第2回「つくばケアカフェ」レポート
- 公開日: 2019/7/26
7月5日(金)LALAガーデンつくば(つくば市)にて、医療・介護従事者を対象としたトークイベント「第2回つくばケアカフェ」が行われました。スピーカーは、『おたんこナース』などの原作者やエンゼルケア研究会代表として知られる小林光恵さん、そして『看護師のためのアドラー心理学』などの著書があり、アドラー心理学や潜在意識、コーチングをベースに講演や研修活動を行う長谷静香さんです。2人のスピーカーによるトークとともに、参加者との懇親会で会場が盛り上がりました。当日の様子をレポートします。
「快をもたらす」ことを目的とした「美容ケア」
トークイベントの冒頭では、今回の会場を提供したTSUTAYA LALAガーデンつくば店長の小松崎隆浩さんから「人が集まって生まれるパワー、継続することで生まれるパワーが、いつか何かに昇華されればうれしいと思っています」と挨拶があり、会がスタートしました。
1人目のスピーカーは小林光恵さんです。小林さんは、いま熱心に取り組んでいるテーマとして「看護にいかす美容ケア」について話しました。小林さんの提唱する「美容ケア」とは、「快をもたらす」ことに主眼を置いて行うフェイスマッサージです。エフルラージュ、フリクション、ペトリサージュ※など、美容業界でよく用いられる基礎的なマッサージの手技を駆使して、要介護状態にある高齢者などのケアが必要な方に実施します。
高齢者では、男性などはほとんど顔を触られた経験がない方も多く、その気持ち良さに驚愕するといいます。モニター的に、現在、小林さんが週に3日勤めているデイサービス施設「デイサービスつくばらいふ」(つくば市)で利用者さんに実施してみたところ、「こんなに気持ち良いのは初めて」「死ぬまでずっとやっていてもらいたい」など大絶賛の声が上がり、当初1回30分200円で始めた「フェイスマッサージ」は予約が急増し、小林さんの体力的にも500円で月2回までに制限しなければならなくなったそうです。
「美容ケア」を思いついたいきさつについて、小林さんはこう話します。
「私はエンゼルメイクにおいて、表情のこわばりを緩めるためなどに、毎回ご遺体の顔にマッサージを行うことを本や講演で提案しつづけてきました。そんななか、これはご遺体だけでなく、広いケア領域で生かせるはずと考えるようになったのです」。
看護の領域には、ハンドマッサージやリンパドレナージなど、すでに定着しているさまざまなマッサージの手技があります。しかし、なぜかこれまで顔だけはノーマークで、誰も触れてきませんでした。顔面の感度は高いので、顔に触れることの心身への影響力は高いにもかかわらずです。
小林さんは「おそらくこの美容ケアは介護の領域だけでなく、ICUなどの急性期の領域や医療依存度の高い方たちに、高い癒しの効果をもたらすのではないかと予想しています。そして、看護師だから手を出しやすい面があると思うんです」と話します。
現在は、その効果への実績を1つでも多く集めるため、機会を見つけてはホスピスなど臨床での実践例を蓄積しているところです。またマッサージによる癒しのエビデンスを集めるため、身体心理学の専門家をヒアリングするなど、多領域からアプローチを始めています。その効果が看護界につまびらかになるのも間もなくかもしれません。
※エフルラージュ:皮膚にできるだけ指を密着させてなでる技術。
フリクション:少し強くマッサージする技術。顎や小鼻に用いる。
ペトリサージュ:ねじる・こねる刺激。
多彩な人間関係を心地よく乗り切れるように
2人目のスピーカーは、長谷静香さんです。『看護師のためのアドラー心理学』『看護師のためのアドラー流子育て・自分育て』などの著書をもち、アドラー心理学を基にしたコミュ―ケーションサロン「勇気のしずく」を主宰して講演や研修を行っています。
長谷さんは「看護師は医師、検査技師、介護士など多くの職種とかかわり橋渡しとなる立場です。多彩な人間関係のなかで、互いが気持ちよくケアを行えるように、また自分も気持ちよくなれる方法をアドラー的な考え方、主張的な伝え方という方法を深めながら伝えたいと思います」と本日の目的を話します。
また今回は特に、トークイベントの参加者たちから最近、身の周りで起こった困りごとを募り、アドラー的視点からアプローチし、必要時に提案するというユニークな形式でスタートさせました。
ある参加者から、他職種がかかわる現場で、声の大きな人の意見に引っ張られがちになる、どのようにアプローチしたらよいのだろうという質問がありました。これに対し長谷さんは、「職種が異なればそれぞれ視点が違うことはよくありますね」と話し、その起こっている課題に対して個人レベルではなく、より大きな視点(共同体)でとらえるようにしていくのはどうだろうか? と提案がありました。
目の前の意見の差異にとらわれず、「利用者さんにとって一番良いこと、望ましいことは何だろう」についてそれぞれが考え、「目標の一致」をまずはかること。このうえで、かかわる医療従事者が横の関係で対等につながり、互いに一歩ずつ目標を目指していくことで、最終的には自然に歩み寄っていくことができるのではないかと伝えました。
他の参加者からも、「自分は仕事ができると思い込んで、職場のルールを守らない同僚がいるが、どう接すればよいか」など、人間関係にまつわる多くの悩みや相談が寄せられました。最後は長谷さんがファシリテートして、参加者はそれぞれのペースで発言したり聴く側にまわったり、笑いあり白熱した意見交換ありと、楽しくゆるやかで有意義な時間を過ごしました。
会の最後には小林さんが「この回も2回目になりました。今後はトークイベントという形式だけではなく、食事会やピクニックなども考えています。また講師が話すだけでなく、参加者が今の自分の取り組みや関心事を発表していくなど、皆でつくるイキイキとした会に育てていきたいと思っています」と今後への期待を話しました。
【おしらせ】
アドラー心理学をベースにお話された長谷静香さんのセミナー
「毎日の仕事をポジティブに!看護師と対人援助職を応援するセミナー」が開催されます。
2019年9月28日(土)東京・銀座「フェニックスプラザ3階」にて、13時から。