第3回 病態別経腸栄養剤
- 公開日: 2015/9/25
まとめ
1.標準的な経腸栄養剤に対して、特定の疾患や病態に対して用いられるのが、病態別経腸栄養剤である。本邦においては肝不全、腎不全、糖尿病、呼吸不全、immunonutrition、オンコロジー用などが市販されている。
2.各病態別経腸栄養剤は、各疾患のもつ代謝的特徴を考慮して、栄養素の組成やバランスを変化させ、その疾患を改善する目的で使用される栄養剤である。
▼経腸栄養について まとめて読むならコチラ
経腸栄養(経管栄養)とは|種類・手順・看護のポイント
はじめに
標準的な経腸栄養剤に対して、特定の疾患や病態に対して用いられるのが、病態別経腸栄養剤です。本邦では、肝不全、腎不全、糖尿病、呼吸不全、immunonutrition、オンコロジー(癌患者)用などが市販されています。食事摂取などに加えて、サプルメント的に使用される病態別栄養剤もあります。
それらは微量元素やグルタミン、アルギニンなどの栄養素が強化され、褥瘡用栄養剤、微量元素強化栄養剤などがあります。欧米では以前より病態別経腸栄養剤の臨床応用が盛んで、それ以外にも、エイズ用、小児用、外傷用など数多くの病態別栄養剤が販売されています。
肝不全用栄養剤
肝不全用栄養剤には医薬品のアミノレバンENとへパンEDの2種類と、食品のへパスがあります(表1)。これらの製剤の適応は、「肝性脳症をともなう慢性肝不全患者の栄養状態の改善」です1)。
肝性脳症とは肝不全時にみられる意識障害で、軽症は睡眠・覚醒リズムの逆転、多幸感、だらしなく気に留めない態度などの症状がみられますが、重傷となると傾眠傾向、昏睡状態にいたります。この製剤の特徴は、分岐鎖アミノ酸(branched chain amino acid; BCAA)の含有量が多く、BCAAと芳香族アミノ酸(aromatic amino acid; AAA)のモル比であるFisher比が高いことです。
一般的に肝硬変・肝不全患者においては血中のBCAAが低下し、AAAが増加しており、とくに肝不全患者ではFisher比の低下が著しいことが分かっています。このアミノ酸のアンバランスを改善する目的でBCAAを投与すると肝性脳症の改善が認められることから、肝不全用栄養剤は開発されました。食品のへパスにはさらにラフィノースおよびラクチュロースのオリゴ糖を含有しており、肝不全時の血中アンモニア濃度を下げることによる肝性脳症の改善も期待できます。
いずれの製剤も食事とともに1日2、3回投与します。通常の1日投与量は熱量が600kcal程度、蛋白量は20~40g程度なので、食事と一緒に投与することが原則となっています。