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【連載】最新情報がわかる! 学会・セミナーレポート

~がん患者さんの治療継続を支援するために~ 抗がん薬治療の副作用軽減を目的とした 皮膚障害と口腔粘膜炎へのケアとポイント【PR】

  • 公開日: 2017/10/30
  • 更新日: 2020/3/26
  • # 注目ピックアップ
  • # がんの副作用ケア
  • # がんの原因・メカニズム

分子標的治療薬の普及により、がんの治療実績の向上とともに、従来の抗がん薬とは違った特有の副作用に注目が集まっています。中でも看護師に関心が高い「皮膚障害」と「口腔粘膜炎」の支持療法に関するセミナーが、2017年8月27日に東京で開催されました。治療の継続・成否に大きく影響するセルフケア支援のあり方や予防的ケアについてレポートします。


講演1 皮膚障害のメカニズムと支持療法

清原 祥夫(静岡県立静岡がんセンター 皮膚科 部長)
清原 祥夫(静岡県立静岡がんセンター 皮膚科 部長)の写真

皮膚障害の副作用対策が抗がん薬治療の成否のカギ

近年、分子標的治療薬はさまざまながんの予後を加速度的に改善し、目覚ましい治療効果を上げていますが、その一方で副作用である皮膚障害にも高い関心が寄せられています。皮膚障害はそれ自体が命を落とすような副作用ではないものの、患者さんのQOLを低下させ、時に闘病意欲を削ぐことが知られ、およそ3割の患者さんが治療から離脱してしまうといわれています。しかしながら、皮膚障害が現れた人のほうが予後がよいケースが多くみられることから、皮膚障害は治療効果のバロメーターとなる側面ももち合わせています。

これまで患者さんは皮膚障害に対して我慢を強いられてきました。ところが、早期から対策を講じればコントロールは可能で、症状が悪化した場合には、分子標的治療薬を減らしたり一時中断することで、治療を継続・再開することができます。分子標的治療薬は治療効果の高い薬ですから、多くの患者さんが安心して治療を続けられるように、皮膚障害への対策を確立する必要があるのです。

分子標的治療薬でみられる主な皮膚障害には、EGFR阻害薬によるざ瘡様皮疹、乾皮症、爪囲炎や、マルチキナーゼ阻害薬による手足症候群などがあります。発現率は高く、分子標的治療薬を投与する患者さん全員に生じるものとして対処するべきだと考えます。例えば、ざ瘡様皮疹は、投与開始から1〜2週間くらいがピークになりますが、早い段階から強いステロイド外用薬を使うことにより、不可逆性のケロイド様変化の発症が抑制でき、回復までの期間を短縮できることがわかっています。「火事はボヤのうちに徹底的に消す!」が被害を最小限にできるのと同じです。

皮膚障害の予防と治療においては、患者さんと家族のセルフケアが必須です。医師の処方も実行されなければ意味がありません。そのためには、医師、薬剤師、看護師など多職種によるチーム医療体制が必要です。そして、それぞれの職種が分担、協調して患者さんのセルフケアを支援するなかで、日々患者さんのケアにあたる看護師にはキャプテンシーを発揮し、チームの調整役を担ってもらいたいと思っています。

講演2 症状軽減のためのスキンケアとセルフケア指導

西島 安芸子(静岡県立静岡がんセンター 看護師長/皮膚・排泄ケア認定看護師)
西島 安芸子(静岡県立静岡がんセンター 看護師長/皮膚・排泄ケア認定看護師)の写真

生活習慣に合わせてスキンケアの方法を具体的に指導

セルフケア指導にあたっては、事前に患者さんのスキンケアに関する生活習慣やサポート体制などについて、できるだけ具体的に把握しておくことが大切です。入浴や洗顔の習慣、その後に保湿剤を使っているか、男性の場合はひげ剃りの方法も確認します。毎日入浴するのが当たり前と思いがちですが、汗をかいた日だけ入浴するという人も意外と多いのです。女性の場合は、愛用の化粧品が使えなくなることがあるので、化粧品へのこだわりについて確認しておくと指導に役立ちます。そのほか、家庭生活や仕事のなかで紫外線や化学物質などの刺激を受けることがないか、職場にがん治療のことを伝えているか、皮膚障害によって生活や仕事に支障が生じる可能性はあるかといったことを把握します。

また、皮膚障害について医師から説明を聞いているか、どのように認識しているかを確認することも大切です。実際に皮膚障害が生じたとき、こんなことになるとは思っていなかったという患者さんも少なくありません。

スキンケアの方法は洗浄、保湿、保護の基本に沿って、洗浄剤や保湿剤の選択や使い方を具体的に指導します。洗浄剤は、特にスキントラブルが起きやすい状況にある人には弱酸性のものを勧めます。洗い流せない場合には洗浄クリームなどで汚れを浮かせて拭き取ります。保湿剤は、入浴後あるいは洗浄後15分以内に十分な量を使うことが大切で、塗布後の皮膚にティッシュペーパーを乗せてさらりと落ちるようでは使用量が足りていません。皮膚の保護については、患者さんの生活に合わせて、日常生活のなかで圧迫、摩擦、熱、乾燥、紫外線などの刺激をできるだけ避けるようアドバイスします。また外来では、爪囲炎に対するテーピング法など、皮膚障害が起きた場合の治療や対処方法も状態に合わせて指導していきます。
爪囲炎へのテーピング法について指導する西島先生の写真
爪囲炎へのテーピング法について指導する西島先生

講演3 口腔ケアのコーディネーターであるために知ってほしい口腔粘膜炎のメカニズムと支持療法

関谷 秀樹(東邦大学医療センター 大森病院 口腔外科 部長/がんセンター 部長/医学部准教授)
関谷 秀樹(東邦大学医療センター 大森病院 口腔外科 部長/がんセンター 部長/医学部准教授)の写真

抗がん薬開始前に口腔内の問題を解決しておく

齲歯や歯周病、歯列不正、尖った歯など口腔内の問題は、抗がん薬による口腔粘膜炎発症のリスクとなります。口腔内に問題がある状態で抗がん薬治療を開始すれば、感染が起き、抗がん薬投与後に白血球数が最低値を示すNadir(ナディア)の状態が起こった場合、発熱性好中球減少症という死亡例もある重篤な合併症を引き起こすこともあります。抗がん薬治療を最後までやり抜き、患者さんの生命予後を良好にするためには、投与開始前にこれらの問題を解決しておかなければなりません。1gの歯垢のなかに100億〜1,000億個も存在するという口腔細菌は、普段は何もしませんが、抗がん剤治療で免疫力が落ちたときに、さまざまな問題を引き起こすため、口腔ケアは抗がん薬開始後からでは手遅れだという認識が重要です。

当院のがんセンターでは、医師、看護師、歯科医師、歯科衛生士が連携し、抗がん薬を投与するすべての患者さんに対して、事前の口腔ケアを行っています。そうした体制がない医療機関でも、抗がん薬開始前に患者さんの口腔内をチェックし、問題があるケースには歯科への受診を勧めることが肝要です。そこで大切なのは、医療者が患者さんの口腔内をしっかり見て確認することです。「口の中はきれいにしている」という患者さんの自己申告を鵜呑みにしてはいけません。口腔内の観察をもとに、医師、歯科医師、歯科衛生士など他職種への連絡・調整、患者さんとご家族・介護者への指導等を行うことにおいては、看護師のコーディネーターとしての役割がとても重要といえます。

口腔粘膜炎などの口腔内の症状は適切なケアをすれば必ずよくなります。ポイントは、舌苔や歯垢・歯石を丁寧に取り除くこと、保湿ジェルや含嗽剤などで口腔内を保湿すること、炎症やそれによって起こる痛みを積極的に取り除くことです。また、口腔ケアは、吐き気や口腔粘膜炎、骨髄抑制などの抗がん薬による有害事象(副作用)の発現時期を予測し、これらが現れる前か、またはピークを過ぎて状態がよくなった時点などの次のサイクルに入る前で行うようにスケジュールを立てることが大切です。

講演4 症状を軽減するために看護師が行いたい口腔の評価とケア・セルフケア指導

久保田 玲子(東邦大学医療センター 大森病院 がんセンター 口腔機能管理部 主任/歯科衛生士)
久保田 玲子(東邦大学医療センター 大森病院 がんセンター 口腔機能管理部 主任/歯科衛生士)の写真

副作用発現時期を予測し、先回りして介入

私はがんセンター専任の歯科衛生士としてがん患者さんの口腔機能管理にあたっていますが、口腔ケアの方法はいまだ確立されておらず、試行錯誤の毎日です。

抗がん薬による口腔粘膜炎は、概ね投与開始後7〜12日ごろに現れ、3〜4週間ほどで治るといわれています。しかし、重症化すると食事の経口摂取が難しくなり、ADLやQOLが低下、さらには化学療法が継続できなくなることもあります。したがってできるだけ早く徴候を発見し、対処する必要があります。口腔粘膜炎のごく初期には、口腔内がザラザラする、ゴワゴワするといった違和感を感じることもありますが、この段階で症状を訴える患者さんはほとんどいません。患者さんにはあらかじめ、このようなちょっとした変化でも申し出るように伝えておくことが大切です。また、吐き気などが現れると口腔内ケアが難しくなります。当院では副作用の発症時期を予測し、症状が出る前に患者さんのもとを訪問し、介入するようにしています。

口腔内の状態を評価するツールとしては、OAG(Oral Assesment Guide)やCOACH(Clinical Oral Assessment Chart)などがあります。これらのツールを用いると、現れた症状について専門的な介入が必要かどうかを判断しやすくなります。

口腔内を観察する場合には、奥までよく見えるように必ずライトを使用します。手袋や器具などは水で濡らしてから口腔内に挿入するようにしましょう。舌の横や裏なども見落としがないように注意深く観察します。

また、特に高齢者では口腔乾燥を引き起こす薬剤の服用など、さまざまな原因で唾液分泌量が減少している人もいます。口腔ケアに使う歯ブラシ、舌ブラシ、スポンジ、保湿剤含有の含嗽剤やジェルなどにはさまざまなものがありますから、患者さんの口腔内の状態や好みに合わせて選択するようにします。
久保田 玲子先生、関谷 秀樹先生、清原 祥夫先生、西島 安芸子先生が横に並んでいる写真
左から、久保田 玲子先生、関谷 秀樹先生、清原 祥夫先生、西島 安芸子先生

分子標的治療薬ジオトリフ®錠に関する添付文書はこちら

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