中心静脈カテーテルの挿入方法と看護のポイント
- 公開日: 2021/10/31
中心静脈カテーテルを挿入する目的
各挿入部位のメリット・デメリット
静脈名 | メリット | デメリット |
内頸静脈 |
・穿刺が容易 ・合併症リスクが低い (救急や麻酔領域では第一選択) |
・頸部が可動するため固定が難しい ・患者さんの不快感 |
鎖骨下静脈 |
・固定が容易 ・感染や血栓リスクが低い ・患者さんの不快感が少ない |
・血管の同定が難しい ・気胸や血気胸のリスクが高い |
大腿静脈 |
・穿刺が容易 ・穿刺時の合併症が起きにくい |
・陰部が近く感染リスクが高い ・カテーテル留置長が長いため屈曲や血栓リスクが高い ・固定が難しい ・下肢の運動が制限 |
上腕尺側皮静脈 (末梢静脈挿入型中心静脈カテーテル:PICC) |
・穿刺が容易 ・気胸や動脈穿刺など重篤な合併症が起こりにくい ・感染リスクが低い |
・血栓リスクが高い |
準備する物品
※中心静脈カテーテルではルーメン(内腔)が何本に分かれるかでシングル、ダブル、トリプルの3種類があります。
例えばトリプルルーメンでは1本のカテーテルが3股(ライン)に分かれており、それぞれのラインから投与された薬剤は、カテーテルの先端の出口がラインごとに少しずれていることで薬が混ざらないように投与することが可能です。3つのルーメンは、カテーテル先端からDistal(ディスタール:遠位)、Medial(メディアール:中位)、Proximal(プロキシマール:近位)と名付けられています。手術室では基本的にはトリプルルーメンが選択され、中心静脈圧ライン、昇圧薬投与ライン、降圧薬投与ラインの3つのラインなどに使用されます。
中心静脈カテーテル挿入の手順
穿刺方法は、体表の解剖学的特徴を目安に穿刺を行うランドマーク法と超音波(エコー)ガイド法に大別されます。超音波ガイド法では、ランドマーク法に比べカテーテル留置の成功率が高く、合併症発生が少ないため日本麻酔科学会ではエコーガイド下穿刺が推奨されています。今回は手術室で一般的に行われるエコーガイド下内頸静脈穿刺(セルジンガー法)を中心に解説していきます。右の内頸静脈は血管の走行が上大静脈まで直線的に下りるので、反対側の腕頭静脈などへ迷入しにくい特徴があり、手術室では第一選択となっています。
1.モニター機器と救急カートの準備
患者さんをベッドで仰臥位にし、心電図、血圧計、パルスオキシメータを装着。
2.患者さんの体位を作成
内頸静脈や鎖骨下静脈穿刺では、静脈をうっ滞し怒張させ穿刺を容易にするため、10度程度ベッドをヘッドダウンします(うっ血性心不全、頭蓋内圧亢進、重症呼吸不全では病状悪化の可能性があり医師の判断による)。枕を外し、穿刺部位と反対側に患者さんの顔を向けます。穿刺部位を十分伸展させるために肩枕をいれることもあります。また、静脈が虚脱している場合は、下肢を挙上することもあります。消毒前に、エコーで目的の血管を探索します(プレスキャン。未滅菌エコーゼリーや拭き取る用のティッシュも準備)。