腹部の触診、肝臓・腎臓の打診|消化器のフィジカルアセスメント(2)
- 公開日: 2014/8/9
アセスメントは、患者さんとの会話やケアを通じて全身の状態に目を向け、五感をフルに活用することが大切です。ここでは系統別にフィジカルアセスメントのテクニックをまとめました。普段行っているアセスメントの流れと手技を再確認してみましょう。
関連記事
消化器アセスメント視診・聴診のコツについてはこちらをご覧ください。
皮膚状態・腹部の観察、腹部の聴診法|消化器のフィジカルアセスメント(1)
消化器のフィジカルアセスメントのコツ
テクニック3 打診のコツ
■打診の方法
実施者の手を温め、4区分を右下腹部から時計回りに打診し、鼓音か濁音かを聴き分けます(下図)。
■打診で何がわかる?
腹部の臓器の位置や大きさの確認と、腹水貯留、ガスや便の貯留、腫瘤の有無がわかります。
■肝臓の観察
肝臓の位置や大きさを確認するには、右鎖骨中央線で臍の高さから上方へ、肺から下方へ打診していきます。それぞれ濁音に変わる部位に印をつけ、2点間の長さを測定すると、肝臓の縦幅が推定できます。正常な肝臓の縦幅は6~ 12cmです。
このほか触診によって肝臓を観察する方法もあります。患者さんに腹式で深呼吸してもらいながら肋骨下縁から上に向かって押すと、吸気時に横隔膜によって押し下げられた肝臓の下部に触れます(時には触れない場合もあります)(下図)。
このとき、肋骨下縁より1~2cm下方で触知する場合は病的な肝臓の腫大が考えられます。ただし、触診では肝臓の幅を測ることはできません。
■腎臓の観察
腎臓の圧痛をみるには叩打診を行います。これは患者さんに座位をとってもらい、左手を脊柱角に置いて右手で叩打する方法です(下図)。正常であれば圧痛は認められず、圧痛があれば炎症が疑われます。
また、形状や硬さ、性状などを知るには双手診を行います。右腎の場合なら患者さんの右側に立ち、左手を第12肋骨の真下に、右手を腹部に置いて深く圧迫します。
患者さんに深呼吸してもらうと、正常であれば吸気時のピークに下方に動いて触知します。左腎は右腎より上方に位置しているため、触知するのはまれなケースで、触知すれば腫大が疑われます。
テクニック4 触診のコツ
■触診の方法
患者さんに仰臥位になってもらい、腹部の緊張をとるために膝を立てます。実施者は手を温めて触診を行い、最後に疼痛部位を診察します。最初に痛みのある部分に触れると、苦痛を招いてその先のフィジカルアセスメントが進められなくなる場合があるので、やや離れた部位から触診するのがポイントです。
大切なことは、患者さんの表情、顔色、身体の反応をしっかりキャッチすること。手で触ることばかりに気をとられていて、患者さんに現れる苦痛な表情を見逃してはいけません。
触診で固い腫瘤を触れる場合ですが、悪性腫瘍では可動性がないことが特徴です。左下腹部に腫瘤を認める場合は、便秘であることが多く、排泄習慣を問診する必要があります。
■触診で何がわかる?
腹壁の特徴や腹部臓器の大きさ、状態、腫瘤の有無や性状、圧痛の有無などがわかります(下表)。
次回は、皮膚・爪のフィジカルアセスメントについて解説します。
(『ナース専科マガジン』2014年4月号付録から改変引用)