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【連載】これだけできれば大丈夫! 病棟で必要な人工呼吸ケア

ウィーニングとは?方法や自発呼吸トライアル(SBT)など

  • 公開日: 2014/5/22

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ウィーニングとは?

人工呼吸器から離脱すること

人工呼吸器からの離脱、つまり器械による強制換気から自発呼吸(自然呼吸、呼吸筋のトレーニング)に慣れさせる訓練―自発呼吸への移行プロセスを、ウィーニングといいます。

人工呼吸器の装着自体が、気道損傷、VAP(人工呼吸器関連肺炎)、無気肺、廃用症候群などの合併症の原因となり、装着が長期になるほど合併症のリスクは高くなります。

従って、人工呼吸器を装着することになった原因疾患や症状が改善もしくはコントロールできるようになったら、できるだけ早い時期にウィーニングを開始します。

ウィーニングは大きく3段階に分けられる

ウィーニングは大きく

  1. ●鎮静からの離脱
  2. ●人工呼吸器によるサポートからの離脱
  3. ●人工気道からの離脱

の3段階に分けられます。

ウィーニングの大まかな流れ

換気モードをA/C(強制換気)からSIMV+PS、SIMVに切り替えて換気回数を減少させ、次にCPAP+PSあるいはPS圧を減少し、自発呼吸へと移行させていきます。

ただし、最近ではウィーニング期間が延びてしまうことを防ぐために、SIMV+PS、SIMVを省き、A/CからCPAPへと変更することが多く、SIMVはあまり使われなくなっています。

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* A/Cモードの概要と3つの観察ポイント
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* CPAPの特徴と設定項目

3週間以上装着している場合はより計画的に進める

また、3週間以上の長期人工呼吸器装着患者さんに対しては、徐々に離脱時間を延長していくよう計画的に離脱訓練を進めていきます。
この場合、離脱訓練はTピースを用いて行い、1日目1時間、2日目2時間、3日目4時間と1日ずつ離脱時間を延ばしていきます。

ウィーニングの開始時期・開始基準

ウィーニングの開始時期は、前述したように人工呼吸器が必要とされた原因が改善・解決されたときです。例えば、心疾患が原因となって人工呼吸器を装着したのであれば、その心疾患がコントロールされていれば、またCOPDの増悪が原因であれば、その症状がコントロールできるようになったらウィーニングを検討します。

人工呼吸器からの離脱は、患者さんに呼吸仕事量増大をもたらします。そのため、患者さんの状態がその呼吸負荷に耐えることができるかどうかを評価することも重要です。

循環動態・全身状態の安定・意識の改善・精神状態の安定が認められれば、ウィーニングの開始時期と判断します。

湘南鎌倉総合病院での開始基準は表1のとおりで、毎日評価していくことが大切です。

ウィーニングの開始基準(湘南鎌倉病院)

表1 ウィーニングの開始基準(湘南鎌倉病院)

自発呼吸トライアル(SBT)とは?

ウィーニング開始基準をクリアしたら、自発呼吸トライアルを行います。

自発呼吸トライアル(spontaneouse breathing tarial、以下SBT)とは、ウィーニングによって増大する呼吸仕事量に対応できるかを評価し、実際に抜管が可能かどうか判断するための指標となるテストです。

実施方法

1 CPAPの場合

 湘南鎌倉総合病院では、人工呼吸器を装着したまま、CPAPのモードで5cmH2OPEEP 5cmH2Oを設定して行います。
 
CPAPでは、自発呼吸にPEEPだけを加えるため、補助換気も行われないので、換気は全て自発呼吸になります。ただ、必要時にはPSで呼吸補助ができます。そのため、自然に近い状態での自発呼吸が可能であり、かつ人工呼吸器でのモニタリングができるため、ウィーニング前からの換気量変化などの情報の推移も観測できます。

仮に無呼吸が生じてもバックアップサポートがあるので、それを設定することで最低限必要な換気は保障されます。

2 Tピースの場合

Tピース下でのSBTの特徴は、酸素量と回路の設定だけなので、比較的簡単に実施できるということです。ただし、CPAPと違って人工呼吸器によるモニタリングもされないため、無呼吸出現の有無など呼吸状態の観察が重要になります。

また、補助換気がされるので、呼吸回路の抵抗が患者さんへの負荷を増大させることもあり、実施にあたっては注意が必要になります。

患者さんへの負荷を考慮して、臨床ではCPAPによるSBTにメリットが多いと考える傾向にあります。

実施時間

SBTの実施時間については、人工呼吸器の使用が短い場合は30 ~ 60分、長い場合には60 ~ 120分間実施します。

疲労した呼吸筋の回復には24時間以上要するため、SBTは1日1回しか行いません。

人工呼吸器の装着期間が

  1. ●短い場合:30~60分間/日
  2. ●長い場合:60~120分間/日

を目安にして実施します。

もし失敗した場合は、患者さんに十分な休養をとってもらい、翌日にまた実施します。毎日、丁寧に評価し続けることが大切です。

ウィーニング開始前の観察ポイント

毎日評価することが早期抜管につながる

ウィーニングの開始時期が早過ぎると、呼吸不全の原因となった原疾患の悪化、呼吸状態の悪化などを起こし、再挿管という事態に陥ることになります。

そして、再挿管になると人工呼吸器装着期間が延長されるという報告がされています。逆に、遅すぎるとVAPや気道損傷の発生率が増加します。

それだけにウィーニング開始のタイミングは大切で、開始の前提となる条件を、毎日評価していくことが重要です。

観察ポイントとしては、循環動態、呼吸状態(酸素化と換気)があります。

(1)循環動態

ウィーニングによって患者さんの呼吸負荷が増大するので、酸素消費量が増加します。

それによって、心拍数の増加、心拍出量が減少します。バイタルサインや心電図モニタを観察して、不整脈の出現など循環動態に変化がないかどうかを観察します。

(2)呼吸状態

酸素化が適切かどうかを観察します。開始基準の数値のチェックや、呼吸回数、自発呼吸、吸気力の有無などを見ていきます。

ただ、酸素分圧は、SpO2からある程度推測できますが、二酸化炭素分圧は動脈血液ガス分析を実施しないとわかりません。一般病棟ではそれほど実施されないので、換気不全については静脈血の数値を参考にして見ていくこともあります。

頻呼吸や呼吸補助筋を使用した努力呼吸が見られる場合は、呼吸仕事量の変化を意味し、呼吸負荷が大きいことを示します。

また、呼吸状態を観察する時は、呼吸音を聞く、胸郭や呼吸筋の動きを見る、冷汗の有無などを確認するために皮膚に触れるといった、視診・聴診・触診など看護師としての五感をフルに生かして見ていくことが大切です。

循環動態、呼吸状態を評価し、抜管に向けたケアを行う

不必要な挿管を減らすためにも、これら観察ポイントを評価して、抜管に向けたケアをしていく必要があります。

医師に対して「循環動態、呼吸状態が改善しているようですが、抜管に向けてCPAPなどを考えてはどうでしょうか?」などの提案をしていくためにも、十分な根拠として、観察によって得られたデータを示していくことが大切です。

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(『ナース専科マガジン』2014年6月号より転載)

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