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【連載】栄養療法のチカラ

がんになったらどんな食事をすればいいの? ~みるみる体力が落ちて、痩せていく場合~

  • 公開日: 2015/2/22
  • 更新日: 2020/3/26
  • # 注目ピックアップ
  • # ONS(経口的栄養補助)
  • # がんの検査・治療全般
  • # 栄養・食事療法

日本人の2人に1人ががんになる時代です。誰もががん予防の魔法のような食事があればいいなあと思うはずですが、残念ながら、現時点ではエビデンス(科学的根拠)のある食事はありません。

理論的には、発がんを抑制する栄養素はありますが、きちんとした実験や研究での確認はできていません。日頃から、野菜や果物を多くとるバランスの良い食事を心がけたいものです。


がんになったら栄養を摂らない方がいい?

バランスの良い食事を心がけてもがんになってしまったら、どうすればいいのでしょうか。

栄養は摂らない方がよい、栄養を与えたらがん細胞が元気になってしまうというのは根拠もエビデンスもありません。

確かにがんは栄養をエネルギーとしますが、がんに奪われた栄養を補給することは、私たちががんに打ち勝つためには欠いてはいけません。

エビデンスに基づいた標準治療が、がん治療の基本ですが、最近はがん治療に耐える体をつくる栄養療法が注目されています。それは、偏った特定の栄養素のみを補うのではなく、三大栄養素(糖質・脂質・たんぱく質)に、ビタミン、ミネラルを加えた5大栄養素をバランスよく十分に摂取する方法です。健康な時には食卓の食事から摂取できている栄養素ばかりです。

栄養を摂らないとどうなるの?

がん患者さんでは、代謝異常により痩せていく人が多くいます。この状態を「がん悪液質」といいます。

がん細胞は、人の体の筋肉や脂肪を栄養源としているため、がん患者さんの体には大きな負担がかかっています。そのため、体重が減り筋肉量が減少し、体力が低下する患者さんも多くいます。

がん悪液質説明イラスト

がん悪液質になるとどうなるの?

がん悪液質になると、スムーズな歩行や移動が困難になったり、倦怠感により日常生活全般に影響がでることで、QOL(生活の質)が低下します。特に筋肉量が低下すると、がんの治療にも大きな影響がでてきます。

例えば、手術に対する影響です。ばい菌を殺そうとしたり、傷を治すためのたんぱく質が必要になります。食事から十分なたんぱく質が摂れない場合、筋肉から供給されます。

がんにより低下する筋肉量を最小限に抑えることが大事

がんの栄養として、筋肉や脂肪が消費されたら、その分食事で補給しなければどんどん失われていまいます。がん治療を適切に行うためにも筋肉量を減らさない栄養療法が重要です。

次のページは、「がん患者さんが体重や筋肉量を減らせない食事とは?」。

がん患者さんが体重や筋肉量を減らさない食事とは?

では体重や筋肉量を減らさないためにはどうすればいいのでしょうか?

青魚に多く含まれる不飽和脂肪酸の1つであるEPA(エイコサペンタエン酸)には、がんそのものの増殖を抑制したり、転移を抑制したりする可能性があるという報告1,2)があります。

また、悪液質になると、骨格筋や脂肪を分解する物質が、がん細胞から放出されます。動物の試験においてEPAが、それらの物質を抑制すること抑制されていることが報告3)されており、骨格筋の分解や脂肪崩壊を抑制することも期待されています。

EPAの作用説明イラスト

筋肉量を減らさないEPAの効果に期待

「進行したすい臓がんの患者さんにEPAを摂ってもらう臨床試験では、1日2gのEPAをたんぱく質やビタミン、ミネラルとともに摂ることにより体重や筋肉量の減少が抑えられる傾向にありました。EPAはたんぱく質の分解を制御し炎症を抑制します。また骨格筋のたんぱく質の分解や脂肪崩壊を抑制することなどで体重減少を抑えています。」と語るのは神奈川県立がんセンター消化器外科部長の吉川貴己先生です。

では、EPAを効果的に摂るためにどうすればいいのでしょうか?

1日2gのEPAを食事から摂ろうとすると、カジキマグロ 15切れ(2kg)、サバの切り身 3切れ、サーモンの切り身 3切れ、クロマグロ 1ブロック(1 kg)、えび 1 kg、イワシ 200 gのいずれかが必要になります。

「がん治療を適切に継続するためにも筋肉量の維持は大切です。そのためには、エネルギーとともにEPAを摂るのがいいでしょう。ですが、いくらEPAが良いと思っても食事で必要量(1日2g)を摂ろうとすれば、かえってバランスの悪い食事になる可能性がありますが、バランスの良い食事に、EPAが配合された栄養剤などを上手に組み合わせるのが負担も少なく良いと思います。」(吉川貴己先生)。

がん患者の栄養状態を保つため、全国の医療機関で食事に栄養補助飲料をプラスした栄養療法が広がっています。がんに負けない体力を保つため、バランスの良い食事とともに必要な栄養素を上手に摂ってみてはいかがでしょうか。

参考文献

1)Toshihiro Hirai:Regulating surgical oncotaxis to improve the outcomes in cancer patients;Surg Today.

2)Hisako Kubota:Eicosapentaenoic Acid Modifies Cytokine Activity and Inhibits Cell Proliferation in an Oesophageal Cancer Cell Line;Anticancer Research,33:4319‐4324,2013.

3) ML Lorite,P Cariuk and MJ Tisdale;Induction of muscle protein degradation by a tumor factor;British Journal of Cancer,76 (8):1035-1040,1997.

吉川先生のご講演『もっと知ってほしい、「がんと栄養」のこと』を動画で紹介しています。

こちらをクリック

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