第5回 電解質-ナトリウム
- 公開日: 2014/8/14
ナトリウムは細胞外液の浸透圧に最も大きく寄与する電解質です。
ナトリウム濃度が上昇・低下して浸透圧が狂うと、それをやわらげる方向に、細胞内外の間で水の移動が起こります。すなわち、低ナトリウムで外液の浸透圧が下がれば、細胞外の水が細胞内に移動し(細胞内浮腫)、逆に高ナトリウムでは細胞内の水が外に漏れ出て来ます(細胞内脱水)。
いずれにしても細胞の機能障害の原因となりますが、特に深刻なのは中枢神経系の障害で、場合によっては意識障害や脳浮腫に至る恐れがあります。
私たちの体は、さまざまな調節機構を使って、この浸透圧を一定に保つことに多大なエネルギーを注いでいます。それが種々の原因によってうまくいかず、浸透圧が狂い始めていることを教えてくれるのが、高、低ナトリウム血症という検査所見なのです。
臨床でよく見かける水・ナトリウム異常
ナトリウム値を保つことは生体にとって極めて重要ですが、臨床でよく見かける病態でもナトリウム異常はしばしば見られ、血清生化学検査でも最も頻繁に測定される項目の1つです。ところが、これほど一般的な検査項目であるにもかかわらず、なかなか正しく理解されにくいのも現実です。例えば低ナトリウム血症なのに塩分摂取制限がなされていたりして、「どうして?」と疑問に思ったことはないでしょうか。
以下では、いくつかの病態に対してナトリウム異常のメカニズムを解説しますが、そのためには図1に示すようなグラフの理解が必須です。理解に不安がある人は後編でグラフの読み方を身に付けていただくことをオススメします。
水・ナトリウム異常を引き起こす原因
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