アストラゼネカの「リムパーザ」が、BRCA 遺伝子変異陽性の治癒切除不能な膵がんにおける維持療法として希少疾病用医薬品の指定を取得!
- 公開日: 2020/4/8
2020年3月19日、アストラゼネカ株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役社長:ステファン・ヴォックスストラム)は、リムパーザ(一般名:オラパリブ)がBRCA 遺伝子変異陽性の治癒切除不能な膵がんにおける維持療法として、希少疾病用医薬品指定を取得したことを発表しました。
希少疾病用医薬品とは、対象患者数が日本国内において5万人未満であること、医療上、特にその必要性が高いものなどの条件に合致するものとして、厚生労働大臣によって指定された医薬品です。
BRCA遺伝子変異が陽性の場合、損傷したDNAの修復を担うタンパクを生成する遺伝子(BRCA1およびBRCA2)に変異があるため、DNA損傷が適切に修復されず、細胞ががん化につながる遺伝子変異を起こす可能性が高くなります。
乳がんや卵巣がんの発症に関係が深いBRCA遺伝子ですが、膵がんの発症にも関係しています。BRCA遺伝子変異陽性によって発症する膵がんをBRCA遺伝子変異陽性転移性膵がんといいます。
膵がんは、一般的ながんの中でも生存率が最も低く、日本のがんによる死因の第4位です。2018年には国内で37,000人が死亡しており、世界で約46万人が新たに膵がんと診断されました。初期段階では症状が乏しく、多くのケースで根治不能な状態になってから診断されています。平均生存期間は1年未満と短く、過去数十年にわたって診断や治療にほとんど進歩がありません。
今回、希少疾病用医薬品指定を取得したリムパーザは、海外第Ⅲ相臨床試験(POLO試験)において、生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異陽性転移性膵がん患者さんの病勢進行または死亡に至るまでの期間をほぼ 2 倍に延長しました。
具体的には、プラセボ群の無増悪生存期間(PFS:がんの拡大や骨・脳・肺への新たな転移等により増悪するまでの期間)の中央値が 3.8 ヵ月であったのに対し、リムパーザ投与群では 7.4 ヵ月でした。また、病勢進行または死亡のリスクを47%減少させました。
リムパーザは、「白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣癌における維持療法」や「BRCA遺伝子変異陽性の卵巣癌における初回化学療法後の維持療法」での承認はありますが、BRCA遺伝子変異陽性転移性膵がんに対するリムパーザの療法としては、本邦未承認です。1日も早い承認が求められます。
参考URL
1)アストラゼネカ 会社概要
https://www.astrazeneca.co.jp/company.html
2)厚生労働省 希少疾病用医薬品・希少疾病用医療機器・希少疾病用再生医療等製品の指定制度の概要
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000068484.html
4)厚生労働省 医薬品 具体例
(乳癌に対する分子標的薬B)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000033417.pdf.p11
5)アストラゼネカ リムパーザ、BRCA遺伝子変異陽性卵巣がんの初回治療後の維持療法として適応を拡大
https://www.astrazeneca.co.jp/media/press-releases1/2019/2019061903.html