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【連載】最新情報がわかる! 学会・セミナーレポート

「Elekta Unity MR リニアックシステム」千葉大学医学部附属病院で日本初の治療開始へ~がんを見ながら放射線治療をする、新しい時代が到来に

  • 公開日: 2021/12/16

2021年11月11日(木)に、『「Elekta Unity MR リニアックシステム」千葉大学医学部附属病院で日本初の治療開始へ~がんを見ながら放射線治療をする、新しい時代が到来に』と題したプレスセミナーが行われました。今回は、千葉大学医学部附属病院 院長 横手幸太郎先生と、同院 放射線部長 宇野 隆先生による講演を中心にレポートします。


Beyondコロナに最高の医療を求めて

千葉大学医学部附属病院 院長 横手幸太郎先生

 日本は少子超高齢社会を迎え、健康長寿の実現が課題となっています。千葉大学医学部附属病院では健康長寿と社会活性化維持の実現のため、高度救命救急センターやヘリポート、高機能手術室を擁する中央診療棟の建設といった再開発に力を入れているほか、2020年2月以降は、延べ520名の新型コロナウイルス感染症の入院診療を実施し、コロナワクチンセンターの設置、エクモカーの導入などの取り組みを行っています。

 また、健康長寿と社会活性化維持の実現には、がんをどのように治療していくかも重要な課題となります。そこで当院では、最新の放射線治療機器「Elekta Unity MR リニアックシステム(以下、Elekta Unity)」を日本で初めて導入することになりました。機器の導入により、多くの患者さんの健康そして疾患の克服に役立つことを願っています。

「Elekta Unityによるがん治療にかける期待と展望

千葉大学医学部附属病院 放射線部長 宇野 隆先生

放射線治療とは

 放射線治療は外科療法や薬物療法と並び、がん治療における3本柱の1つです。主に外来通院での治療となり、早期例に対する根治的治療から進行例の緩和ケア、QOL向上、生存延長まで幅広いニーズに対応できます。侵襲が少なく臓器の機能と形態を温存でき、高齢者や合併症のある患者さんでも受けられます。日本では現在27万人が放射線治療を受けており、2025年には34万人まで増えることが見込まれています。

 放射線治療はレントゲン博士がX線を発見して以来、表面のみに届く放射線照射、そしてコバルトやリニアックの登場で身体の奥深くまで届くようになり、現在のピンポイント照射へと進化してきました。最近の放射線治療では、より狭い範囲に・より正確に・より短期間でがんを捉え、正常組織を外すための画像誘導技術に重きが置かれるようになってきています。

Elekta Unityの特徴

放射線治療の「見える化」

 Elekta Unityは、1.5T-MRI(画像診断の主力MRI)とリニアックを一体化させた装置で、下記のような幅広いがんに適応されます。

<Elekta Unityの適応>
・前立腺がん
・肺がん
・膵がん/肝臓がん
・頭頸部がん
・乳がん/子宮頸がん
・脳腫瘍
・オリゴ転移/オリゴ再発
・脊椎/傍脊椎腫瘍
・食道胃接合部がん

 Elekta Unityの最大の特徴は、治療ビーム照射中の体内が1.5T-MRIで見えることです。放射線治療では治療計画を立てるための画像取得を行い、それをもとに放射線をどう当てるかを決めますが、例えば前立腺がんの場合、直腸のガスによる照射位置の移動が起こることがあります。

 そのため、照射直前にも治療装置でCTを撮り、計画通り放射線が当たるように位置を確認・修正するといった作業が毎回必要になります。また、CTでは腫瘍と正常組織との境界が不明瞭であったり、小さな腫瘍が描出されなかったりします。

 Elekta Unityでは、高画質なMRIにより、腫瘍の状態や位置変化に正確かつ即時に対応できるほか、CTでは狙いをつけられない小さな病変も明確に描出してプランニングし、さらには照射中に病巣を観察することもできます。

 これまで、病巣を見ながら治療を行っていたのは外科医や内視鏡医でしたが、放射線治療も病巣を見ながら、あるいは腫瘍の中まで見ながら治療ができる時代に突入したといえます。

即時適応放射線治療

 毎日の腫瘍の大きさ・形状・位置変化およびリスク臓器の位置を考慮し、照射範囲を最適化させることを適応放射線治療といい、患者さんが治療寝台に寝ている間にMRI画像をもとにプランを修正し、照射することを即時適応放射線治療と呼びます。

 即時適応放射線療法では、膀胱の容量や呼吸の深さによってずれた照射位置をその場で調整できるほか、リスク臓器を外し、腫瘍を適正にカバーすることが可能です。

 また、従来の放射線治療では、位置決めや照射直前に行う位置の確認・修正などのたびにCTによる放射線被ばくを伴いましたが、Elekta Unityでは実際の治療時の照射のみとなるため、放射線被ばくの機会が少なく済みます。

 このように、照射範囲を縮小すること、見ながら照射すること、即時に変化に適応することで正常組織への線量低減につながります。これにより1回の線量が大きく上がり、治療回数も少なくなることが期待されます。当院では、全国に先駆けてElekta Unityを導入しました。高精度で患者さんにやさしい新しい放射線治療を展開していきたいと考えています。

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