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【連載】看護に役立つ生理学

第16回【ヘモグロビン代謝】どうやってヘモグロビンがビリルビンになるのか

  • 公開日: 2015/4/11
  • 更新日: 2020/3/26

肝・胆道疾患や血液疾患の病態把握に重宝されるビリルビンとウロビリノーゲン

これらが異常を示す疾患は多岐にわたります。その上、血液と尿の所見を組み合わせて判断する局面も多く、また間接/直接ビリルビンの違いなど、理解しにくい要素がたくさんあります。
いずれの物質も、ヘモグロビンの代謝によって生じるものですが、その過程には「腸肝循環」という独特の回路が存在するため、話がさらに複雑に見えてしまうようです。

そこで今回は、腸肝循環の仕組みを解きほぐしながら、ビリルビンやウロビリノーゲンにまつわる病態生理を理解していくことにしましょう。



ビリルビンの流れを知っておく

まず、ヘモグロビン代謝の過程のうち、臨床に直結する部分だけを抽出してみましょう。
下図のように、赤血球破壊からいくつかの段階を経て間接ビリルビンが生まれ[図-(1)]、これが肝臓で直接ビリルビンに変換されて[図-(2)]、胆道を経て腸管に排泄されます[図-(3)]

さらに直接ビリルビンは腸内細菌によってウロビリノーゲンとなり、腸管から再吸収されて体循環に入ったのち、最終的に腎から尿中に排泄される、という流れになります(ここではあっさり済ませてしまいましたが、忘れてしまっている人のために、第34回ではこの過程を詳しく解説します)。

臨床的には、ひとまずこの図式さえ頭に叩き込んでおけば、各疾患と検査値異常との関係を論理的に理解することができます。
図を読み解く際の基本は、「青い矢印で示したビリルビンの流れの上流が亢進、あるいは下流が停滞していれば値が上昇し、その逆ならば値は低下する」ということです。

ビリルビンの流れ説明イラスト

(1)の異常(亢進)──主な疾患:溶血性黄疸

溶血性の疾患などによって大量の赤血球破壊が行われると、上図の(1)が亢進した状態となります。するとその下流、すなわち間接ビリルビンの血中濃度は上昇し、それにともなって尿中へのウロビリノーゲンの排泄亢進します(図-a)

(2)の異常(低下)──主な疾患:体質性黄疸(の一部)

体質性黄疸と呼ばれる疾患のうちのいくつかのタイプは、間接ビリルビンの肝細胞への取り込みが障害されたり、肝細胞内でのグルクロン酸抱合の能力が障害されたりしています。

これは(2)が低下した状態ですから、抱合を受けられなかった間接ビリルビンが血中で上昇することになります。
同時に、(2)の低下によってその下流の排泄が乏しくなるため、溶血の場合とは逆に尿中へのウロビリノーゲン排泄低下します(図-b)

(3)の異常(低下)──主な疾患:閉塞性黄疸

結石や腫瘍など、さまざまな理由で胆道が閉塞し、(3)が停滞してしまった状態です。

この場合は、胆道に排泄できなかった直接ビリルビンが逆流し、血中濃度が上昇します。同時に、(2)と同様に下流の排泄が低下するため、尿中ウロビリノーゲン減少します(図-c)

体質性黄疸の中にも、(2)よりも(3)のほうが強く障害されるタイプのものがあります。

以上の3つが、ビリルビン・ウロビリノーゲン異常の組み合わせの基本パターンです(下表)。実際には理屈のとおりにいかないことも多いですが、少なくとも下表のパターンだけは、理由まで説明できる程度に理解しておきましょう。

ビリルビン・ウロビリノーゲンの異常の組み合わせ

ビリルビン・ウロビリノーゲンの異常の組み合わせ

次からは、ヘモグロビン代謝がどうなっていくのかを詳細に解説していきます。

ヘモグロビンはヘムとグロビンが結合したもの

約120日の寿命を終えた赤血球は、脾臓のマクロファージによって破壊され、ヘモグロビンが溶出します。

このヘモグロビンはもともと「ヘム」と「グロビン」が結合したものですが、このうちのヘムのほうが代謝されると、ビリベルジンという緑色の色素になります。これがさらに代謝を受けて、オレンジ色のビリルビンになります。

ビリベルジンとビリルビンは相互に変換されることがあり、胆汁中のビリルビンが空気に触れると、酸化されてビリベルジンに戻ります。ビリベルジンは、緑色の胆汁性嘔吐や胎便として私たちの目に触れることがあります。

さて、ビリルビンは単独では水に溶けにくいため、血中ではアルブミンと結合することで水溶性を得て、肝臓に運ばれます。この状態が間接ビリルビンです。

肝で間接ビリルビンから直接ビリルビンとなる

肝に到達した間接ビリルビンは、肝細胞に取り込まれてアルブミンを手離し、細胞内でグルクロン酸という物質と結合します(グルクロン酸抱合)。この働きにより、ビリルビンは再び水に溶けやすくなりますが、この状態を直接ビリルビン(抱合型ビリルビン)と呼びます。直接ビリルビンは肝から胆道に排泄され、やがて小腸に到達します。

このままビリルビンが便中に排泄されれば話は単純なのですが、腸管には腸内細菌が待ち構えています。

ビリルビンは腸内細菌によってステルコビリノーゲンとなり、最終的にステルコビリンとなって便中に排泄されます。便の色が茶色いのは、このステルコビリンによるものです(下図)。

ここまでがヘムの代謝のメインルートです。まずはこの「一本道」を頭に入れた上で、腸肝循環の回路を追加して理解するようにしましょう。

ヘム代謝のメインルート

ヘム代謝のメインルート

腸肝循環(前半)ーウロビリノーゲン登場

腸内細菌によって得られたステルコビリノーゲンは、すべてが便中への排泄を待つのではなく、一部はさらに変化を受けてウロビリノーゲンとなります。これが腸管から再吸収され、体循環に入って腎から排泄されます。私たちはこのウロビリノーゲンの排泄量を、尿検査によって知ることができます。

ウロビリノーゲンは酸化されるとウロビリンとなりますが、これが尿の黄色の原因となっています。このような腸管からの再吸収は、ウロビリノーゲンだけでなく、さまざまな胆汁成分に対して行われています。

その中には胆汁酸のように、生体での働きが明らかな物質も含まれており、再利用されていると考えられます。

しかし、ウロビリノーゲンが再吸収されることにどんなメリットがあるのか、残念ながらよくわかっていません。
ここで、ビリルビンの排泄量を知りたいと思ったとき、どんな方法で調べればよいか考えてみてください。

素朴に考えれば、胆道で待ち構えて、そこを通過するビリルビンの量を測定する必要がありますが、そんなことはきわめて困難です。あるいは、便中のステルコビリンを測定すればよいかもしれませんが、これも手間が掛かる割に不正確でしょう。

幸い、排泄されたビリルビンの一部がウロビリノーゲンに変わって腎から排泄されてくれるおかげで、私たちは尿検査という簡便な方法によって、ビリルビン排泄の程度を大まかに見積もることができるのです。

尿の定性検査では(±)、つまり少しだけ排泄されている状態が正常とされることが多く、排泄が亢進すれば(+)~(++)、低下すれば(-)となり、いずれも異常とみなされます。

腸肝循環(後編)ー腸と肝を循環するウロビリノーゲン

ウロビリノーゲンは腸管から再吸収されるわけですから、体循環に入る前に門脈を経てまず肝臓に到達するはずです。

肝に集められたウロビリノーゲンの一部は、「腸肝循環(前半)」で説明した通りに体循環に移りますが、残りは直接ビリルビンに戻されて、再び胆道に排泄されます。つまり、肝→胆道→腸管→門脈→肝、というサイクルをぐるぐる回っていることになります。

これが「腸肝循環」と呼ばれる回路です。こちらも意義を尋ねられると返答に困りますが、肝障害の後期の検査所見を理解するために必要な知識です。

初期は直接ビリルビンが優位に上昇

前節で述べた3タイプの異常所見のほかに、肝炎・肝硬変など、一般的な肝障害ではどうなるのでしょうか。

これが最も興味のあるところですが、理解する際には少し注意を要します。

そもそも肝障害の際には、下図の(1)~(3)のどこが障害されるのでしょうか。
肝細胞が担っているのは(2)および(3)ですが、通常、(3)の機能低下が先に起こると考えてください。
このため、少なくとも肝障害の初期においては、直接ビリルビン優位の上昇と尿中ウロビリノーゲンの低下が見られます。

しかし、やがて肝障害が慢性化し、肝硬変などに移行すると、原則論からは外れた現象がいくつか起こってきます。

ひとつは、(3) とともに(2)も障害されて、間接ビリルビンの上昇も見られるようになることです。
もうひとつの現象を理解するには、腸肝循環の詳細に踏み込む必要があります。

前段で述べたように、腸管で再吸収されたウロビリノーゲンの一部は、肝で直接ビリルビンに戻されます。
肝障害が進むと、この復元能力も障害されるため、ウロビリノーゲンのまま腎に到達する割合が増加し、尿中排泄がかえって上昇することが珍しくありません。

このように、特に疾患が進行したケースでは理解しづらい検査所見が目立ってきますが、以上に述べた知識を基本骨格として検査異常を把握できれば十分でしょう。

ビリルビン説明イラスト

胆汁色素の語源――「ビリルビン」には宝石が入っている!?

ヘムの代謝過程にはさまざまな物質(胆汁色素)の名前が登場し、頭が痛くなります。ここでは物質名の語源を整理して、少しでも憶えやすくまとめてみることにします。

まず、どの物質にも「ビリ」が含まれますが、それもそのはず、胆汁(bile)を意味しているのです。

ビリベルジン(biliverdin)とビリルビン(bilirubin)は後半だけが異なりますが、これは「緑色」を意味するverd-と「赤色」を意味するrub-の違いです。思い返せば東京ヴェルディ(Verdy)の選手は緑のユニフォームを着ていますし、赤い宝石といえばルビー(ruby)ですね。

便の茶色のもとはステルコビリン(stercobilin)、尿の黄色のもとはウロビリン(urobilin)ですが、sterco-は「便」を、uro-は「尿」を表します。

この両者の、酸化を受ける前の状態が、それぞれステルコビリノーゲン(stercobilinogen)とウロビリノーゲン(urobilinogen)であり、いずれも「~のもと」を表す-ogenが付いています。

(「ナース専科」マガジン2010年12月号から転載)

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