がん化学療法による脱毛に悩む患者さんの不安を和らげる【PR】
- 公開日: 2018/2/1
脱毛のセルフケア支援
脱毛を予防することはできませんが、事前に準備しておいたり、工夫することで、患者さんの不安が緩和されたり、QOLを上げることはできます。ここでは患者さんからの相談が多いケアや工夫についてご紹介します。
洗髪について
洗髪頻度はこれまでどおり、シャンプーは特別なものを用意する必要はありません。基本的にはこれまで使用していたものを継続して使ってもらえばよいでしょう。ただし、ピリピリするなど、異常があれば相談してもらうようにします。
患者さんの中には、「髪がないのに洗髪の必要があるのか」と思っている人もいます。頭皮は皮脂の分泌が盛んなために、頭皮を洗うことが必要であることを伝えましょう。
また、洗うときは、シャンプーを直に頭皮につけず、掌で泡立て、爪で頭皮を傷つけないように指の腹で優しく洗うように伝えます。
脱毛が盛んな時期は、洗髪時に大量の毛が抜けて排水溝がつまることもあるので、洗髪前にブラッシングし、排水溝などには使い捨てのネットをかけておくとよいでしょう。
再発毛時のカラーリングやパーマについて
再び頭髪は生えてくること、そしてある程度の長さになるまでには時間がかかることを伝えます。髪が短い時点では、パーマ液や毛染め剤が直接地肌につきやすく、頭皮のトラブルを起こすこともあるため、ある程度の長さになってからのほうがよいことを説明します。
また、以前使っていたパーマ液や毛染め剤でも、抗がん剤で体質が変わっていることもあるため、使う前に可能であればパッチテストをしてみることを勧めましょう。
眉毛について
眉毛がなくなると、随分顔の印象が違ってしまうため、患者さんにとっては頭髪の脱毛とともに、大きな悩みでしょう。普段から眉毛を描いている女性でさえ、全く眉毛がなくなってしまうと、描きづらいものです。そこで、治療前に自分の顔を写真にとっておき、長さや太さなどのバランスの参考にするといった方法があることも事前に伝えておきましょう。
また、眉毛の形をしたスケールも出ているので、それを使うのも便利です。
まつげについて
まつげはおしゃれのためだけでなく、ゴミや埃が目に入るのを防いだり、眩しさを軽減する役割もあります。まつげが抜けて不便を感じる患者さんには、メガネやツバの広い帽子などを勧めます。
エクステンションは自毛にくくりつけるものなので、脱毛した状態ではできません。つけまつげは、ノリがまぶたの刺激にならなければ使えます。自然な長さのものや、カールのものを選び、目の大きさに合わせてカットして使うと自然な形に仕上がります。目頭から5mmほど離してつけると、チクチクしないようです。
アイラインを引くことで目元の印象がくっきりするので、つけまつげに抵抗のある患者さんには、この方法を勧めるとよいでしょう。
帽子の使用について
脱毛する時期は、家中に髪の毛が落ちてしまうので、家の中でも帽子をかぶっておくとよいことを伝えます。ただし、地肌に刺激のない綿素材などで、洗濯がしやすいものを勧めています。また、バンダナなどで代用してもよいでしょう。
仕事など、外出する機会の多い人には、外出用に少しオシャレな帽子や、つけ毛をつけられる帽子など、室内用と外出用があると便利です。
ウィッグについて
ウィッグは患者さんの生活スタイルで、必要性が変わってきます。例えば仕事上、帽子がかぶれない、あるいはこれまでの雰囲気を極力変えたくないという患者さんには、治療前に自分の髪質や色に合わせたウィッグを作っておくことを勧めています。一方、ほとんどを家で過ごしているのであれば、脱毛してから準備してもいいことや、帽子やバンダナなどで代用できることを伝えます。
ウィッグの素材には人毛や人工毛、ミックス毛があります。髪質が自然に見えるのは人毛ですが、明るい髪色がよければ人工毛でも違和感はないので、病院に置いてあるウィッグやパンフレットなどを利用して、選び方のコツを伝えます。
また、頭皮は皮脂分泌が盛んなため、汗と皮脂を吸収する意味でも、ウィッグの下に薄手の帽子をかぶると、ウィッグのメンテナンスがしやすいでしょう。
患者さんを支援する上で気をつけること
患者さんにとっては、脱毛したときの姿を周囲の人からどのように見られるか、今までの人間関係が保てなくなるのではないかなど、社会とのつながりに関する不安や悩みが生じやすいといえます。
治療が始まる前に、患者さんがどんな生活をしているのか、治療しながらどんな生活を続けていこうと思っているかを聞き、看護師が理解しておくことが大切です。そうすることで、患者さんの個別性に応じた、具体的な支援ができます。
特に抗がん剤での脱毛は、ごっそりと抜けるので、患者さんはある程度理解していても、そのときのショックは大きいといえます。そこで、治療前に脱毛の時期や脱毛の状況、再発毛の時期の見通しを伝えた上で、患者さんがどんな情報を必要としているかを聞き出し、対策を患者さんと一緒に考えることが大切です。
男性患者さんの場合は、脱毛についての相談が少ないように感じていますが、相談がないからといって不安がないわけではありません。相談しづらいと思っている可能性を考え、「いつでもお困りのことがあったら声をかけてくださいね」などと、なるべくこちらから声をかけるようにしています。
外見の変化があったとき、周囲からどう見るかを患者さんは気にします。ウィッグや帽子をかぶったり、眉毛を描いたりしたときに周囲からどう見えているのかを聞ける人がいると、周りからみるとそれほど違和感がないといったことがわかり、不安を軽減できることがあります。ですから、周囲に一人ぐらいは治療中であることを知っていて、ウィッグをかぶったりしたときにどう見えるかといったことを聞ける人を作っておくことを勧めています。
情報収集の仕方
現在はがん患者さんのためのウィッグの種類も豊富なため、患者さんがたくさんある選択肢の中から、「これだったら手入れも簡単で使えそうだ」と選択できるように、いろいろな情報を集めています。その上で、患者さんの希望や生活スタイルになるべくあったものを一緒に探すようにしています。
また、アピアランスケアに関する書籍も、看護師として患者さんと一緒に考えていくときのよりどころにもなるため、よく活用しています。
患者さんへの生活指導に役立つ
sawai oncology「日常生活のアドバイス」(医療関係者向け)
http://med.sawai.co.jp/oncology/advice/
「日常生活のアドバイス」は、沢井製薬が運営する医療関係者向けがん情報サイト内にあるコンテンツです。がん治療に伴う副作用を軽減し、治療を継続できるよう、患者さんご自身でできる身近な運動や食事(レシピ)、ケア、美容情報などをご紹介しています。現在、便秘・下痢・吐き気・口内炎・味覚障害・顔色・皮膚障害・脱毛の8つの副作用を公開しています。印刷し、患者さん個々に合わせてお使いいただけます。
(運営:沢井製薬株式会社)