慣性モーメント、トルクの原理を使って一人でできる! スマート体位変換
- 公開日: 2014/3/24
これまで続けてきた力任せの援助技術から、患者さん・看護者両者の身体が楽になる援助技術に変えるには、基本原理を正しく理解する必要があります。今回は援助技術に必要な基礎理論と実践方法を解説します。
まずは基本原理を押さえよう!
体位変換の実践に入る前に、いくつか知っておきたい基礎理論があります。これらを理解しておくと、援助動作をより効率的に、スムーズに行うことができます。
その1 身体はコンパクトにまとめる
スケート選手はスピンの回転速度を上げるとき、両腕を胸の前で組み、できるだけ身体をコンパクトにします。これは質量(この場合は選手の腕や脚)が回転軸の近くにある方が回転しやすいからです。こうした理論を「慣性モーメント」といいます。
同じ原理で、患者さんの身体を移動・回転させる場合においても、できるだけ身体をコンパクトにすることで動かしやすくなり、より小さな力で移動・回転させることができます。
その2 回転する力を利用する
物体を回転させるとき、その物体のどこを押すかによって、必要な力と動かしやすさが違ってきます。回転に必要な力はてこの原理と同じで、回転軸からの距離に反比例します。つまり、力を入れる場所が回転軸から離れているほど、さらに力を垂直方向に掛けるほど、少ない力で回転させることができます。このときの回転軸にかかる力の大きさを「トルク」と呼びます。
援助技術では、患者さんを「持ち上げる」場面も多く、それによって看護者が腰痛に悩まされることが少なくありません。同時に、持ち上げられることで患者さんも身体を緊張させています。持ち上げる動作を極力なくし、回転する力=トルクを利用した体位変換を行うことで、患者さん・看護者ともに負担が軽減されます。
その3 重心を安定させる
重心を安定させるには、重心の位置が低いこと、支持基底面(物体を支え持つ面)が広いこと、重心線(物体の重心を通る垂線)が支持基底面の中にあることが大切です。電車に乗っているときに足を開くと安定感が増すのは支持基底面が広がるから、といえばわかりやすいかもしれません。
同様に、体位変換時や荷物を持つときなどはなるべくその重心を身体に近づけ、自分の支持基底面の中に重心線が通るようにすると安定させやすくなります。