【書籍紹介】企業変革理論の看護版−企業の変革に学ぶ、看護現場を「変える」秘訣
- 公開日: 2018/10/16
変化する医療環境と求められる看護の「変革」
超高齢社会の進展やそれに伴う疾病構造の変化、医療技術の進歩、見直される診療報酬や介護報酬。医療を取り巻く環境が変化していくように、提供する看護にもその変化に合わせた対応が求められます。患者さんによりよい看護を提供するためには、どのように病棟の看護を変化させ、その変化をうまく進めていけばよいのでしょうか。看護現場において、変革をリードするための参考となる書を紹介します。
変革のプロセスモデルは一般企業
著者の倉岡有美子さんは、看護管理学を修め、教職に就きながら、看護管理者向けの研修会の講師としても活躍しています。臨床経験を積み、大学院の受験をきっかけに読んだマネジメントの本のなかでコッターと出会います。ジョン・P・コッターは企業におけるリーダーシップ論の権威として知られています。コッターのリーダーシップの考え方に影響を受け、授業にもコッターの思想を取り入れたワークを行いながら、試行錯誤を重ねていくうちに、看護現場への応用の手応えを得ました。
本書は、日々の業務改善や新しい試みの実践など、看護現場の変革に取り組んでいる看護師、看護管理者に向けて、一般企業で成功をおさめているコッターの組織変革の代表的な理論である「企業変革の8段階」を取り入れ、応用することを勧めています。全4章で構成されており、主に病院での看護問題や組織の変革について、規模(影響範囲)や主導者、期間が明確に定義され、変革を成功させるうえで重要な8段階を看護現場へどのように取り入れていけばよいかを事例とともに、わかりやすく解説しています。
変革の成否を握る「問題の概念化」
特筆すべき点は、1〜8段階の前段階にあたる「問題の概念化」をオリジナルにはない「0段階」として新設しているところです。著者は問題の本質を捉え、明確にするプロセスこそ最も重要と考え、変革すべき問題を慎重に吟味するよう促しています。さらに、「企業変革の8段階」を看護師が解釈しやすい表現に変え、「問い」のかたちにすることで、知ることに留まらず、頭が考え出すよう工夫されています。付録として収載している「変革計画シート」には、0~8段階のプロセスを実際に記入し、めざす変革を整理できるようになっています。書き方の具体例も実践的な内容で示され、学んだ知識をアウトプットするツールとして最適です。
企業の組織変革の見地と著者の経験知から、看護現場における変革の場面でつまずきやすい点、うまくいった点をヒントや要点として解説し、変革を円滑に進めるために役立つ理論を提示してくれる1冊です。
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『看護現場を変える0~8段階のプロセス コッターの企業変革の看護への応用』
著:倉岡有美子
発行:医学書院
定価:2,700円(税別)
判型:A5判
ページ数:152ページ