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第55回日本腹部救急医学会総会 学術共催セミナー 急性期診療における鎮痛鎮静の勘所【PR】

  • 公開日: 2020/3/30
  • # 注目ピックアップ

 第55回日本腹部救急医学会総会学術共催セミナーが、2019年3月7日と8日の両日、仙台国際センター(宮城県仙台市)で開催されました。その8日に山形大学医学部附属病院 病院教授の中根正樹先生が「急性期診療における鎮痛鎮静の勘所」をテーマに講演を行いました。
 
 国立病院機構仙台医療センター 救命救急部長の山田康雄先生を司会に迎え、急性期の重症患者さんに対する鎮痛鎮静の考え方を、最新の知見を交えながら解説しました。会場を埋めた参加者が熱心に耳を傾けていました。

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共催:第55回日本腹部救急医学会総会/ニプロ株式会社

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司会:国立病院機構仙台医療センター 救命救急部長 山田康雄先生

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演者:山形大学医学部附属病院 病院教授 中根正樹先生


鎮痛・鎮静に加えせん妄の管理も

 集中治療で「鎮痛・鎮静」を行う場合、「せん妄」も視野に入れて管理することが重要になります。2013年に米国集中治療医学会がまとめた「成人重症患者に対する鎮痛・鎮静薬の使用に関する臨床ガイドライン(以下、PAD*1ガイドライン)」でも、痛み・不穏・せん妄の病態管理を目的としています。

 わが国では、2014年に「日本版・集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不穏・せん妄管理のための臨床ガイドライン」が日本集中治療医学会によって作成されました。PADガイドラインに準じたものですが、そこには日本の現状を踏まえた視点も加えられており、J-PADガイドラインとして国内で活用されています。

 PADガイドラインは、新たに「immobility(不動)」と「sleep disruption(睡眠障害)」というトピックスが加えられた2018年版も作成されており、「PADISガイドライン」と呼ばれています。
 
 鎮静を検討するときは、まず鎮痛がきちんと施行されているかどうかを考えます。なぜなら、鎮痛がうまくなされていれば、良好な鎮静が得られるからです。そして、鎮痛・鎮静がうまくコントロールできれば、せん妄の発症を抑えることができます。
 
 適正な鎮痛、鎮静、せん妄の治療を行うためには評価が必要です。症状の評価と治療の評価は随時行われなければなりません。今回はJ-PAD、PADISといったガイドラインをベースに、鎮静レベル、鎮痛レベル、せん妄の評価についてお話しします。

鎮静レベルの評価と対応

 人工呼吸管理中の成人患者さんにおける鎮静の深度と質の評価にはRASS*2(表1)やSAS*3が有効とされ、主にRASSを使用しています。

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 鎮静管理では、浅い鎮静深度を維持すると、患者さんのアウトカムが良好になります。PADISガイドラインのデータによると、抜管までの時間(図1、2)や気管切開率(図3)が改善していることがわかります1)(ただし、観察研究が含まれ異質性が高いこと、データ量が少ないことには注意を要する)。浅い鎮静で心配される、せん妄、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、抑うつの発症との関連性はなく、90日死亡率や計画外抜管の発生にも影響を及ぼさないことが示されています2)

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Devlin JW, Skrobik Y, Gelinas C, et al. Clinical Practice Guidelines for the Prevention and Management of Pain, Agitation/Sedation, Delirium,Immobility, and Sleep Disruption in Adult Patients in the ICU. Crit Care Med. 2018;46(9):e837-8.より引用(図1、図2、図3とも)

 人工呼吸管理中の患者さんに鎮静薬を投与する場合、ベンゾジアゼピン系鎮静薬(ミダゾラム)よりも非ベンゾジアゼピン系鎮静薬(プロポフォール、デクスメデトミジン)を優先します。ベンゾジアゼピン系鎮静薬の投与で人工呼吸期間やICU入室時間が延長することがわかっているためで、プロポフォールとミダゾラムの比較試験のメタ解析では、プロポフォールのほうが抜管までの時間や浅い鎮静に移行するまでの時間が短いという結果が得られています3)。ただし、ミダゾラムは、強い不穏や不安、痙攣のコントロールなどには効果が期待できます。
 
 深い鎮静を施行しているときは、鎮静の中断を毎日行うことが大切です。RCT(非盲検無作為比較試験)によって生存率には影響はないものの、鎮静の中断は、浅い鎮静深度を維持した場合と同じように、人工呼吸期間やICU入室期間が短縮することが示唆されています4)。また、中断している間には、鎮静の必要性の再評価だけでなく、鎮痛の効果やせん妄の評価が行えます。当院のICUでも鎮静の中断を実施しており、これらを評価するとともに、患者さんに現在の状況を認知・記憶してもらうことでせん妄の予防にも結びつけています。

鎮痛レベルの評価と対応

 「pain」は、日本では「痛み、疼痛」と訳されている英語ですが、そこには組織損傷等に伴って発生する「不快な感覚」や「情動体験における苦痛」という意味も含まれています5)
 
 手術や外傷による創部痛、ドレーン留置による苦痛、気管挿管による苦痛などを感じている人工呼吸中の患者さんには鎮痛が不可欠です。評価スケールとしては、患者さんが痛みを自己申告できる場合はNRS*4やVAS*5を、自己申告できない場合はBPS*6やCPOT*7を用います。

 鎮痛では、オピオイドが第一選択薬で、これをいかにうまく使うかが重要となります。痛みは1日のなかでも変化するため、鎮痛スケールで評価を繰り返しながらコントロールする必要があります。鎮痛が不足すると「鎮静薬の量が増えて副作用が増す」「疼痛がせん妄の原因になる」「苦痛が人工呼吸離脱に悪影響を及ぼす」などが生じます。深い鎮静が施されている患者さんの場合は、鎮静の中断や浅い鎮静への移行など、鎮痛を評価できるような管理が可能かどうか検討することも大切です。

せん妄の評価と対応

 せん妄は、急性発症の認知機能障害で、注意力、思考力、見当識、記憶力が低下し、意識混濁の程度が変動します。興奮状態となり、幻覚や妄想が現れることもあります。ICU入室日数や入院期間など転帰によくない影響を及ぼすことでも知られています6)。中枢神経(脳)の臓器不全の一症状とされており、「臓器不全の予防と治療」という集中治療の根本から考えると、ICUでせん妄に対する治療を行うことは必然といえます。原疾患の治療を行いながらせん妄に対応していく必要があります(表2)。

 しかし、せん妄の正確な診断は容易ではありません。せん妄には4つの徴候(表3)があり、医師が1日に数回回診するだけでは見極めは難しくなります。適切な診断のためには、日常ケアを通して終日患者さんをみている看護師に評価してもらうとよいでしょう。

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 ICUでの評価法には、CAM-ICU*8とICDSC*9があり、CAM-ICUが使いやすいと思われます。①急性発症または変動性の変化、②注意力欠如、③無秩序な思考、④意識レベルの変化からみていくもので、②では視覚や聴覚によるスクリーニングテストを、③ではいくつかの質問を行うことで判断します。①と②に加え、③または④が該当した場合は「せん妄」と診断されます。
 
 せん妄の発症には、鎮静薬が影響することもわかっています。ミダゾラムと比較して、デクスメデトミジンはせん妄の発症率が低いことから7)、当院では患者さんの状態に合わせて、デクスメデトミジンを適宜使用しています。人工呼吸中の患者さんに対しては、鎮痛薬(フェンタニル)と併用し、抜管後の患者さんには、抜管当日の睡眠導入や、その後の夜間せん妄を予防することを目的として使用しています。
 
 集中治療の際には、鎮痛により痛みや苦痛を取り除き、必要時に最低限の鎮静を行いながら、せん妄を予防・治療することが求められます。医師は、患者さんにとって何がもっとも有益であるかを適切に選択することが必要だと考えます。


略語

*1 Clinical practice guidelines for the management of pain, agitation, and delirium in adult patients in the intensive care unit
*2 Richmond agitation-sedation scale
*3 Sedation-agitation scale
*4 numerical rating scale
*5 visual analogue scale
*6 behavioral pain scale
*7 critical-care pain observation tool
*8 confusion assessment method for the intensive care unit
*9 intensive care delirium screening checklist

引用文献

1)Devlin JW, Skrobik Y, Gelinas C, et al. Clinical Practice Guidelines for the Prevention and Management of Pain, Agitation/Sedation, Delirium, Immobility, and Sleep Disruption in Adult Patients in the ICU. Crit Care Med2018;46(9):e837-8.
2)Devlin JW, Skrobik Y, Gelinas C, et al. Clinical Practice Guidelines for the Prevention and Management of Pain, Agitation/Sedation, Delirium, Immobility, and Sleep Disruption in Adult Patients in the ICU. Crit Care Med2018;46(9):e838.
3)Ho KM, Ng JY. The use of propofol for medium and long-term sedation in critically ill adult patients:a metaanalysis. Intensive Care Med2008;34:1969-79.
4)日本集中治療医学会 J-PADガイドライン作成委員会 編:日本版・集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不穏・せん妄管理のための臨床ガイドライン,総合医学社 2015,p.553.
5)日本集中治療医学会 J-PADガイドライン作成委員会 編:日本版・集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不穏・せん妄管理のための臨床ガイドライン,総合医学社 2015,p.542.
6)日本集中治療医学会 J-PADガイドライン作成委員会 編:日本版・集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不穏・せん妄管理のための臨床ガイドライン,総合医学社 2015,p.556.
7)Riker RR et al:Dexmedetomidine vs midazolam for sedation of critically ill patients:a randomized trial.JAMA 2009;301(5):489-99.

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