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【連載】急変対応マニュアル

ショックの定義、症状、診断基準と見極め

  • 公開日: 2013/12/12

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急変時の対応


急変症状の中でも「ショック」にはさまざまな原因があり、その見極めを覚えておくことは重要です。ここでは見極めのポイントとそのとき看護師は何をすべきかを解説します。


ショックの定義

 ショックは、「生体に対する侵襲あるいは侵襲に対する生体反応の結果、重要臓器の血流が維持できなくなり、細胞の代謝障害や臓器障害が起こり、生命の危機に至る急性の症候群」と定義されています。

 そして、その病態により、大きく
循環血液量減少性ショック
心原性ショック
血液分布異常性ショック
心外閉塞・拘束性ショック
 の4つに分類されます。

ショックの分類表 (図 ショックの分類表)

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ショックの診断基準

 ショックにはさまざまな原因があることから、すべてのショックに適応する単一の診断基準はありません。しかし、血圧低下と臨床所見からおおよその判断をすることは可能です。これによると、血圧低下がショックを裏付ける目安となります。

 基本的には、収縮期血圧が90mmHg以下になったとき、あるいは通常の血圧より30mmHg以上低下したときとしています。

 この血圧低下に加え、みていかなければいけない臨床所見は、心拍数、頻脈・徐脈、爪先の毛細血管のrefill遅延、意識障害、乏尿・無尿、皮膚蒼白と冷や汗または39℃以上の発熱、の6つがありますが、このうち3項目以上に該当するとショックと診断されます。特に意識障害についてはせん妄や認知症の悪化と考えてしまい、ショックを見逃す可能性があるので、注意が必要です。

ショックの特徴的な症状

 患者さんをぱっと見たときに、「ショックかもしれない」と気が付けるよう、特徴的な症状を頭に入れておくことは大切です。その代表的なものに「ショックの5徴候(ショックの5P’s)」があります(下参照)。

 これらはショックを疑うべき症状で、「2」については多汗である場合もあり、さらに「3」には、具体的症状として、元気がない、視線が合わない、反応がない、体がだらりとしているなどの状態も挙げられます。

ショックの5徴候(ショックの5P’s)

1.皮膚・顔面蒼白(Pallor)
2.発汗・冷や汗(Perspiration)
3.肉体的・精神的虚脱(Prostration)
4.脈拍微弱(Pulselessness)
5.不十分な促迫呼吸(Pulmonary insufficiency)

 続いて「“不穏・頻呼吸”に注意する、“おかしい”と感じたときの対応」です。

「不穏」「頻呼吸」に注意する

 看護師が臨床でショックを疑うとき、注意したいのは「不穏」「頻呼吸」「脈」「発汗の性状」です。特に前者2つが重要です。

 ショックの指標としての不穏は、精神的な不安で起こるというよりも、脳血流量の低下や代謝性変化により血液が酸性に傾いた状態になったり、心筋梗塞や気胸等による疼痛などで起こったりすると考えられます。従って急な不穏の発生や意識の変化があった場合は、バイタルサインと「ショックの5徴候」からショックを疑ってみる必要があります。

 頻呼吸は、ショックによって血液が酸性に傾いた状態になり、その代償として過呼吸になって、血中二酸化炭素を排出し、アルカリ性にしようとする結果として起こります。呼吸数が1分間に20回以上ならショックを疑い、ほかのバイタルサインと総合して判断します。日常的には血圧や脈拍数のチェックのみということが多いと思いますが、呼吸数にも注意を払うことはショックの発見において大切なことです。

「おかしい」と感じたときの対応

 不穏や頻呼吸などでおかしいと感じたら、脈の触診をします。このとき、頸動脈が触れない場合は収縮期血圧60mmHg以下、橈骨動脈が触れる場合は収縮期血圧80mmHg以上と判断することができます。左右差の有無も評価します。

 その上でモニタリングを行います。まずはパルスオキシメーターでSpO2を測定します。SpO2が90%以下の場合PO2は60Torr以下と考えられ、酸素投与が必要となります。

 また、心電図モニターでの観察を行います。通常はテレメーターによりナースステーションでモニタリングしている場合でも、ショックが疑われるときは、ベッドサイドで見られるモニターを使用することが必要です。もし、適したモニターがなければ、除細動器のモニターモードを使用します。

 さらに、さまざまな生体情報を集めるために採血(血算・生化学測定)、動脈血採血(血液ガス分析)が必要となります。また、12誘導心電図は、急性冠症候群(ACS)を除外するために重要です。


(『ナース専科マガジン』2012年6月号より転載)

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