夏休み“菌のインバウンド“に要注意 海外旅行中に6割が下痢に
- 公開日: 2019/7/22
薬剤耐性の問題が世界中で深刻化している中、日本でも新たな薬剤耐性菌を増やさない、発生してしまったら菌を拡散させないという取り組みが始まっています。
国内での発生のみならず、海外の旅行先で現地の薬剤耐性菌に感染し、自覚のないまま日本へ持ち込んでしまうケースが増え、大きな問題となっています。
AMR臨床リファレンスセンターが、特に薬剤耐性菌が多いといわれる東南アジア、南アジアへの海外旅行経験を有する一般人331人を対象に、海外旅行中の下痢や腹痛の有無、薬の取り扱いについてアンケートを実施。その結果について国立研究開発法人 国立国際医療研究センター国際感染症センター 忽那賢志先生に解説してもらいました。
3人に2人が海外旅行先で下痢・腹痛に
旅行者が海外滞在中に発症する下痢症状のことを旅行者下痢症といいます。さまざまな原因が考えられますが、多くは食べ物についた病原性大腸菌、キャンピロバクター、サルモネラ菌などの細菌や、ノロウイルスなどのウイルスによって起こります。
途上国はまな板や包丁が汚染されている場合が多く、サラダやカットフルーツなどには食中毒を起こす菌が付着している可能性が高く、時には薬剤耐性菌が体内に入る機会にもなり得ます。
市販薬や医師に処方された薬を万が一のために持っていくのは悪くありませんが、問題とされるのは使用法です。特に抗菌薬においては、以前処方されて余った薬を持参し自己判断で中途半端に服用することは、絶対にいけません。薬剤耐性菌をつくってしまうことにつながるからです。
抗菌薬の服用にはメリットとデメリットがあることを頭に入れておくことが重要です。
抗菌薬は医師の説明どおりに正しく服用すればメリットがありますが、自己判断で服用した場合には以下のデメリットが考えられます。
海外旅行で持参した抗菌薬を服用するデメリット
1.薬剤耐性菌が体内に残り、腸内で増殖し国内へ持ち込むことになる
身体に有益な菌も死に、現地で体内に入った抗菌薬が効かない薬剤耐性菌だけが残り、腸内で増殖。身体の中にもったまま日本へ持ち込む可能性が高くなる。
2.マラリアや腸チフスなど命にかかわる感染症の診断と治療が遅れる
旅行者下痢症でない下痢の場合、抗菌薬を服用することでかえって診断や治療が遅れることがある。特にマラリアや腸チフスの場合、命にかかわることもある。
3.抗菌薬の服用による下痢と区別がつかなくなる
抗菌薬を服用すると腸内細菌バランスが崩れて下痢が起こることも。熱が出たからと抗菌薬を自己判断で服用すると、他の原因の下痢症と判断がつかなくなる。
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