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【連載】今さら聞けない! 基礎看護技術をおさらい

寝衣交換の目的・手順・観察項目~根拠がわかる看護技術

  • 公開日: 2020/5/3

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看護師が寝衣交換を行う意義

 患者さんに合わせて苦痛を最小限にして着替えを手伝えるところが、看護師が寝衣交換をする意義といえます。患者さんが1日中身に着けている寝衣は、汗、食物、排泄物、身体からの分泌物によって汚染されることが多くあります。しかし、汚染した寝衣を「着替えたい」と訴えることができない患者さんもいます。それに気づき、いち早く清潔な状態で過ごせるよう援助します。

 また、治療やリハビリテーションを目的としている療養生活では、身体にドレーンや点滴などを挿入していたり、麻痺などの障害によって、簡単に寝衣を交換できない状況にある患者さんも多くいます。例えば、体位変換でバイタルサインが変動する、痛みが生じる患者さんの状況を看て、苦痛を最小限にして着替えを行うことが求められます。

具体的な状況の意義
・看護師が寝衣交換を行う意義として、患者さんにとって普段着となる寝衣を着替えるタイミングを判断できることが挙げられます。
・患者さんのADL自立度に合わせて着替えを手伝うことができます。
・患者さんの1日の過ごし方を知っている看護師が、目的や場の状況に応じて寝衣を選択することができます。例えば、リハビリテーションをするために寝衣からジャージ類に着替える、治療を受けるために寝衣から術衣に着替えるなどです。
・手術直後、ICUに入室しているような重症患者さんは、体位変換でバイタルサインが不安定になったり、痛みが生じることがあります。患者さんの状況を看て、苦痛を最小限にして着替えを行うことができます。
・関節拘縮や麻痺がある患者さんに対して、脱臼や骨折をしないよう注意しながら着替えを行うことができます。

寝衣交換の目的

 汗、排泄物などで汚れてしまったパジャマや和式の寝衣を新しい物に取り換え、清潔にすることです。清潔な寝衣を身に着けることで、皮膚を清潔に保つことができます。

寝衣交換の手順(ベッド上)

1.患者さんの準備

①新しい寝衣を準備します。

②失禁、嘔吐、出血、浸出液などに汚染された寝衣を交換する場合は、スタンダードプリコーション(標準予防策)の概念に基づいて、手袋を準備します。

③寝衣交換のために動くことを想定し、バイタルサインが安定しているか確認します。

④清拭後に寝衣交換することを考慮して、尿意を確認します。尿意があれば、先にトイレに連れていきます。

⑤身体を露出することを考慮して、室内を24±2℃程度に調整します。

2.寝衣交換の実施

◆和式寝衣の場合
①下半身をバスタオルなどで覆います。

②和式寝衣の紐をほどきます。

③襟元を緩めながら、袖を脱がしていきます。
★POINT:寝衣の汚れが失禁、嘔吐、出血、浸出液などによるもので、スタンダードプリコーションに基づく取り扱いが必要であれば、この段階で手袋を装着します。

④腕や胸部など、露出している部分をバスタオルなどで覆います。

⑤肩関節→肘関節→手関節の順に、それぞれの関節が脱臼しないよう丁寧に脱がしていきます。
★POINT1:看護師から見て近位から脱がせると、無理のない姿勢で脱がせることができるだけでなく、患者さんの肘関節を保護しやすくなり、丁寧に袖を抜くことができます。
★POINT2:看護師から見て遠位から脱がせると、移動の必要がなくなります。また、患者さんが側臥位になったとき、看護師と患者さんが向き合う位置関係となり、観察しやすくなります。

 脱がせるのは近位・遠位のどちらからでも問題ありません。それぞれのメリットを理解しておくことが大切です。

⑥脱がせたほうの前身ごろに付着している落屑が飛散しないように、内側を丸め込むようにして、患者さんの身体の下側に押し込みます。

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⑦脱がせた側から新しい寝衣の袖を通します。高齢者など筋力が落ちている患者さんの場合、脱臼しないよう手関節、肘関節、肩関節を下から支え、丁寧に袖を通します。

⑧新しい寝衣の襟元、前身ごろを広げます。

⑨患者さんの安全を考え、看護師側のベッド柵を上げてから、反対側のベッドサイドに移動します。
★POINT:看護師から見て遠位側の袖から脱がした場合は、移動する必要はありません。

⑩患者さんが安定した側臥位になるよう、支持基底面を広く取ります。看護師と患者さんは向かい合う位置関係にあります。

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★POINT1:側臥位になると呼吸がしづらく、バイタルサインに変動が起きやすいため、患者さんの表情、顔色に注意します。
★POINT2:心電図を装着しているような重症な患者さんの場合、心電図の表示を見ながら実施するとよいでしょう。

⑪古い寝衣を側臥位になっている患者さんの身体の下に、さらに押し込みます。

⑫新しい寝衣の背中心と患者さんの頸部、脊柱を合わせ、古い寝衣と重ならないようにしながら新しい寝衣を着せ、身体の下に押し込みます。

⑬患者さんをゆっくり仰臥位にします。

⑭内側の落屑が飛散しないように古い寝衣を脱がせます。古い寝衣は小さく丸め、ランドリー袋に収納します。手袋をしている場合は、ここで外します。

⑮患者さんの身体を浮かせながら、少しずつ新しい寝衣を引き出します。

⑯新しい寝衣の袖を通します。患者さんの体格、各関節の動きによって、肘関節を伸展させるか、屈曲させるかを検討します。
★POINT:肘関節を伸展させる場合は、袖を患者さんの手関節付近まで下げます。

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★POINT1:肘関節を屈曲させる場合は、袖口を緩みを大きくもたせます。

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⑰前身ごろが右前になるように合わせ、紐を結びます。
★POINT2:右前とは、左前身ごろが上側になることです。左前と紐の縦結びはご遺体への着せ方になるため注意します。

⑱上半身→腰部→足もとの順に、寝衣を斜め下に引っ張り、皺を伸ばしていきます。腰上げができる場合は、腰を上げてもらったほうが皺は伸びます。

◆かぶり式のパジャマの場合
①下半身をバスタオルなどで覆います。

②パジャマの上着の裾を胸部付近までたくし上げ、袖が抜けやすくなるようにします。
★POINT:パジャマを着ている患者さんはADLが自立しつつあるため、腰を上げてもらうと脱がせやすくなります。

③胸部や腹部など、露出している部分をバスタオルなどで覆います。

④患者さんの健側の腕の肘関節を屈曲してもらいます。肘関節をもち、袖を抜きます。

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⑤健側腕を抜いた後、両手で襟ぐりをたぐるようにして広げ、患者さんの顔を通過させます。
★POINT:片手で後頭部を支えながら通すとよいでしょう。

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⑥反対側の袖を脱がせます。

⑦新しいパジャマの襟ぐりを広くし、患者さんの頭部を通過させます。

⑧看護師は、袖口を広くして手関節を保護しながら袖を通します。

⑨患者さんの手関節を保護しながら反対側の袖を通します。

⑩患者さんに腰を上げてもらい、パジャマの裾を引っ張り、皺を伸ばします。腰を上げてもらったままズボンを脱がせます。
★POINT:腰を上げるのが難しければ、膝を立てた状態で下半身をひねってもらい、上がったほうのズボンを下げます。

⑪腰部や大腿部など、露出している部分をバスタオルなどで覆います。

⑫下方にズボンを下ろし、片方ずつズボンを脱がせます。

⑬新しいパジャマのズボンの裾をたぐり寄せ、片方ずつ足関節までズボンを通します。

⑭ズボンを両膝関節の上まで上げます。

⑮患者さんに腰を上げてもらい、ズボンをはかせます。
★POINT:腰を上げるのが難しければ、膝を立てた状態で下半身をひねってもらい、片方ずつズボンを上げます
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⑯臀部の皺を伸ばします。

患者さんの状態・状況別の寝衣交換

点滴をしている患者さんの場合

①下半身をバスタオルなどで覆います。

②穿刺部や接続部が抜去されていないか、固定されているかを確認します。

③基本的に点滴していないほうの腕から脱がせます。看護師は点滴滴下側のベッドサイドに移動し、点滴ルートが抜去されないように患者さんを側臥位にします。
★POINT:点滴滴下側の腕が一時的に患者さんの身体の下になりますが、点滴ルートを確認できる位置で、ルートを引っ張ることなく操作できます。

④点滴ルートを確認できる範囲で、健側の腕や胸部など露出している部分をバスタオルなどで覆います。

⑤患者さんを仰臥位に戻し、古い寝衣の袖口を広げ、点滴ボトルを袖に通して抜きます。
★POINT:空気の混入や血液の逆流を防止するため、この段階で点滴の滴下を一時的に停止します。

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⑥点滴滴下を確認します。

⑦点滴滴下中の腕から新しい寝衣を着せます。
★POINT:点滴ボトル→腕の順番で袖に通します。

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麻痺などの障害がある患者さんの場合

①下半身をバスタオルなどで覆います。

②基本的には健側から脱がせます。看護師は麻痺側のベッドサイドに移動し、患者さんを側臥位にします。
★POINT:側臥位になると呼吸がしづらくなり、バイタルサインに変動が起きやすいため、患者さんの表情や顔色に注意します。

③健側の腕や胸部など、露出している部分をバスタオルなどで覆います。

④落屑が飛散しないよう、古い寝衣を患者さんの身体の下に丸め込みます。

⑤患者さんを仰臥位に戻し、麻痺側の袖を抜きます。
★POINT:麻痺側の肩関節、肘関節が脱臼しないよう、しっかりと支えながら袖を抜きます。

⑥麻痺側の身ごろを着せます。健側を下にして側臥位にし、新しい寝衣の背中心と患者さんの頸部、脊柱を合わせます。

⑦古い寝衣と重ならないようにしながら新しい寝衣を着せ、身体の下に押し込みます。

⑧患者さんを仰臥位に戻し、新しい寝衣を引き出します。

⑨健側の身ごろを着せます。

⑩新しい寝衣に袖を通します。患者さんの体格、各関節の動きによって、患者の肘関節を伸展させるか、屈曲させるかを検討します。
★POINT:伸展させる場合は袖を手関節付近まで下げ、屈曲させる場合は袖口の緩みを大きくもたせます。

⑪前身ごろが右前になるように襟を合わせ、紐を結びます。

寝衣交換時の観察項目

観察項目
準備 ●関節の可動域、姿勢の保持、ADLの自立度などの総合的にみて、どのような姿勢でどのように寝衣交換をするか検討します。
●輸液中の患者さんでは、挿入部位と滴下状態を確認しておきます。
実施中 ●臥床したまま寝衣交換をする場合、体位変換によって患者さんの状態(バイタルサイン、呼吸状態、顔色など)が変化していないか確認します。
●患者さんに寒くないか確認します。
実施後 ●患者さんがどの程度、自分の力で寝衣交換できたか検討し、今後どのように着替えをするとよいか考えます。
●点滴挿入部位が抜去されていないか、滴下数が変わっていないか確認します。
●患者さんの状態が変化していないか確認します。

寝衣交換時の注意点

注意点
準備 ●寝衣を脱いでも寒くないように、室温を24±2℃にしておきます。
●患者さんの状態や状況に応じた寝衣を準備します。
【寝衣の例】
手術直後~翌日:袖口と身ごろの開きが広く、着脱しやすい和寝巻タイプ
リハビリテーション中:上下セパレートのトレーナータイプ
実施中 ●ADLを自立させるために、できるだけ自分で着替えられるよう援助します。
●プライバシー保護のため、カーテンを閉め、バスタオルを活用して、身体の露出をできるだけ少なくします。
●体位変換によって患者さんの状態(バイタルサイン、呼吸状態、顔色など)が変化した場合、すぐに仰臥位に戻します。
実施後 ●点滴挿入部位が抜去されていないか確認し、滴下数を調整します。
●身ごろの合わせ方として、左前(左前身ごろ下にして右前身ごろを上にする)は死亡時の着方となるため注意します。

参考文献

●茂野香おる:食事援助の基礎知識.基礎看護技術Ⅱ 第17版.医学書院,2017.
●三上れつ,他編:清潔・衣生活援助技術.演習・実習に役立つ基礎看護技術 第4版.ヌーベル・ヒロカワ,2015.

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