデータから見る呼吸不全

 それでは、血液ガスデータから何をどのように見ていくか、呼吸不全を例に考えてみましょう。
>> 続きを読む

 

 室内気(酸素濃度21%)を吸入したとき、PaO2が60Torr以下の場合、呼吸不全と診断されます。この状態が1カ月続くと、慢性呼吸不全となります。

 呼吸不全には、Ⅰ型呼吸不全とⅡ型呼吸不全という2つの種類があります。

 1. Ⅰ型は、低酸素血症のみの病態で、PaO2 60Torr以下で、PaCO2 45Torrを超えない(正常値)もの。
 2. Ⅱ型は、低酸素血症に高二酸化炭素血症が伴っている病態で、PaO2 60Torr以下、PaCO2が45Torr以上です。

 酸素が不足しているのと同時に、二酸化炭素がうまく排出されない、つまり換気能力が低下しているということです。肺炎などによる急性呼吸不全はⅠ型が多く、慢性呼吸不全やその急性増悪、神経筋疾患の呼吸不全はⅡ型がほとんどです。

Ⅰ型・Ⅱ型 呼吸不全
(図1)Ⅰ型・Ⅱ型 呼吸不全
※Torr=mmHg。ここでは国際単位であるTorrを使用

SaO2とSpO2の違い

 前項で見てきたように、呼吸不全は主にPaO2の値で診断されますが、もう一つ酸素化の指標として大切な値にSaO2があります。SaO2は前述したように、血液中のヘモグロビンと酸素の結合率で、PaO2によって規定されます。そのため、PaO2とSaO2には一定の関係があり、それは酸素解離曲線で表されます。

 しかし、PaO2の測定には動脈血を採血する必要があり、検査が容易に行えない上に、患者さんにも苦痛を与えることになります。そのため、臨床で酸素化の状態を調べるには、パルスオキシメーターで測定した酸素飽和度がよく使われます。

 パルスオキシメーターは、センサーを皮膚にあてて測定するので、経皮的動脈血酸素飽和度といわれ、英字もSaO2の、a(artery:動脈血)がp(percutaneous:経皮的)に置き換わり、「SpO2」と表記されます。

 SpO2はSaO2とほぼ同じ値を示すので、SpO2の値を用いて酸素解離曲線からPaO2の値を推測することができます。そのため、日常的な酸素化はSpO2からチェックしています。

 ただし、SaO2は酸素と結合したヘモグロビン(酸化ヘモグロビン)と、運んでいた酸素を放出したヘモグロビン(還元ヘモグロビン)のほかに、酸素を運ぶことのできないメトヘモグロビン、一酸化炭素ヘモグロビンも測定して、酸素飽和度が算出されます。しかし、SpO2では酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンしか測定されません。

 そのため、一酸化炭素中毒の患者さんの場合には、SaO2が正常よりも低い値を示していても、SpO2は正常値になってしまうことがあるので注意が必要です。

 また、SpO2は、パルスオキシメーターの装着状態や患者さんの体動などで測定値が変化することも忘れてはいけません。

(『ナース専科マガジン2012年12月増刊号 一冊まるごと呼吸ケア』より転載)

次回は「酸素分圧(PO2)の変化を読み取ろう」について解説します。