1. トップ
  2. 看護記事
  3. 診療科から探す
  4. がん
  5. がん患者への精神的ケア
  6. 第1回 がん看護さんの相談で多いものは?

【連載】がん患者さんへの言葉かけトレーニング

第1回 がん看護さんの相談で多いものは?

  • 公開日: 2012/3/29
  • 更新日: 2020/10/22

がん患者さんが必要とする心のケアとは、どのようなものなのでしょうか。がん看護相談などの実践からは、「情報を求めている」という最近の傾向が明らかになっています。

そしてもう一つ、心のケアとして大切な役割を果たすのが、「ベッドサイドで看護師とかわす会話」です。精神看護専門看護師の川名典子さんにその理由と実践方法を聞きました。


がん患者さんは情報を求めている

─がん患者さんの抱える問題を解決するためには、何が必要なのでしょうか?

がんに罹患した場合、疾患の理解や治療について、またそれにより派生したさまざまな療養上の問題が生じます。外来・病棟の枠を超えたそれらの問題は、リソースナースなどによるがん看護相談などでフォローされており、その内容は、外来や病棟の看護師ががん患者さんの問題を理解するときの参考になるでしょう。

実際、がん看護相談で患者さんの問題を解決する際には、情報提供がとても大きな役割を果たしています。

がん患者さんが求める情報というのは、主に、

>> 続きを読む
  1. 医師から受けた説明を補うための情報
  2. 医師には相談できない情報
  3. 患者さんの日常生活や療養法に関連した看護の専門領域の情報

の3つに分類されます。

(1)についていうと、医師との面談は時間が短いため、患者さんにとっては説明が不十分だと感じられる部分があります。特に、治療による日常生活の 変化、副作用が日常生活に及ぼす影響など、患者さんが知りたいけれど聞けなかったことをもっと詳しく知りたいという場合の情報です。

また、患者さんには、適切な医療機関を選択したいという問題があります。医師に提示された治療法のほかに、どのような治療法があるのか、セカンド・ オピニオンはどのように受けたらいいのかなど、これらは患者さんにとっては医師に質問しづらい問題です。これが、(2)にあたります。

そして、(3)はまさに看護の役割である、日常生活の変化や具体的な療養生活の仕方、経済的支援策などの情報です。患者さんにとって今まで相談場所があまりなかったのが、この種の情報です。

─情報提供のほかに、がん看護相談のニーズにはどのようなものがありますか?

「精神的な面でのサポート」が、もう一つの大切な役割です。不安な思いを誰かに話したいけれども、身近には話せる人がいない。そんなとき、患者さん はとにかく自分の思いを聴いてもらえる場を求めます。その思いを聴くこと。これはメンタルケア、いわゆる心のケアとして実践されている内容です。

ただ、そのメンタルケアに関しても、心理療法的なカウンセリングが必要かといえば、そうではありません。がん患者さんが、心理的に落ち込んでいるからといっても、その理由の全てが心の問題というわけではないからです。

むしろ、前述したように、情報不足からくる不安や、日常生活の変化やこれからの人生設計が揺らぐことへの不安が、その理由であることが多いのです。そして、この不安は、自らの病気を認識したときの正常な反応であり、患者さんが精神的に病んでいるわけではありません。

これは例えば、妊婦さんへのケアと同じです。妊娠、出産は病気ではありませんが、身体的に大きな変化を伴い、人生の転換点でもあるので、不安になる のは妊婦さんの正常な反応ともいえるでしょう。

これに対しては、まず情報提供というサポートによって解決を目指します。同じように、がん看護相談で話し合 われる問題の中には、適切な情報提供によって解決方法が見つけられるものも少なくありません。「知は力なり」です。

抑うつなどの徴候をキャッチしよう

メンタルケアを専門とするリソースナースのところへは、どのような依頼がくるのでしょうか

主なものは、頻回なナースコールやそわそわしているなどの多動、徘徊、希死念慮といった問題のある患者さんへの対応です。しかし、最近目立っているのは、特別な問題行動はないけれど、医療者が対応に迷いを抱いている患者さんのケースです。

例えば、化学療法の効果が得られず、がん治療の手立てがなくなった難しい局面にある患者さんに、どう対応したらよいのか。患者さんに何かをしてあげたいが、医療者自身、何ができるのかわからない、あるいはそのスキルがないという場合に、依頼がきます。

これは、患者さんに何か「精神的なケア」が必要ではないかという医療者の気持ちの表れです。そのようなケースでは、病棟看護師などと一緒に適切なケアを考えていくようにしています。

がん患者さんの心のケアについて、そのほかに何に気を配ったらよいですか?

がん患者さんの中には、抑うつ、不安、焦燥感、そのほかの精神症状を伴う適応障害、せん妄などの精神障害を呈する人も少なくないので、その場合は精神科治療(主として薬物治療)が大変役立ちます。患者さんの精神症状の早期発見も、ナースの重要な役割です。

「何か言いたそうだが言葉にならない」「混乱している」「受け答えがチグハグ」「突然、人を不快にするようなことを言う」など、それまでの患者さんの人柄が変わってしまい、対応が難しいと感じられるようなときには、精神症状の可能性があります。

患者さんとの会話の中で、こうした徴候をキャッチしたら、精神科医、専門看護師など精神保健の専門家に相談してみましょう。

※次回は、病棟看護師が行う心のケアのポイントについて紹介します。

(『ナース専科マガジン』2010年9月号より転載)