第11回 経腸栄養時の管理 (栄養剤の調整、器具の洗浄、フラッシュ等)
- 公開日: 2015/10/3
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経腸栄養(経管栄養)とは|種類・手順・看護のポイント
まとめ
1.粉末状栄養剤の調整は、細菌汚染を起こさないよう十分注意が必要である。栄養剤も8-12時間以内には投与を完了する。
2.投与器具の洗浄は、中性洗剤で洗浄の後、次亜塩素酸ナトリウム(ミルトン)を含んだ液にボトルを漬け、その後自然乾燥させる方法が推奨される。
3.栄養剤の持続投与のケースでは、半消化態経腸栄養剤や半消化態流動食の使用時には、1日4-6回、成分栄養剤や消化態栄養剤使用時には1日2回のフラッシュが必要で、フラッシュには水道水20~30mlを用いる。
1、経腸栄養剤の調整
経腸栄養は静脈栄養に比較して、厳密な無菌操作は必要ないとされていますが、栄養剤の細菌汚染は下痢などの合併症を引き起こし、時には敗血症を引き起こすこともあります1)。栄養剤の調整・投与には細菌汚染に対しての予防を十分配慮する必要があります。
市販の多くの栄養剤は、液体で、缶やパックに入っており、無菌の状態です。これを、洗浄されたイルリガートルやボトルに入れて、栄養剤を投与しますので、調整の必要はありません。
消化態栄養剤のツインラインは液体ですが、A液とB液に分かれていて、使用直前に混合・調整する必要があります。最近は、パックをそのまま投与ラインにつなげて、投与できるRTH(ready to hang)製剤も市販されており、調整の手間がなく、細菌汚染も最小限に抑えられます。
粉末状の製剤の数は少ないですが、成分栄養剤のエレンタール、消化態栄養剤のエンテミール、小児用のエレンタールP、肝不全用栄養剤のアミノレバンEN、ヘパンEDなどがあり、調整が必要です。
調整時には、手洗いを行い、きれいに洗浄・滅菌されたシェーキングボトルなどの容器を用います2)。
調整する場所は独立した清潔なスペースで行い、人の出入りが多いところやほこりがたつところなどは避ける必要があります。調整水は水道水を沸騰させた湯ざましか滅菌水が望ましいですが、水道水でも細菌が検出されなければ問題はありません。調整水の温度は60度を超えると熱に弱いビタミンAやCなどが影響を受けるため、50度以下にすべきです。
栄養剤の濃度は原則的には1kcal/mlに調整しますが、特殊な病態などではそのかぎりではありません。粉末の栄養剤は滅菌されていないので、調整後は室温で12時間経過すると、104個/ml以上になることもあり、8時間~12時間以内に投与を終了すべきであるとされています。
投与時の栄養剤の温度は人肌・室温とし、冷たい場合は下痢を起こす原因になります。寒天法などの半固形化栄養剤の調整法に関しては、その項目を参照してください。