第14回 せん妄の治療やケアはどうするの?②促進因子と患者へのケア
- 公開日: 2015/12/16
- 更新日: 2021/1/6
大きな手術後やがんの終末期などに極めて高頻度にみられる「せん妄」。せん妄は、注意力や意識が低下することで患者さんが転倒・転落したり、幻覚が見えて暴れたりと治療を大きく阻害するものです。特に低活動型のせん妄は見落としがち。本連載ではそんなせん妄へのアプローチ法をやさしく解説します。
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せん妄とは? せん妄の症状と看護
今春から外科病棟に配属された看護師のAさん。担当患者さんが手術後にせん妄を発症してしまい、日夜悪戦苦闘・・・。これを機に、せん妄について体系的に勉強したいと考えています。
看護師が行なうせん妄へのケア
井上先生:「今回は、せん妄のケアについて解説しましょう。早速ですが、まずは下の図を見て下さい」
看護師Aさん:「思いのほか、できることはたくさんありそうですね」
井上先生:「そうですね。例えば、患者に日にちや時間、場所の感覚(見当識)をもっていただくことはとても重要です。よく言われていることですが、見やすい場所にカレンダーや時計を置くようにしましょう」
看護師Aさん:「置くだけでなくて、一緒に確認することも大事ですよね」
井上先生:「その通りです。看護師さんが配膳する際、『○○さん、お昼12時になったので、お昼ご飯を持ってきましたよ』などと声をかけるのも効果的です。ふだん何気なくしている声かけでも、少し工夫することで日時の感覚を確認しておくことができます」
看護師Aさん:「なるほど。ぜひやってみたいと思います。あと、『日中はカーテンを開けて部屋を明るくする』というのはわかるのですが、前の日に寝ていない患者の場合は、お昼でも少し暗めにして休んでもらったほうがいいのでしょうか?」
井上先生:「それは、家族からもよく質問されますね。家族のなかには、患者が少しでもお昼寝できるようにと部屋を暗くしておく方もおられます。もちろん良かれと思ってのことでしょうが、それによってまた夜眠れなくなってさらに症状が悪くなったり、昼夜逆転がすすんでしまうこともあります」
看護師Aさん:「ということは、やはり昼は明るく、夜は暗くというメリハリが重要なのですね」
井上先生:「それは正しいのですが、夜真っ暗にしすぎるとかえって患者の混乱が強くなったり、転倒などのリスクが高くなるので、夜は足元がわかるくらいの薄明りがよいとされています」
看護師Aさん:「なるほど。さっそく実践に活かすようにします」