CVポート・CVカテーテル-造設・挿入と観察のポイント
- 公開日: 2017/5/14
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CVポートとは
CVポート(皮下埋め込み型中心静脈アクセスポート)とは、中心静脈カテーテルの一部で、抗がん剤や高カロリー輸液の投与に使用します。
IVHカテーテル(中心静脈カテーテル)と違い、末梢を直径2~3cmのリザーバータンク(ポート)に接続し、外科的処置にて皮下に埋没させます。ポートの中心にはセプタムと呼ばれるシリコンゴムが埋め込まれており、ヒューバー針と呼ばれる専用の針を皮膚の上から刺入し、カテーテルを通じて中心静脈内に薬液を注入します(図1)。
カテーテルの刺入部は鎖骨下静脈や内頸静脈、または抹消静脈や大腿静脈のこともあります(図2)。ポートの位置はカテーテルを刺入した部位の近くのほか、前胸部または上肢や下肢の場合もあります。どこに埋め込まれているか確認しておきましょう(図3)。鎖骨下静脈からの刺入の場合は、ピンチオフ(カテーテルを鎖骨と第一肋骨の間に挟み込みカテーテルを閉塞・損傷すること)に注意します(図4)。
血管刺激性の強い薬剤を末梢血管から投与した場合、血管炎、腫脹や疼痛などが起こることがありますが、CVポートのカテーテルは中心静脈に挿入されているため、これらの血管刺激性に影響されることなく、安定的な持続的投与が可能となります。
CVポートの穿刺と抜去
生食20mLシリンジと接続したヒューバー針内を薬剤で満たし、クランプで止めておきます。2.5~5mLシリンジでは高圧になり、ポートやカテーテルを損傷することがあるため、注意が必要です。
刺入部を消毒し、CVポート周囲を触り中心位置を確認します。ヒューバー針を利き手に持ち、セプタムに対して垂直に刺し、タンクの底まで進めコツっとした感覚があるまで針を挿入します。刺入状態がよくないと薬剤が漏出することがあります。また、ポートの周囲にはカテーテルがあり、ポートから外れて刺入すると事故につながるため、細心の注意を払います。
吸引して血液の逆流を確認し、クランプで止めておきます。穿刺に問題がないか、針の閉塞がないか観察した後、ルートを接続して滴下が良好なことを確認します。ヒューバー針の下に針が安定するような厚さで滅菌ガーゼをはさみ、翼状部の上から一緒にドレッシング材を貼付します。
抜去する際は、使用中のヒューバー針をヘパリン入り生食で洗浄(フラッシュ)した後に行います。ヒューバー針が外れてしまわないよう固定しながら、CVポートの上に貼付されているドレッシング材をはがし、垂直に上げて抜針し、止血したことを確認します。
CVポートの観察ポイント
薬剤漏出や低栄養状態、皮下感染によって潰瘍が形成されることがあります。ヒューバー針固定部・CVポート周囲の疼痛、腫脹、出血、発赤などの局所性炎症反応に注意します(図5)。また、敗血症などの全身性炎症反応をバイタルサインで観察することも大切です。無菌操作のミスが感染の原因となるため、無菌操作は慎重に、ミスなく行うよう徹底します。
CVポートの長期間留置によりカテーテル周囲や内部に血栓が生じ、血栓症を起こすこともあります。CVポートカテーテルが閉塞していないか、カテーテル先端の位置に異常がないか、薬剤の滴下に問題がないか、ヒューバー針固定部は問題がないか、輸液ポンプは正常に動作しているか、輸液セット各部の接続は緩んでいないか、ルートに折れや閉塞、血液の逆流や気泡が混入していないかも確認します(図6)。
CVカテーテルのタイプと取り扱い
カテーテルの先端には主に2つのタイプがあります。1つは、カテーテルの側面に側孔(スリット)が入っているグローションタイプ(図7)です。薬剤注入時や血液吸引時に側孔が開き、薬剤が血管内に流入します。通常、側孔は閉塞しているため、血栓による閉塞が起こりにくいというメリットがあります。
もう1つは、先端が開放されている一般的なタイプのカテーテルで、オープンエンドタイプ(図8)です。オープンエンドタイプでは、逆流した血液が閉塞を招く危険性が高いことから、閉塞が起こっていないか、血流の逆流がみられないか必ず確認します。
薬剤注入後の注意点
薬剤注入後、ポートやカテーテル内に薬剤が残ることがあります。残った薬剤が他の薬剤と混ぜ合わさると、ポートやカテーテル内で結晶化し、閉塞する可能性が高くなります。そのため、20mL以上の生食でポートとカテーテル内をフラッシュしロックします。
ロックに使用する薬液は、カテーテルのタイプにより変わります。血栓が形成されにくいグローションタイプでは、ヘパリンは使用せず生食で行います。オープンエンドタイプでは、逆流した血液により閉塞を招くおそれがあるため、ヘパリン加生食でフラッシュおよびロックを行います。
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