陰部洗浄の目的・手順・観察項目〜根拠がわかる看護技術
- 公開日: 2018/2/15
- 更新日: 2020/4/16
*2020年4月16日改訂
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陰部洗浄とは
入浴ができない患者さんやおむつを装着している患者さんを対象に、陰部を清潔に保つために洗浄します。膀胱留置カテーテルが留置されている場合は、逆行性尿路感染の予防として必ず実施するようにします。
最低でも1日1回、加えて汚染が強いときには適宜、実施します。
陰部洗浄で注意したいこと
観察項目
陰部洗浄は、日ごろはなかなかできない陰部をしっかりと観察できるよい機会です。失禁に伴う皮膚炎(失禁関連皮膚炎:IAD)など、皮膚トラブルの有無をよく確認しましょう。特に、入院中の高齢者は、免疫力が低下しているため、真菌感染を起こしているケースが多くみられます。
また、膀胱留置カテーテルが挿入されている場合は、カテーテルの圧迫による潰瘍やびらんなどの異常が生じていないかを確認します。
洗浄についての注意点(石鹸の使用、お湯の温度など)
陰部は、汚れを落とすため洗浄剤(石鹸など)を使用して洗浄します。洗浄時は、しっかりと汚れを落とすために十分に泡立てます。微温湯(38℃~39℃)で洗浄剤を十分に洗い流し、落とすようにしましょう。また、水分はしっかりと拭き取ります。洗浄剤や水分が残っていると、おむつ内でむれてしまい、皮膚トラブルの原因となるとともに患者さんの不快感にもつながります。
鼠径部や陰茎の裏側、皺の部分、陰毛の部分などが見落としやすいところなので、注意しましょう。
陰部洗浄の手順
物品の準備(一例)
・ディスポーザブル手袋(未滅菌)
・マスク
・ビニールエプロン
・交換用のオムツ
・洗浄剤(高齢者や皮膚が脆弱な患者さんには弱酸性の泡タイプの洗浄剤が適している)
・陰部洗浄用のボトル(38℃から39℃の微温湯を入れる)
・清拭用タオル(おむつ交換のため)
・便器(必要があれば)
・拭き取り用ペーパーもしくはおしりナップ(おしり拭き)
・ティッシュペーパー
・防水シーツ
・廃棄物のバケツなどの容器やビニール袋
・タオル(患者さんにかけるため)
看護師の準備
・感染対策のため、スタンダードプリコーションのもと、マスク、ビニールエプロン、手袋を着用します。
患者さんの準備
1 周りの患者さんにも配慮して、カーテンでプライバシー空間を確保し、陰部の洗浄を行うことを説明します。
2 患者さんを仰臥位にし、膝を立ててもらいます。
拘縮があり姿勢の保持が難しい場合は、他の看護師に固定してもらうか、側臥位で行います。
3 腰から大腿部の付け根あたりまでを露出します。他の部分はタオルをかけるなど、できる限り露出を少なくします。
どうして?:患者さんの羞恥心に配慮するとともに、体が冷えないように保温するためです。
5 防水シーツを臀部の下に敷きます。
6 使用していたおむつ、または尿取りパッドを広げます。もしくは便器を置きます。
おむつやパッドに排便がみられる場合、拭き取り用ペーパーもしくはおしりナップ(おしり拭き)などで拭き取り、おむつなどを下にずらして便の付着部分が臀部にあたらないようにします。
陰部洗浄の実施
※ケアの実施には、手順ごとに患者さんに説明を行い、不安を取り除くように配慮します。
※実施中は、陰部の状態を観察し、皮膚トラブルがないかどうかを確認します。
1 必要物品を患者さんの足の間に配置します。
どうして?:ケアがしやすく、時間の短縮にもつながります。
2 陰部を微温湯で濡らします。
微温湯を流すときは、洗浄用ボトルを近づけ過ぎず、真上に持ち、手のひらにそわせて流すようにします(図)。
どうして?:湯温の確認と水圧緩和のためです。
3 泡立てた洗浄剤を陰部につけます(塗布します)。
どうして?:泡の表面にある界面活性物質が汚れを浮かせて包み込むためです。また、泡立てた洗浄剤は微温湯で流したあとに石鹸残りが少ないからです。
4 陰部を洗います。
尿道口から肛門にかけて、一方向で洗うのが基本です(図)。
どうして?:肛門側からの大腸菌などの細菌感染を防ぐためです。
陰部の皮膚や粘膜は傷つきやすいので、決してこすらないようにします。
泡でなでるように、やさしく洗います。
<男性の場合>
・性器をもちあげ、包皮を体幹側に引き寄せて、亀頭の包皮の内側や陰嚢の裏側も丁寧に洗うようにします。睾丸は圧迫しないようします。
<女性の場合>
・まずは恥骨部、鼠径部を洗います。
・大陰唇を開き、小陰唇との間もしっかりと洗います。
どうして?:大陰唇と小陰唇の間は恥垢がたまりやすいからです。
5 泡を拭き取り用ペーパーもしくはおしりナップ(おしり拭き)などで拭き取ります。
6 微温湯で洗浄剤を流します。
洗浄剤が残らないように、十分に洗い流します。
7 拭き取り用ペーパーもしくはおしりナップ(おしり拭き)でしっかりと水分を拭き取ります(図)。
拭き取る際には、拭き取り用ペーパーもしくはおしりナップ(おしり拭き)をやさしく押し当てるようにします。決して、こすらないようにしましょう。
※鼠径部や陰茎の裏側、皺の部分、陰毛の部分など洗浄剤や水分が残りやすいところは特に注意します。
8 患者さんに側臥位になってもらい、臀部を洗います。
臀部は「の」の字を描くようにして洗います(図)。
9 泡を拭き取り用ペーパーもしくはおしりナップ(おしり拭き)などで拭き取ります。
10 微温湯で洗浄剤を流します。
洗浄剤が残らないように、十分に洗い流します。
11 拭き取り用ペーパーもしくはおしりナップ(おしり拭き)でしっかりと水分を拭き取ります。
12 最後に全体を観察し、洗浄剤や水分が残っていないかを確認します。
13 敷いていたおむつやパッドを取り除き、新しいものに交換します。
14 衣服と寝具を整えて終了します。
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看護計画
実施計画(ケア計画)に陰部洗浄を含む場合はどのようなケースが考えられるのかを尿路感染症の患者さんに対する計画を例として紹介します。
看護問題
#1 感染症に伴う体力の低下
#2 尿路の細菌感染に伴う排尿パターンの変調
看護目標
・症状の悪化に伴う体力の低下を軽減する
・QOLを維持しながら排尿パターンが正常に戻る
OP(観察計画)
・バイタルサイン
・意識状態(JCS、GCS)
・排尿時痛の有無、程度
・尿の性状、色調
・排泄回数
・症状に対する患者の理解、認識
・食事摂取量
・飲水量
・睡眠状態
・苦痛の有無と程度
・ADLの変化
TP(ケア計画・援助計画)
・医師の指示にもとづく薬剤の使用、管理
・必要に応じて安静の保持、安楽な環境を整える
・ADLに応じた排泄環境を整え、必要に応じた排泄の援助を行う
・陰部洗浄を行い、陰部の清潔を保つ
・必要に応じて疼痛コントロールを行う
EP(教育計画)
・排尿は我慢せず行うことを説明する
・陰部の清潔を保つ必要性を説明する
・痛みは我慢せずスタッフに伝えてもらうことを説明する。
・治療により原因菌の消失が図れるにつれて症状も消失することを伝える
・水分摂取の必要性について説明する
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