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【連載】がん患者さんへの言葉かけトレーニング

第2回 ベッドサイドで看護師とかわす会話

  • 公開日: 2012/4/6
  • 更新日: 2020/10/21

がん患者さんの心のケアとして大切な役割を果たすのが、「ベッドサイドで看護師とかわす会話」です。では、具体的にどのように会話を進めていけばいいのか、ポイントを紹介します。


言葉のキャッチボールができるように

──日々の心のケアとして、病棟看護師は何をすればよいですか?

私は臨床経験の中で、看護師が患者さんとかわす日常的な会話、つまり言葉のキャッチボールが、患者さんの心のケアにつながると考えてきました。入院により通常の生活から切り離された患者さんにとって、看護師との会話は入院中の生活環境を整える大切な要素です。

例えば、毎朝「おはようございます」と、明るく声をかけることで、患者さんの気持ちがほっとするというのもその一つです。

また、前回述べた、がん患者さんの不安の多くを解消する情報提供に果たす看護師の役割は大きいものです。それが、日々のケアや日常会話の言葉のキャッチボールのなかで提供できるのです。看護師にはぜひ、この言葉のキャッチボールができるようになってほしいと考えています。

──具体的にどうすれば、言葉のキャッチボールができるのですか?

まずは、患者さんの気になっている事柄に焦点を当てて、患者さんとよく話すことです。看護師のほうから「何か気になることがあるのですか?」などと声をかけて、会話を始めてみてもよいでしょう。

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「食欲がなくて」という言葉を聞いたら、「いつ頃からですか?」「病院の食事はお口に合いませんか?」「何か好きな食べ物をご家族に差し入れてもらっていますか?」など、丁寧に聞きます。

そうすると、医師から化学療法の効果がなくなってきたと説明された頃から食欲がなくなっていたり、差し入れをしてくれる家族がいないなど、患者さんの食欲不振にまつわる周辺のことが少しわかってきます。

そのような会話を続けていくことで、実は自分の病状回復に悲観的になっている、在宅療養がしたくても家族との葛藤が強くてなかなか言い出せないでいるなど、患者さん自身も気付いていなかった問題が看護師との間で話し合えるようになります。さらに、それがきっかけで症状の改善や思わぬ問題解決につながることもあります。

会話は心に働きかける大切なケア

──ほかに、患者さんと会話をするときのポイントはありますか?

ぜひ、退院後の日常生活のことを聞いてほしいです。入院中の患者さんにとって、退院後の生活は一番の関心事ですし、日常生活への支援は看護師の力量が期待される分野です。大切なのは、患者さんの日常生活がまるでビデオをみているかのように具体的にイメージできるように話を聞くことです。

退院を控えた患者さんが「家に帰ったらご飯の準備が大変で」と話したとします。

例えば、「三食ともあなたが作るのですか?」「いつも食事は誰が作っていますか?」「あなたがご病気でもご家族は手伝ってくださらないのですか?」「買い物にいくスーパーは遠いのですか?」など、患者さんをとりまく環境を聞いていきます。

「料理はしたいけれど、買い物に出かけるのが大変」なのか、「夜や朝は、家族のご飯を作りたいけれど、昼間自分一人分のときの昼食を作るのがおっくう」なのか、患者さんの悩みはさまざまです。

原因が絞り込めれば、患者さん自身が何を心配していたのかが分かるので、看護師の助言も、例えば、「昼食はお弁当を配達してもらうという方法もありますよ」「スーパーのお届けサービスを利用したらどうですか?」など、現実的で的を射た対応策やサポート情報を提供できます。もちろん最後は患者さんに決定してもらいます。

会話のポイント

確かに、どの会話が、いつ、どのように患者さんに影響を与えたかということを実感することが少ないので、看護師は心のケアをしているという意識をもつことができないかもしれません。けれども、誰かと会話をすることは、人の心に必ず何かしらの影響を与えるはずなのです。

心のケアとはそういうものだと考えて、ごく普通に会話のキャッチボールを通して患者さんにかかわることが、看護師の大きな役割だと思います。

(『ナース専科マガジン』2010年9月号より転載)

※次回からは、患者さんが抱えるストレスについて病期ごとに解説します。