第13回 せん妄の治療やケアはどうするの?①可逆性・不可逆性せん妄
- 公開日: 2015/12/9
- 更新日: 2021/1/6
大きな手術後やがんの終末期などに極めて高頻度にみられる「せん妄」。せん妄は、注意力や意識が低下することで患者さんが転倒・転落したり、幻覚が見えて暴れたりと治療を大きく阻害するものです。特に低活動型のせん妄は見落としがち。本連載ではそんなせん妄へのアプローチ法をやさしく解説します。
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せん妄とは? せん妄の症状と看護
今春から外科病棟に配属された看護師のAさん。担当患者さんが手術後にせん妄を発症してしまい、日夜悪戦苦闘・・・。これを機に、せん妄について体系的に勉強したいと考えています。
せん妄の区分
井上先生:「せん妄には「可逆性せん妄」「不可逆性せん妄」という2つの分け方があるのは知っていますか?」
看護師Aさん:「正直なところ、あまりわかっていません」
井上先生:「この概念は、緩和医療では特に重要になります。可逆性せん妄と不可逆性せん妄では薬物療法やケアの内容などが違ってくるのです」
看護師Aさん:「そうなんですね。では、具体的に教えて下さい」
井上先生:「下の表を見て下さい。
せん妄を認めた場合、何が直接因子になっているかをつきとめ、それが治療可能なものかどうかを評価することで、そのせん妄が可逆性なのか不可逆性なのかを区別することができます」
井上先生:「可逆性せん妄とは、直接因子が治療可能なせん妄のことを言います。例えば、感染が原因のせん妄であれば抗生剤の投与でせん妄からの改善が見込めますし、薬剤によるせん妄であれば原因薬剤の中止でせん妄が治りますよね」
看護師Aさん:「なるほど。それに対して、肝不全や腎不全など、進行する臓器不全に伴うせん妄は改善が難しいので、不可逆性せん妄というわけですね」
井上先生:「その通りです。ただし、確かに病状の進行に伴うせん妄は回復困難な場合が多いのですが、終末期であってもせん妄の約半分は一時的な回復が可能とされていますので、あきらめずにアプローチすることが大切です」
看護師Aさん:「わかりました。では、具体的な治療について教えて下さい」