【図解】ベッドメイキングの手順とコツ~根拠がわかる看護技術
- 公開日: 2016/12/1
- 更新日: 2017/5/24
ベッドメイキングには、新しくベッドをつくる方法と患者さんが寝ている状態でベッドをつくる(シーツ交換)方法があります。ここでは基本形として、新しくベッドをつくるための手順を紹介していきます。
(2017年5月24日更新)
ベッドメイキングを行う前に知っておきたいこと
看護師が行うベッドメイキングとは
看護師が行うベッドメイキングは、ルームメイドが行うそれとは異なります。
例えば、麻痺により感覚がない患者さんの場合、シーツにしわを作らないようにピンと張り、圧迫部位を作らないようにするとともに、ひっかかりをなくし、動きやすいようにします。枕カバーの縫い目が当たらないように置き方に注意を払います。衰弱している患者さんの場合、尖足にならないよう足元にタックを作り、足を動かすための余裕を持たせます。ギャッチアップを頻繁に行う患者さんの場合、頭側の折り返しを長めにとり、シーツが下方にずれるのを防ぎます。嘔吐や失禁が予測される場合、汚染が拡がるのを避け、シーツ交換の手間を最小限にするために、横シーツを重ねます。病状に合わせてシーツ類の素材、マットレスの種類を選ぶこともあります。
また、単にベッドを作るだけではなく、ナースコール、コード類、ベッド柵、床頭台と椅子、オーバーテーブル、ゴミ箱、点滴スタンドの位置など、ベッド周囲にまで気を配ります。
患者さんがベッド上でどのような生活をするのかを予測・把握している看護師だからこそできる配慮があります。看護師のベッドメイキングは患者さんの回復を促進するための療養環境を調整するという大切なケアなのです。
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シーツには表裏がある
シーツには裏と表があり、肌触りが良いほうが表面です。安楽の観点から、患者さんの身体には、必ず表面があたるようにします。上シーツ(上掛け)にする場合は下に表がくるように、下シーツになる(患者がその上に寝る)場合は上に表がくるように向けます。
シーツ類のたたみ方を把握する
シーツやマットレスパッド、毛布類がどのようにたたまれているかを把握しておくと、効率よくきれいに広げることができます。
1ベッドメイキングの準備
①必要物品の準備
・必要物品は、はじめに使用するものを一番上にし、使用する順番でワゴンに重ねておきます。リネン類の輪をどちらに向けるかといった、たたみ方と関連させて考えておくとよいでしょう。
②マスクを着用する
・必ずマスクは着用しましょう。
どうして?:ほこりを吸い込まないようにするためです。
③窓を開けて換気をする
・個室以外では、他の患者さんへの配慮も忘れないようにしましょう。その時間帯は別の場所に移動してもらう、移動できない場合はこれからベッドメイキングを始めることを告げる、窓を開けてよいか確認する、寒くないように掛け物をかける、誇りを吸わないに口元まで掛け物をかける(マスクをする)よう勧める、カーテンを閉めるなど、配慮します。
2マットレスパッドを敷く
①マットレスを清掃する
・粘着テープ付きローラーを使用するときは、頭側から足元に向けて転がします。
どうして?:足元に落ちている落屑(らくせつ)やごみを頭側(顔のそば)に持ちあげたくないからです。
②マットレスパッドを広げる
・たたんだままのマットレスパッドを中心線にあわせてマットレス上に置き、たたみ方を考慮して広げていきます。
・マットレスとマットレスパッドの各上端が合わさるようにします。
3下シーツを敷く
※まずは片側を整えていき、あとで反対側を整えます。上シーツまで整えてから、まとめて反対側を整えるなど、反対側のベッドメイキングは自分のやりやすいタイミングで行いましょう。
①下シーツを広げる
・たたんだままの下シーツを中心線にあわせてマットレス上に置き、中心がずれないように手で押さえます。
どうして?:中心に合わせて左右対称にシーツを敷くことにより、シーツがマットレスからはみ出すなど、ベッドのくずれを防ぎます。また、見た目も美しくなります。
・自分がいる側の半分まで、たたみ方を考慮して広げていきます。
・シーツの基準線がみえるように、反対側も少しだけ広げます。
・シーツの表面が上になっていることを確認します。
どうして?:患者さんの安楽のために、肌さわりがよいシーツの表面が患者さんにあたるようにします。
②頭側のマットレスを覆う
・片方の手でマットレスの頭側を持ち上げて、もう一方の手でマットレスの頭側をシーツで包み込むようにします。
③シーツを頭側のマットレスに入れ込む
・側面にたれているシーツを三角折りにしてマットレスに入れこみます。三角折りの部分をベッドの側面に降ろすときに、ベッドの上面に少しだけ重なりをつくるようにします。
どうして?:四角折りよりも三角折りのほうが、シーツの重なり部分が増えることにより摩擦力が増して、ずれにくくなります。さらに三角形の中に重なり部分をつくると、患者さんからの圧力で押さえられることにより、さらにずれにくくなり耐久性が増します。
*三角折りの方法
1 ベッドの側面にたれているシーツを頭側25~30cmの位置でもつ。
2 そのまま垂直に持ち上げると、三角形になる。このとき、三角形が直角になるようにする。
3 三角形の部分をベッド側に倒し、ベッドの上に置く。
4 ベッドの側面にたれている部分を足元の方向へと引っ張り、シワをのばしてからマットレスの下に入れ込む。
5 3で作った三角形の部分の頂点を持ち、もう片方の手でベッド上面の端のほうのシーツを押さえ、指一本分程度の重なりをつくるようにする
6 重なり部分をつくったら、今度は側面を手でおさえて、三角形の部分を側面のほうに下ろしていく。三角形がくずれないように注意する。
7 下ろしたシーツをマットレスの下に入れ込む。
・マットレスの下にシーツを入れ込むときには、手背を上にします。
どうして?:手を保護するためと、手を引き抜くときにシーツがくずれにくくなるためです。
④下シーツのシワをのばす
・ベッドの足側に立ち、シーツを両手でもちまっすぐにひっぱります。
どうして?:シーツのシワは見た目が悪いだけではなく、褥瘡発生のリスクになるとともに、患者さんの不快感にもつながります。
⑤足側のマットレスをシーツで覆う
・②と同じ手順で行います。
⑥シーツを足側のマットレスに入れ込む
・③と同じように、シーツを三角形に処理して足側のマットレスの下に入れ込みます。
⑦垂れているシーツをマットレスに入れ込む
・まだマットレスに入っていない部分のシーツを、手背を上にしてマットレスの下に入れ込みます。
4上シーツを敷く
※防水シーツとそれを覆う横シーツを敷く場合は、上シーツを敷く前に行います。
①上シーツを広げる
・たたんだままの下シーツを中心線にあわせてマットレス上に置き、中心がずれないように手で押さえます。
・自分がいる側の半分まで、たたみ方を考慮して広げていきます。
・シーツの基準線がみえるように、反対側も少しだけ広げます。
・シーツの表面が下になっていることを確認します。
どうして?:患者さんの安楽のために、肌さわりがよいシーツの表面が患者さんにあたるようにします。
②足元にタックをつくる
・足側に移動し、シーツの足元にタック(折り返し)をつくります。
どうして?:安楽を考え、患者さんの足が自由に動けるように空間をつくるためです。
■タックの作り方
1 マットレスの端から患者さんの足関節の長さの位置で上シーツを頭側に折り返す。
(一般的な足関節までの長さ:約15cm)
2 折り返したところから、約5~10cmの位置で足側にシーツを折り返す。もし下肢の力が低下していて、タックに足が入ってしまいそうな場合は頭側に折り返す。
③コーナー部分のシーツをマットレスに入れ込む
・上シーツの場合、三角形よりもゆるみやすい四角形に処理します。
どうして?:下シーツとは異なり、患者さんの動作に合わせてシーツがマットレスからずれるようにするためです。
■四角形の処理の仕方(手順は三角折りの4までは同じです)
1 タックを維持したまま、ベッドの側面にたれているシーツを頭側25~30cmの位置でもつ。
2 そのまま垂直に持ち上げると、三角形になる。このとき、三角形が直角になるようにする。
3 三角形の部分をベッド側に倒し、ベッドの上に置く。
4 三角形の頂点をもって、側面におろし、三角形の部分を四角にしてマットレスの下に入れ込む。
5 足側から40~50cmの位置までシーツを入れ込み、のこりはベッドの側面にたらしておく。
5毛布をかける
①毛布を広げる
・たたんだままの毛布を頭側から15cmの位置で、中心線にあわせてベッド上に置き、たたみ方を考慮して広げていきます。
どうして?:頭側から15cmの位置に毛布の上端を合わせるのは、患者さんの肩まで毛布で覆われるようにするためです。
②毛布を足側のマットレスの下に入れ込む
・足側のマットレスを包み込むようにして毛布を入れ込みます。
③コーナーの部分をマットレスに入れ込む
・上シーツと同様、四角折りにしてマットレスに入れ込みます。
・入れ込むシーツの長さも上シーツと同じく、足側から40~50cmです。のこりはベッドの側面にたらしておきます。
6スプレッドをかける
①スプレッドを広げる
・上シーツと同様にスプレッドを広げます。スプレッドの上端とベッドの上端を合わせるようにします。
②スプレッドを足側のマットレスに入れ込む
・マットレスを包み込むようにスプレッドを入れ込みます。
③コーナー部分のスプレッドを整える
・スプレッドは最も外側になるため、特に見た目には注意しましょう。
・ここまでがクローズドベッドの作り方です。埃がかからないように閉じた状態であり、患者さんが居ない場合に作ります。
患者さんを迎える場合は、オープンベッドにしておきます。掛け物を扇子折りにして足元にたたんでおきます。このとき、スプレッドと上シーツの上端を折り込んで襟元を布団のようにまとめておきます。最後に、枕に枕カバーをかぶせて定位置に置きます。
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