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【連載】最新情報がわかる! 学会・セミナーレポート

特定行為に係る看護師の研修制度~行政の動き~

  • 公開日: 2022/3/30

2022年2月16日(水)、「地域医療を支える特定行為研修修了者の活動と期待」をテーマに、「2021年度 特定行為研修シンポジウム」が開催されました。今回は、厚生労働省医政局看護課 看護サービス推進室の講演を中心にレポートします。


医療現場で高まるニーズ

 看護師の特定行為に係る研修制度は、医師の働き方改革におけるタスクシフト・タスクシェアという点で大変注目が集まっています。また、近年では診療報酬においても、特定行為研修を修了した看護師が算定要件となっており、医療現場でのニーズが高まってきています。

 特定行為研修を行う指定研修機関や修了者も年々増加傾向にあり、指定研修機関は令和3年8月時点で289機関にのぼり、令和3年9月時点で4393人もの修了者を輩出しています。開講状況について特定行為区分別でみると、「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」が最も多く、次いで「呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連」「動脈血液ガス分析関連」となっています。

特定行為研修制度の周知に課題

 特定行為研修制度の円滑な実施及び修了者を確保することを目的として、受講に至るまでにどのような方法で情報収集を行ったか、特定行為を実施するにあたり、どのようなことに困難を感じているかなどについて、アンケート調査を行いました。

 受講を検討する際の情報収集先に関しては、厚生労働省(以下、厚労省)や日本看護協会のホームページのほか、指定研修機関先のホームページやパンフレットを参照しているといった回答も多くみられ、よりわかりやすい情報提供の方法を検討していく必要があると考えています。

 特定行為を実施するうえで困難と感じていることに関する質問に対しては、「特定行為研修制度について周知すること」と回答した割合が最も多く、「修了者自ら手順書を作成しなければならない状況がある」「症例が少ない」「医師の理解が得られない」が続きました。

 また、新型コロナウイルス感染症の患者さんに実施した特定行為ついては、動脈ラインの確保や呼吸器の設定など、急性期の場面で実施したケースが多いことがわかりました。

あらゆる支援策で特定行為研修を推進

 厚労省では、指定研修機関、研修受講者、医療機関に向けたさまざまな支援計画を展開しています。

 特定行為研修制度の創設当初より行っている支援には、「研修機関導入促進支援事業」と「指定研修機関運営事業」があります。「研修機関導入促進支援事業」は新たに指定研修機関となる機関が対象となり、カリキュラムの作成や備品購入、実習体制の構築といった、指定研修機関の設置準備に必要な経費に対する支援を行います。

 一方、「研修機関導入促進支援事業」は、指定研修機関の運営を開始した年度から4年度目までの機関を対象とし、指導者経費や会議費など、研修の運営にかかわる費用を補助するものになっています。

 令和3年度からは、研修機関の養成力向上支援に関する事業も開始されました。外部の指定研修機関と連携を図ったり、地域のニーズに合った研修を計画したりするなど、効率的に修了者を養成する指定研修機関に対して費用を支援し、どのような取り組みが効果的であるか検証していくという事業です。

 ほかに、指導者を育成するための講習会(指導者講習会)を開催する指定研修機関に財政支援を行う指導者育成等事業や、研修を実施するためのカンファレンスルームや受講者専用の自習室の設置、eラーニングの導入など、ハード面の整備に対する支援を行う指定研修機関等施設整備事業も行っています。

 さらに、令和3年度の補正予算案において、新型コロナウイルス感染症への対応が可能な看護師の確保を目的とした、「新型コロナウイルス感染症対応看護職員等の人材確保事業」が組み込まれました。主に、呼吸器管理などに関連する特定行為区分を実施している指定研修機関が対象となり、定員数を増やし、研修を実施した場合に補助をするというものです。すでにこの区分を実施している指定研修機関で支援を検討する場合は、各都道府県への問い合わせが必要となります。

特定行為研修修了者の評価項目が追加へ

 医師の働き方改革を進めるためのタスクシフト・タスクシェアの推進に関する検討会で、医師の働き方改革を後押しするものとして特定行為が挙げられています。特定行為研修は医師の働き方改革を推進するために作られた制度ではありません。しかしながら、修了者の活動によって医師の平均勤務時間が短縮したという報告もあり、大いに期待がもたれています。

 また、訪問看護ステーション所属の修了者が重度の褥瘡事例に介入することで、患者さんや家族の身体的・精神的な負担が軽減されただけでなく、通院回数や費用の削減につながった事例も発表されています。こうした事例をもとに、令和4年度の診療報酬において、修了者の評価項目が追加される予定です。

 一方、組織の中で修了者が効率的に配置されていないということも課題としてあります。特定行為研修に送り出すところから、実際に現場で活躍してもらうまでの組織的な配置をどうするか、今後ガイドラインを取りまとめ、共有していきたいと考えています。

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