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【書籍紹介】看護師のためのアドラー流子育て・自分育て ーあなたが変われば、子どもも、家庭も、職場も変わる!ー

  • 公開日: 2019/7/4

看護師向けの子育て本とは限らない

 この本は6章立てで構成されており、「看護師」「アドラー心理学」「子育て」がキーワードになっています。子育て実践中のカウンセラー、心理学講座講師である著者が看護師としての経験も活かし、看護師向けにまとめました。看護師という仕事は失敗が許されない、完璧を求められる仕事です。そのため、家庭や子育てにも同じような考えを持ち込んでいる人が多いかもしれません。アドラー心理学を踏まえて著者は「子育ては完璧を求めなくていい」、「不完全な自分にOKを出す」といったことが大切だと述べています。

 子育てだけではなく、自分育て・部下育てにもつながる内容が盛りだくさんです。「アドラー心理学」をベースに、どの年代、どんな経験の看護師が読んでも1人の看護師としてだけでなく1人の人間を支えてくれる言葉が詰まっています。

 また、何より魅力的なのが、書きこみ式ワークがたくさんあるところです。本を読み、著者の語りかけに答える形でワークをやってみる。そうすることで、自然と心のモヤモヤが整理されていきます。この本を最初から最後まで通して読むことで、自分の心の変化がわかるような仕掛けもあります。著者との対話を楽しめる1冊になっています。

アドラー心理学から学ぶ、人生を前向きにとらえる方法

 第1章「子育てに活かせるアドラー心理学の考え方」では、子育てを題材にアドラー心理学のエッセンスについて解説されています。子育て中の人や子育て経験者であれば、子どもがお手伝いしてくれたから褒めるといったことは誰しもあるでしょう。しかし、著者は褒めには副作用があると述べています。「褒められるからやる」「褒める人がいるからやる」という外側からの因子で動く子どもは、褒めることだけでは消極的で依存的な子どもになる可能性があると述べています。そんなときに役立つのがアドラー心理学です。アドラー心理学は別名「勇気づけの心理学」といわれています。「勇気づけ」とは「困難を克服する活力を与えること」として、褒めることや叱ることよりも、体験か学び、それを次の行動に活かせるように関わることが大切であると述べています。

 第2章「子育ての前に必要なこと」、第3章「ひとりで頑張らない! 周りとともに子育てを」では、アドラー心理学を学ぶことで自分を大切にする考え方に触れることができます。

 著者は子育てをする前に、自分の心を整えることが大切ということと、「頑張る子育て」から「頑張らない子育て」へ考え方を少しずつでも変えていくことが大切と述べています。看護師として患者さんのために、親として子どものために尽くしてきた人は多いと思います。看護師として患者さんに、親として子どもに、これくらいするのは当然と思っている人はいませんか? しかし、まずは自分自身の声を聞いて、自分自身を大切に扱うことが必要と著者は述べています。すると、自分の心が整い、子どもの心も整っていき、自然と子育てで悩んでいることも解決していくと示唆しています。

 第4章、5章では、年齢別の子どもへ関わり方を詳しく述べています。ベビーサイン講師でもある著者は、モンテッソーリ教育や、おもちゃなど、さまざまなものを取り入れ子育てをしています。ベビーサインに関しては、すぐに使えるものが10個イラスト入りで紹介されています。

 小中学生、思春期の子どもへの関わり方、学校に行けない子どもたちへの関わり方など参考になる事例についても述べられています。

 また、第6章「大人が自分の人生を主人公で生きることが、子どもの自立につながる」では、子育てだけでなく、子育てを経験していない人にも参考になることが書かれています。例えば、子育てにおいて「私の育て方が悪いから、自分の子どもは手が掛かるのではないか?」と悩んでいる人もいるかもしれません。しかし、アドラー心理学を活用することで、自分は自分、子どもは子ども、そして過去や現在の状況をどのように捉え、どう意味づけしていくかは自分次第だと著者は述べています。

 特筆すべきは、子どもの性格は、親の育て方よりも誕生順位の方がより影響を与えると述べていることです。一番に生まれたのか? ひとりっこなのか? など、それぞれの誕生順位でどのような性格になりがちかということを、イラスト入りで紹介されています。もちろん、誕生順位がすべてではないとも述べていますが、子どもの性格について悩んでいる方は、子育てのヒント、参考として大いに役立つものと思います。

 子育てをしていなくても、著者はアドラー心理学に触れることで、今までの経験や環境が今の自分を作っているということ、人生を前向きに捉えることができると述べています。アドラー心理学は実践の心理学、「あなただけの小さな一歩を踏み出してみませんか?」この本はそう語りかけています。

大切なことは自分と向き合い、自分自身の人生を歩むこと

 紹介したもの以外にも、本書は子育てをしていない看護師にとってもヒントとなる内容になっています。例えば、職場での人間関係、先輩後輩関係についてなど、1年目の看護師から経験を積んだ看護師まで幅広く読むことができます。日々、業務に追われるなかで、自分の思うように相手を変えよう、直そうと考えず、自分は自分、相手は相手と考えることの大切さ、「勇気づけの心理学」であるアドラー心理学を通して自分が変わること、変わろうと決めることの大切さがわかります。また、周りに子育てと仕事の両立に奮闘中の看護師の方がいる場合は、相手がどんなサポートを心から望んでいるかが実感できます。

 この本を読むことで、看護師としてだけでなく、家庭や子育て、職場に変化が起こるきっかけになるかもしれせん。


看護師のためのアドラー流子育て・自分育てーあなたが変われば、子どもも、家庭も、職場も変わる!ー
著 長谷静香
定価 1500円+税
ページ数 266ページ

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