呼吸音の聴診 5つのポイント
- 公開日: 2013/12/26
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呼吸音の聴診は、呼吸療法におけるフィジカルアセスメントの中のフィジカルイグザム(視診・触診・打診・聴診)の1つです。呼吸音の聴診は、肺に起こっている現象をリアルタイムに把握することができ、換気状態や気道の状態(痰の貯留や閉塞等)の確認に有効です。
しかし、聴診した結果を解釈するためには正常呼吸音・異常呼吸音について理解しておく必要があります。今回は、呼吸音の聴診に関する基礎知識として
1. 呼吸音の発生機序
2. 聴診器
3. 呼吸音の聴診時の確認事項
4. 正常呼吸音
5. 異常呼吸音
について解説します。
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■【呼吸】聴診スキルアップ!(聴診部位など)
■異常呼吸音(副雑音)の種類とアセスメント
■呼吸音を正しく聴取するための4つのポイント
ポイント1 呼吸音の発生機序
気道内に空気が入ることで気流が発生し、乱流成分や渦流成分が音源となって発生すると考えられています。気管支第9次分岐程度(気管〜細気管支)までの気道で発生した音が、胸壁に伝搬し肺胞呼吸音として聴かれると考えられています。
ポイント2 聴診器について
図 聴診器の名称
図 聴診器のつけ方
【ベル型】
低音域の聴取(心音3,4音)にすぐれている
※あまり強く押し付けると皮膚が伸展し膜効果を生じ低音が聞きにくくなる
【膜型】
高音域の聴取(呼吸音)にすぐれている
【シングルピース】
強くあてれば低音域、普通にあてれば高音域が聴取可能
※チェストピースはしっかり胸壁に密着させないと雑音の元になる
ポイント3 呼吸音の聴診時の確認事項
1 呼吸音について
1. 呼吸音の大きさは?(増強or減弱)
2. 左右差は?
3. 聴取部位の異常はないか?(気管支音が肺胞呼吸音聴取部位で聞こえるなど)
2 副雑音について
1. どの部位で聞こえるか?
2. 呼吸位層は?(吸気時 or 呼気時)(前半 or 中期 or 終末)
3. 副雑音の種類は?(断続性ラ音 or 連続性ラ音)
4. 体位や咳嗽による違いは?
ポイント4 正常呼吸音
図 聴診の順番
矢印は聴診の順番を示す
気管呼吸音(上図の水色)
大きく粗い音で、吸気よりも呼気の音の方が大きい。吸気と呼気の間にポーズ(休止期)がある。高調な音の成分が多い。
気管支肺胞呼吸音(上図の黄色)
気管/気管支音と肺胞呼吸音の中間音。呼気より吸気音が少し大きく長く聞こえる。ポーズは不明瞭。
肺胞呼吸音(上図の紫色)
吸気:呼気=1:2。吸気全体と呼気の始めに聴かれる。ポーズはない。低調で軟らかい音。
ポイント5 呼吸音の異常とその原因
1 呼吸音の減弱
【原因】気胸、胸水、肺水腫、腫瘍や異物、肥満、呼吸筋疾患、気道狭窄、慢性閉塞性肺疾患等による換気量の減少
2 呼吸音の消失
【原因】気管支喘息の重篤な発作、異物等による気道閉塞、気胸、無気肺、呼吸停止等の換気消失
3 呼吸音の左右差
【原因】片肺挿管、気胸、無気肺、胸水、腫瘍等による片側の換気障害
4 副雑音
A 連続性ラ音
1. Rhoncus(鼾音):太い気管支の狭窄や痰貯留
2. Wheeze(笛声音):細い気管支の狭窄
B 断続性ラ音
1. fine crackle(捻髪音):間質性肺疾患や肺水腫、肺炎等で虚脱した細い気管支が吸気時に再開放することが起源といわれている
2. coarse crackle(水泡音):痰の多い疾患や心不全・肺水腫で聞かれる。気管支壁に張った液体膜が気流により破裂することで発生するといわれている
5 肺胞呼吸音の気管支呼吸音化
大葉性肺炎、肺水腫、肺うっ血等の音の伝搬亢進
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■異常呼吸音(副雑音)の種類とアセスメント
■呼吸音を正しく聴取するための4つのポイント
■正常呼吸音の聴取のしかた