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【連載】消化器科で必要な看護技術を学ぼう!

CART(腹水濾過濃縮再静注法)の看護|目的、適応・禁忌、手順

  • 公開日: 2021/10/7

CARTとは

 腹腔内に針を刺して腹水を抜き、細菌、がん細胞や血球成分を取り除いてアルブミンなどの有効成分を濃縮した腹水を静脈から戻す方法です。


 当院では、実施する前日に入院し、翌日に還元して3日目に退院という流れで行っています。CART実施後に腹水除去のために再入院することはあまりありません。再度除去する場合でも腹水ドレナージよりも、腹水が貯留するまでの期間が長くなる傾向があり、次の穿刺は1、2カ月後になることが多いです。


 

CARTの目的

 CARTの目的は、腹水貯留による呼吸苦、腹部膨満感、腹部緊満による疼痛の緩和です。腹水ドレナージの効果は一過性で、アルブミンやグロブリンの喪失により栄養状態や免疫状態を悪化させるとともに、腹水の再貯留をきたしやすくなります。CARTは自分の蛋白成分(アルブミンやグロブリン)を再利用することで、栄養状態や免疫状態を悪化させることもなく、血漿浸透圧の上昇、循環血液量の増加の効果も期待できます。また、利尿剤の効果の再発現も期待できます。


 そのほか、腹水の貯留期間が延長することで、患者さんのADLの改善にもつながります。


CARTの適応・禁忌

<適応>

  • 肝硬変やがん性腹膜炎でみられる難治性腹水(利尿剤に抵抗がある、利尿剤増量が困難で腹水がすぐに溜まってしまう患者さん)

  • <禁忌>

  • 高ビリルビン血症の患者さん(ビリルビンまで濃縮静注されてしまうため)
  • 原疾患以外による感染・炎症(腹水中にエンドトキシンが検出された患者さん)
  • 免疫不全の患者さん(敗血症等の重篤な合併症併発の可能性がある)

  • CARTの手順

    <必要物品>

    ダルテパリンNa、採取循環バッグ、腹水処理用採取液ライン1本、消毒液(ポビドンヨードなど)、滅菌手袋、滅菌ガーゼ、キャップ、マスク、穴あき滅菌シーツ、防水シーツ、滅菌ガウン、SpO2モニター、シリンジ、ロックシリンジ(10mL)、注射針(22G、18G)、局所麻酔薬(1%プロカイン)、アルコール綿、油性マジック(マーキング用)、鋭曲、アスピレーションカテーテルキット、持針器、縫合糸(2-0シルク糸)、固定用フィルムドレッシング材、固定用テープ、輸血セット(混注ライン)


    *採取循環バッグ、腹水処理用採取液ラインは事前に透析室から取り寄せておきます。


    濃縮還元時に使用

    20Gまたは22G以上の静脈留置針、固定用フィルムドレッシング材、固定用テープ、エクステンションチューブ、三方活栓・キャップ、ルート確保用の生理食塩水またはヘパリン加生理食塩水


    <前日に行うこと>

    ①採取循環バッグを用意する
    採取循環バッグは、事前に透析室へ取りに行きます。


    ②必要項目を測定する
    患者さんの体重、腹囲、左右大腿周囲(膝蓋骨上端より20cm上)を計測します。
    これらを計測することによって患者さんの全身状態を把握します。


    ③内服薬について担当医へ確認する
    利尿剤を使用している場合は、CART施行当日に休薬するかを担当医へ確認します。


    ④同意書の確認とオリエンテーションを行う
    同意書は必ず確認しておくようにしましょう。オリエンテーションでは、疑問や不安が残らないように患者さんへ説明を行います。


    ⑤必要物品を準備
    CARTは濾過、濃縮と時間がかかるため、朝の早い時間から始めます。必要物品は前日に準備しておきましょう。


    <CART当日の流れ>

    ①患者さんの準備をする
    医師より患者さんへICを得ます。患者さん用のガウンに着替えてもらい、点滴ルートを確保します。CV-portがあればそちらを利用することもできます。ベッドサイドモニターを患者さんに装着し、波形がきちんと出ているかなどを確認しておきましょう。


    ②環境整備をする
    ベッドの高さ、明るさ、清潔区域のためのスペースが確保できているかを確認します。患者さんのベッドサイドの物を移動する場合は、1つひとつ患者さんに声をかけながら行うようにしましょう。さらに、防水シートを敷き、患者さんのベッドが汚れないようにします。


    ③患者さんの体勢を整える
    基本的には仰臥位で行いますが、場合によっては側臥位や座位で行うこともあるため、クッションなどを使用し、患者さんが安楽な体勢になるように位置を整えます。


    ④採取循環バッグにダルテパリンNa 1Aを入れます。


    ⑤穿刺部位に印をつけ、タイムアウトを行う
    医師はエコーで穿刺部位を決定し、マーカーで印を付けます。その後、医師と看護師でタイムアウトを行います。


    *タイムアウトとは手を止め、声を出して確認作業をすることです。確認する項目には、患者さんについて(患者さんの氏名・カルテ番号・生年月日・血液型)・検査内容・穿刺部位・同意書などがあります。


    ⑥穿刺の準備をする
    医師はキャップ、滅菌ガウン、滅菌手袋を装着し、イソジンで穿刺部位を消毒して穴あき滅菌シーツをかけます。


    ⑦清潔野に物品を用意する
    看護師は清潔野にサーフロー針、シリンジ、18G針、22G針を用意します。


    ⑧局所麻酔を行う
    看護師は局所麻酔薬をカットし、医師は薬液をシリンジに吸って穿刺部に局所麻酔を行います。


    ⑨穿刺を行う
    医師はアスピレーションカテーテルキットで穿刺し固定します。看護師は、透析前検体用の腹水の採取を依頼することを忘れないようにしましょう。


    ⑩腹水を専用バッグに貯める
    排液中は、酢酸リンゲル液500mL 80mL/hで投与します。腹水の排出は1Lを越えたら透析室へ連絡し、腹水が3L排出したら腹水採取バッグを交換しましょう。排液が不良の場合は医師へ報告します。


    酢酸リンゲル液の投与は、腹水ドレナージによる体液の減少、急激な血圧の低下を予防するために行います。また、緊急時のライン確保の意味もあります。


    *当院では、ろ過濃縮を透析室でするため、準備の目安として1Lを超えたところで連絡をしています。


    ⑪患者さんへ説明する
    実施後の安静度について、患者さんへ以下の点を伝えます。腹水をできるだけ多く排出するために、体勢を変えることが必要です。説明を理解し患者さん自身で体勢を変更できる場合を除き、基本的には排液量や患者さんの状態を確認する際に、看護師が体勢を変えるようにします。


  • 穿刺後は病室内で過ごす
  • 座位は可能
  • トイレ歩行時は看護師の付き添いが必要
  • 食事も可能
  • 寝返り、頭部挙上など適度に体勢を変える

  • ⑫腹水が十分に排出されたかを確認する
    排液が少なくなったら医師へ連絡し、エコーで確認してもらいます。十分に排出されているのを確認した後、医師はドレーンを抜去します。


    ⑬腹水を透析室へ持って行く
    貯めた腹水を透析室へ持参し、濾過濃縮を依頼します。検体の提出を忘れないようにしましょう。


    ⑭水溶性プレド二ン30mg+生理食塩水50mLを投与する
    還元時の有害事象である発熱を予防するために、濃縮還元後腹水の投与までに投与を完了しておくようにします。投与前に水溶性プレドニンに対する過敏症がないかどうかを確認しておきましょう。


    ⑮腹水を透析室へ取りに行く
    透析室から腹水濃縮還元終了の連絡が来たら、腹水を取りに行きます。


    ⑯投与前に検体を採取して、検査室に提出する


    ⑰濃縮還元腹水を投与する
    投与可能かどうかを検査結果で確認した後、腹水を投与します。速度は医師に確認しましょう。ルートは輸血用を使用します。針は可能であれば20G以上、もしくは22Gの針を使用します。どうしても難しい場合には24Gの使用することもあります。可動に問題のない場所にルートを固定し、寝返りや起き上がり以外に還元中はあまり動きまわらないように患者さんへ説明します。


    <翌日に行うこと>

    患者さんの状態を確認する
    体重、腹囲、左右大腿周囲(膝蓋骨上端より20cm上)を計測します。


    観察項目と看護のポイント

     CARTは腹水の排出、投与という流れになるため、排出時と投与時それぞれで観察する項目が違います。


    <実施前>

     同意書の確認とともに、CARTについての患者さんの理解度も確認します。必要があれば、追加で説明するようにしましょう。


    <腹水穿刺(排出時)の観察>

     腹水穿刺を行う際には、バイタルサインに変化はないかを適宜確認する必要があります。一回で多量の排液があった場合、横隔膜圧迫解除により呼吸状態に変化がみられることもあるため注意しましょう。


     穿刺後もバイタルサインを定期的に計測し、異常がないかを確認します。


     そのほかに穿刺部位からの出血・感染徴候、腹痛の有無(腸管損傷による腹膜炎で起こる)、呼吸苦、排液の性状(血性、便汁様)など変化があればすぐに医師へ報告します。


    <腹水投与時の観察>

     濃縮還元腹水を投与するときは、輸血時と同様の観察をします。


    具体的な観察項目
    発熱 悪寒
    血圧上昇 血圧低下
    頭痛 嘔気
    嘔吐 溶血
    ほてり 顔色不良
    呼吸困難 ショック


     最初の1分は、腹水をかなりゆっくり投与しながらベッドサイドで観察します。以降の観察は5分、15分と少しずつ時間を空けながら頻回に行うようにしましょう。副作用が出た場合も、バイタルサインに変動がなければ頻回な観察で対応し、経過を観察します。


    保険適応について

     難治性腹水の患者さんは、以下が保険適応です。

  • 特定保険医療材料名:054 腹水濾過器、濃縮再静注用濃縮器 65300円
  • 手術料:K635 胸水・腹水濾過濃縮再静注法 4990点

  • <ポイント>

  • 一連の治療経過中、第1回目の実施日に1回限り算定する
  • 一連の治療期間は2週間を目安とする
  • 治療上の必要があって初回実施後2週間を経過した場合は改めて所定点数を算定する


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