COVID-19パンデミックを迎えて考える、手術室での“あるべき”単回使用 -手術室勤務ナース200名のアンケート結果から見えること―【PR】
- 公開日: 2020/10/12
2020年8月にナース専科plusの会員を対象に、多くの手術室で使用されている患者の保温材や加温用ブランケット、体温測定用プローブ・センサーのCOVID-19前後の使用状況について、アンケートを行いました。回答者は200人。その結果と、そこからわかったことについて紹介するとともに、単回使用製品のリユースのリスクについておさらいします。
COVID-19流行下では、単回使用が増えている
「COVID-19感染症流行前」・「現在」・「収束後」と期間を分け、保温用ブランケット、温風式加温装置用ブランケット、体温測定用センサー・プローブの使用状況についてアンケートを実施しました。
図1 COVID-19感染症流行前の手術室での保温用ブランケット、温風式加温装置用ブランケット、体温測定用センサー・プローブの使用状況(複数選択可)
単回使用製品を使用している割合がもっとも低かったのは保温用ブランケットでした。逆に、単回使用している割合がもっとも高かったのは、体温測定用センサー・プローブとなっており、これは体内に挿入して使用するケースが多く、交差感染リスクがより一層懸念されることが要因の一つとなっていると考えられます。
温風式加温装置用ブランケットは一般的に単回使用とされていますが、「目で見て汚れがあれば廃棄していた」の割合が一番多くなっていました。
図2 COVID-19感染症流行下の手術室での保温用ブランケット、温風式加温装置用ブランケット、体温測定用センサー・プローブの使用状況(複数選択可)
COVID-19感染症流行前に比べると、単回使用している割合が、保温用ブランケットが約+5.0%、温風式加温装置用ブランケットが約+8.5%、体温測定用センサー・プローブが約+5.5%それぞれ増加しています。COVID-19感染症が流行したため、感染対策により気をつけるようになっているのかもしれません。保温ブランケットのようなリネン類については、厚生労働省から通達された「医療機関における新型コロナウイルスに感染する危険のある寝具類の取扱いについて」 に記載されているように、医療機関での再使用における労力が増加したことも原因となっていることも考えられます。
ただし、温風式加温装置用ブランケットの「目で見て汚れがあれば廃棄していた」の割合は依然として高い状況となっています。
図3 COVID-19感染症流行が鎮静化した際の手術室での保温用ブランケット、温風式加温装置用ブランケット、体温測定用センサー・プローブの使用状況(予想)(複数選択可)
単回使用の使用割合がCOVID-19感染症流行下よりも全体的にやや減少している、つまり一部の医療機関ではCOVID-19流行下では単回使用化されたが、鎮静化後は元に戻る、という結果となっています。
温風式加温装置用ブランケットは、どのような状況下であっても目で見える汚れがなければ再使用されていることが多いという実態がわかりました。
リスクを認識している看護師は6割強! 実態を変えるために知っておくべきことは?
図4 製造メーカーが再使用を禁止している単回使用製品を手術室で再使用することについての認識・意識(複数選択可)製造メーカーが再使用を禁止している単回使用製品を手術室で再使用することについての認識について尋ねたところ、下記3つの項目に関しては、6割の看護師がリスクを認識しているという結果になりました。
また、アンケートでは「医療従事者側で適切に判断・処理すれば単回使用製品を複数回利用することのリスクは高くないと考えている」という回答が少数ではありますが見られました。
今回の調査結果では多くの看護師が単回使用製品の再利用に関するリスクについて認識していながらも、単回使用が徹底されていないことが示唆され、また、認識されていない再利用に関するリスクも未だ多く残っているということがわかりました。単回使用の医療機器の取り扱いを徹底する必要があります2)。
今回アンケートの対象製品のうち、添付文書上で再使用が禁止されているのは「加温用ブランケット(温風式加温装置)」です。加温用ブランケットは「目で見て汚れがあれば廃棄している」と答えた看護師がCOVID-19パンデミック前・中・後において40%前後となっていました。単回使用製品であり、医療安全の観点から添付文書上も再使用が禁止されているという点に加え、感染症の原因となるウィルスなどは目では見えないことを鑑み、各医療機関での対応をもう一度検討してみる必要があります。
温風式加温装置用ブランケットの再使用等のリスクについてはこちらを参照:http://go.3M.com/medical/smadv02/
一方、リスクを認識していても、コストの面ですべてを単回使用することができないという実態もあるようです。
医療安全とコストのバランスの観点から、今一度、現在採用している製品やその使い方の見直しをしてみることも効果的かも知れません。
図5 保温用ブランケットや体温測定用センサー・プローブなど、単回使用製品または再使用可能な製品、どちらを選びたいか
「医療従事者にも患者にも双方にリスクがあるので、全ての患者に単回使用製品を選択したい」と回答した人が多数を占めました。
COVID-19パンデミックという誰も予想できなかった事態が発生し、その意識は強くなっていると考えられます。COVID-19流行下ですべての手術患者に対して検査を徹底することは難しく、また、COVID-19が鎮静化したとしても、今後全く新しい未知の病原体が出てこないとは言えません。 この機会に感染対策としての適切な単回使用製品の採用を検討してみましょう。
手術室は病院内でも最も感染対策が重要で、その意識の高い部門の一つと言えます。
まずは手術室看護師である皆さんが実態やリスクを正しく認識し、患者やご自身の安全のためにできることを考えてみてはいかがでしょうか?
引用・参考文献
1)平成30年度 医療安全に関するワークショップ 医療機器をめぐる安全管理と最近のトピック(2020年9月15日閲覧)https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kyushu/h30ws_siryou3.pdf2)単回使用医療機器の取扱いの再周知及び医療機器に係る医療安全等の徹底について(平成29年9月21日)
スリーエムはCOVID-19パンデミックの最前線にいる医療従事者をサポートします。
COVID-19に関する医療従事者向けの情報はこちらのURLから
http://go.3M.com/medical/FSR_mail/covi19web/