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【連載】最新情報がわかる! 学会・セミナーレポート

LDLコレステロールと動脈硬化性疾患の関連性

  • 公開日: 2017/8/5
  • 更新日: 2020/10/22

2017年7月18日、フクラシア東京ステーションにて、製薬企業MSD株式会社によるプレスセミナーが開催されました。りんくう総合医療センター 大阪大学大学院医学系研究科 総合地域医療学寄付講座・循環器内科学 山下静也先生が、LDLはなぜ下げるべきなのかという視点で、脂質異常症について講演されました。そのセミナーをレポートします。


増える高コレステロール血症

現在、日本人の死亡原因の第2位は心疾患で、その数は年々上昇していますが、そのほとんどが動脈硬化により引き起こされています。粥状動脈硬化によりさまざまな疾患が引き起こされますが、中でも冠動脈疾患のリスクが高くなることが研究によりわかっています。粥状動脈硬化は、血管の内膜と中膜の間にコレステロールが貯留することで起こりますが、動脈硬化の発症は生活習慣病がベースにあり、約40年の間に男性で9倍、女性で6倍ほどに増加しています。

粥状動脈硬化の危険因子には、男性・閉経後の女性、肥満、家族歴、喫煙、ストレス、高血圧、脂質異常症、糖尿病、加齢、などがあります。また、ライフスタイルの欧米化により日本人の血清コレステロール値は現在では米国とほぼ同等となっており、動脈硬化のリスクが高くなっていることがわかります。

コレステロールが高値の場合に冠動脈疾患のリスクが高くなると考えられている一方、従来の研究結果では、コレステロールが低値の場合は、死亡率・脳出血の発症率が増加すると考えられていました。しかし、NIPPON DATE80(17.3年追跡)によって、肝疾患・発がん症例などコレステロール値に影響するケースを除いた場合には、低コレステロール域での総死亡率の上昇が認められないことがわかりました。

人間の胎児の総コレステロールは50-60mg/dl(LDL-コレステロールは10-20mg/dl)であり、PCSK9機能欠失型変異で著明な低LDL-コレステロール血症である人は健康であることがわかっています。そのため、LDL-コレステロールが低値であっても問題にはならないと考えられます。

また、高コレステロール血症の中でも、家族性高コレステロール血症は高頻度な遺伝性疾患であるにもかかわらず、あまり知られていません。少なくとも200~500人に1人が罹患していると考えられていますが、診断されていない人が多いのが現状です。

高LDLコレステロール血症が身体にとってよくないということが明らかになった一方、糖尿病患者や冠動脈疾患既往患者などコントロールが特に重要な人の中でも、男性で6割、女性では5割程度しか、LDLコレステロールが管理目標値を達成していないという現実もあります。

動脈硬化性疾患予防ガイドラインの改訂

上記の内容を反映し、動脈硬化性疾患予防ガイドラインが改訂され、2017年版が発表されました。

主たる改訂点は以上6点です。

・Clinical Question(CQ)とSystematic Review(SR)の導入
→a.危険因子の評価における脂質異常症、b.動脈硬化性疾患の絶対リスクとc.管理目標値、d.生活習慣の改善における食事療法/薬物療法にCQを設定しSRを実施した

・絶対リスクの算出
→リスク評価は絶対リスクで行う、アウトカムを死亡ではなく冠動脈疾患の発症に変更、LDLコレステロールやHDLコレステロールの情報を反映させるため吹田スタディを採用
*吹田スタディ:吹田研究は,都市部住民のランダムサンプルを対象としたわが国で唯一の疫学研究。健診で得られた結果と心血管疾患リスクとの関連を明らかにし,日本人の健康維持および増進のための基礎資料を得ることを目的としている。

・高リスク状態の追加
→高尿酸血症、睡眠時無呼吸症候群を考慮すべき病態に追加

・二次予防における高リスク病態での厳格なLDLコレステロール管理
→家族性高コレステロール血症や急性冠症候群は現在のLDLコレステロール<100mg/dlよりさらに厳格に管理するよう提言した

・家族性高コレステロール血症(FH)の記載の拡充
→新薬の登場、小児FHへのスタチン適応拡大などに伴い、FHの診断・治療の記載を詳細に行った

・エビデンスレベルと推奨レベルについて
→エビデンスレベルはわが国のエビデンスを主たるものとし、少ないものにおいては諸外国の重要なものを使用した

高コレステロール血症に関しては、一次予防が重要となりますが、今回のガイドラインでは危険因子数で判断できるフローチャートの簡易版が作成され、以前より容易にリスク管理ができるようになっています。

従来、危険因子の評価にはLDLコレステロール、HDLコレステロール、Non-HDLコレステロール、総コレステロール、トリグリセライドの値が使用されていましたが、Non-HDLコレステロールは、食事の影響をうけづらいということもあり、指標として使用されることが増えてきました。

食事療法、運動療法などの生活習慣の改善や、必要に応じて一次予防で薬物療法を併用することも、包括的リスク管理において必要となります。