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【連載】看護師のための輸液講座

第24回 栄養管理の重要性

  • 公開日: 2011/8/10
  • 更新日: 2020/10/22

『看護師のための輸液管理』というテーマで24回、連載させていただきました。その最終回のタイトルは『栄養管理の重要性』としました。輸液管理は、ある意味、栄養管理の一環として行う、ということでもありますから。


【目次】


輸液管理とリスクマネジメント

ナースにとって、日常業務の中で輸液管理の占める割合が非常に高いことは、ほとんどの方が理解しておられるはずです。そして、その基本は、もちろん安全に輸液を管理する、ということです。

業務としての輸液管理の内容は、輸液ルートの作成、朝夕の抗生剤の点滴、電解質輸液の点滴、持続点滴中の患者の輸液交換、定期的な輸液ラインの交換やドレッシング交換、毎日のカテーテル挿入部のチェックと問題に対する対処、時間通りに点滴が落ちているかのチェック、終了した点滴をはずしてカテーテルを抜去する/ヘパリンロックする…とにかく、業務がいっぱいです。しかも、大勢の患者さんを管理しなければならないのですから。とすると、患者さんを誤認しないことはもちろん基本的で重要な問題ですし、輸液自体も誤認してはいけません。投与速度もまちがえてはいけないし…。静脈炎までは至っていなくても点滴が痛いと訴える患者さんがいたら対処しなければなりません。

どう対処しますか?主治医に連絡しても『今忙しいから、しばらくそのまま点滴しておいてくれ』と言う…患者さんは痛いからなんとかして、と言うし。滴下が不良になっている患者さんがいます。予定時刻に点滴が終わらない…そのままの速度で投与した方が問題が起こらないかも…でも予定時刻には終了させたいから早める?いろいろ悩む必要があります。全身状態のチェックも必要です。

特にTPN症例では、高血糖になっていない?カテーテル関連血流感染症CRBSIを発症していない?発熱は?CRBSIが発症した患者さんの場合には、真菌性眼内炎を併発して視力低下などが起きていないか、などのチェックも必要です。長期TPN患者さんの場合には入浴もさせなくてはならない…CVCをロックしなくては…中断する1時間前には投与速度を半分にしないと低血糖になるリスクがあるし…。とにかく、たくさん、やるべきこと、理解しておくべきこと、があります。(表1)

業務としての輸液管理の内容一部

これらのすべてを理解して対処することが、本当のリスクマネジメントであることは間違いありません。でも理想論にすぎないのでしょうか?現在のリスクマネジメントは、背景を理解していなくても、機械的に同じ管理をやることで問題を起こさないようにする、ということになりつつあります。

でも、輸液管理についての基本的知識が必要であることは誰しも認めることでしょう。問題は、こういうことを誰が教えてくれるのか、ということでしょうね。看護教育としては、輸液・栄養管理に重点を置いている、という雰囲気はないように思いますし。ま、医学教育における輸液・栄養管理も同じような状況なので、日本全体の傾向でしょうか?そうかもしれませんが…。

栄養管理レベル

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NSTが普及し…という話題は既に取り上げました。私が常々強調しているのは、NSTが設立されたから、NSTが活動しているから、栄養管理レベルが高いかというと、そうではない、ということです。とりあえず、問題を起こさないような栄養管理が行われていればいい、早く退院できるようにすればいい、退院させてしまえばなんとかなる、という考えの医師が多い、というのが実は問題です。

医師も栄養管理については、安全で有効な知識・技術レベルに達していない、というのが現状です。ナースも栄養管理についてはきちんと教育されていないのに、輸液や薬剤の混注作業を行い、食事の摂取状況を調べて記録し、食事に関するオーダーを行い、もちろん点滴だけでなく経腸栄養剤の管理もしなくてはならない…どうすればいいのでしょうか。

あまりに多くの知識と技術が必要で、身動きできなくなるような状況になってしまっています。とすると、どうなるか?意識しなくても手抜きになってしまうことがあります。いい加減になってしまうことがあります。それが、重大な事故につながる可能性がある、ということです。

医師も、看護師も、薬剤師も栄養士も、栄養管理に関しては、知識レベルが非常に低いようです。私が行った調査の結果からそう思われるのです(図1-3)。実は、特に静脈栄養・経腸栄養に関しては知識が不足しています。これで安全に栄養管理ができる?と思わざるをえないレベルになってしまっています。これは、実は、大変なことなのです。私は大丈夫、きちんと勉強しているから…そう言ってくれる方が一人でも多ければ多いほどいいことには間違いありませんが。

説明グラフ

説明グラフ②

説明グラフ③

説明グラフ④

説明グラフ⑤

説明グラフ⑥

説明グラフ⑦

大事な患者さんに対して、どんな栄養管理を行いますか?

毎日の忙しい業務。みんなに同じように栄養管理・輸液管理を行って、ハイレベルでなくてもいいから安全な管理をしようとしているとしましょう。そこへ、あなたの母親が入院してきたとしましょう。さて、どういう管理をしようと考えますか?

まず、体重は測定しますよね。やせてきていないか?いつからやせてきたのか?その体重の変化はもちろん、本来はどのくらいの体重であったほうがいいのか、計算するはずです。それはBMIでしょうね。次は食事でしょうか。病院の食事は口に合うかな?お母さんの味の好みは知っているはずだし、嫌いなものは何かも知っているはずだから、メニューも本当は考えてあげたいでしょうけど。食べられない、食べていない、そしたらどうしようかと考えます。

最初から経腸栄養を考えますか?ま、補食としてエンシュアなどの経腸栄養剤が飲めるかな、と考えるでしょうね。いくら経腸栄養が優先されるべきだと思っていても、すぐに経鼻胃チューブを入れたりはしないでしょう。食事摂取量が少ないと思ったら、まずは、脱水かも、と考えて点滴しようか、と考えますよね。アルブミン値などをチェックして、低ければPPNをやった方がいいかも、と考えるはずです。ビーフリードと脂肪乳剤のメニューがいいと講演会で聞いたな…。

状況によってはTPNも考えなくてはならないかもしれません。TPNをやらなくてはならない…CVCを挿入しなければならない…一番うまいドクターに頼むことになるでしょうね。それが本音でしょう(上腕PICC法を採用している施設であれば、きっと、鎖骨下穿刺や内頚静脈穿刺よりも上腕PICCを選択するでしょうね、大事なお母さんですから)。

さて、TPNを実施することになりました。一般の患者さんに行っているように、1袋、2袋という処方をしますか?とりあえずビタミンは入っているから…。でも、お母さんの体重が40kg台だったら、2袋も投与しますか?輸液量もカロリー量もオーバーになる…でも、1袋だったらビタミンは足りないし…微量元素も入っている製剤もあるけど、半分しか入らないことになる…。短期なら微量元素は不要と言っている製剤もあるけど…いつまでこの状態が続くかわからない、その時点で微量元素製剤を投与するのもおかしいでしょう?微量元素製剤って、治療するための量ではなくて、毎日投与することで健常域に保たれるということで決定された量なんだから…。

患者さんに対しての栄養管理

TPN輸液は病棟でナースが混注している…でも、自分を振り返っても無菌的混注方法については、そういえばきちんと習ってない、見よう見まねでやっている…自分の母親に投与する輸液…無菌的?自信ないなあ。それに、うちの輸液ラインにはフィルターが組み込まれていない…CDCガイドラインでは不要と言っているから?でも、確かに、本当はどうすればいいのかを考えると、輸液の無菌性も担保されてない場合はフィルターを使うべきだと思うな。

それからうちの輸液ラインには三方活栓も組み込まれてるし…。ニードルレスコネクターが組み込まれているからフィルターはいらないんだと言っているドクターがいたけど、それはおかしいとDr.INOUEは言っていたなあ。それに、ニードルレスシステムにもいろんなものがあって、管理をきっちりやらないと、使う意味がないどころか、かえって感染率を高めると言っていたなあ。そういう問題も解決しなければならないな。

その辺りに関してうちのドクターは関心が低い。熱が出ても、内科のドクターは抗生剤で様子を見ることが多いし、外科のドクターはすぐにカテーテルを抜去して入れ換えたらいい、程度の考えしか持ってないもんなあ。なぜ、感染起こしたのか、考えてないように思われる。ドレッシング管理はナースがやっているけど、機械的にやっているだけだ。

あまり細かい点まで注意深くやる余裕なんてないな…。それに、いつまでもTPNを続ける傾向もある。早く終了すればいいのにと思う患者さんが多いと言えば多いかな。

食事をなんとかしないといけない、どうしよう…主治医は、こっちから意見しないと、動いてくれないし。栄養士さんに相談するべきだと思うけど…。うちの栄養士さんは、食事の内容より、最近は栄養剤を使おうとする傾向が強いな…。病院経営上の問題だけど、食事が出ている患者さんの栄養剤は自分で売店で買わされているな。

それに、食事だって細かい点について一人ひとりのことはなかなか考えてくれない。病院食が口に合わないんだったら、申し訳ないけど家から好きなものを持って来て、と言われている患者さんが多いな。

これでどうやって栄養管理できるんだろう、なんて考えることはありませんか?他人である患者さんに対してはこれでいいかもしれませんが、大事な患者さん、例えばあなたのお母さんだったら…本当はこう考えるべきだと私は思っています。そうして、こういう考えを主治医と共有することが一番大事なのでしょう。

私は、自分自身が患者になって手術を受けるという体験をしました。いろいろ考えることがありました。自分がその立場になってみないとわからないことがたくさんあります。疼痛管理…われわれが考えているよりも患者さんは痛みに対して敏感かもしれません、ある程度はがまんしなくてはならないと思いすぎているかもしれません、遠慮しているかもしれません。

食事、術後だって早く開始して、がんばって食べなさいと言う…でも、食欲がないのです。吐き気はないけど…まだ十分に回復していなくて食べたくないのです…でも、がんばって食べないと元気になりませんよ、と言われる…かなり苦痛なのです。そりゃあ、がんばって歩きますよ、リハビリとして。でも、本当はもっと痛みをとって欲しいと思っているかもしれません。点滴は早く終わらせるべきだ…でも、本当は、点滴をした方が水分バランスの関係で元気になるのかもしれませんよ。

すべてパスとして決まっている内容通りに管理しているんだから、患者というのはそれに従うべきだ…と単純に考えていませんか?患者さんは一人ひとり違うのです。

患者さんの管理は、主治医だけがやるもの?それは違いますよね。主治医が主役であることは間違いないと思いますが、ナースも一緒になって患者さんのための医療を行うべきですよね。そのためには、ナースもきちんとした知識をもっておくべきだと思っています。そういう意味です。

栄養管理の重要性

栄養状態が悪い患者さんに手術をしたら、術後合併症が増えます。縫合不全などが増えるだけでなく、呼吸状態にも影響するし、その結果で循環動態にも影響します。腎機能にも影響するでしょうね。傷の治りが悪くなり、筋力が衰えているから離床も進まない。肺炎になりやすくなる…いろいろ起こります。

化学療法をする場合でも、免疫能が低下していますから、いろいろな感染症に罹患しやすくなります。治療効果も上がらないし、途中で中断する必要が出てくることになります。もちろん患者さんの気力もなくなりますよね。そうなんです。栄養状態が悪いと、いろんな治療が思うように進まないし、患者さんに大きな負担がかかることになるし、中断する必要も出てくるし。

基本的なこととして、患者さんの体重に注目していますか?機械的に、火曜日に体重測定だ、全員の測定をしなくては…そればかりに気を取られていませんか?先週の体重はいくらだったのだろう、と考えたことがありますか?見かけとしてやせてきているな、と思ったら、体重の変化も気にする、それが栄養管理の重要性に気づく、第一歩だと思います。

その時、体重に注目するだけでなく、食事摂取量もチェックしなくてはと思いますよね。もちろん、熱は出ていないのか、なんて考えますよね。そこが大事だと言いたいのです。まずは、気になる、それが医療従事者として、患者さんのことを考える、原点なのではないでしょうか。血液検査や、いろんな画像検査ではなく、やせてきているのでは?体重が減っているのでは?食事食べているの?こういう医療の原点が栄養だと思うのです。それを医療従事者は忘れかけているのではないでしょうか。

自分の大事な人に対するのと同じとは言わなくても、忙しい業務の中で、ふと、『この患者さんが自分の親だったら…』と考えてみて欲しいのです。その時、本当に自分がやるべき『看護』が見えてくるのではないかといつも思っています。そして、その一番のベースとなるのが、栄養だと、私は確信しています。

『元気の源は栄養』です。健康な人だって、そうなのです(スポーツマンの栄養に対する考え方はすごいですよ)。病気の患者さんなら、なおさらその重要性を考えてあげないといけないのではありませんか。

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