【連載】やさしく学ぶ 大腸がん経口抗がん剤の副作用マネジメント
第1回 大腸がんの基礎知識を確認!
- 公開日: 2014/3/12
抗がん剤の進歩や副作用対策の充実に伴い、がん患者さんは通常の生活を送りながら外来通院で治療を受けることができるようになってきました。
このシリーズでは、近年、増加傾向にある大腸がんを取り上げ、外来での対応が特に重要な経口抗がん剤の副作用マネジメントのポイントについて紹介していきます。第1回では、薬のお話に入る前に、大腸がんの基礎知識について概説します。
大腸がんの患者さんが増えています
1980年代以降、がんの罹患率は増加し続けており、さらに部位の内訳において大腸がんの割合は増加しています。日本における大腸がん(結腸がん、直腸がん)の2008年時点での罹患数は、男性では胃がん、肺がんに次いで第3位、女性では乳がんに次いで第2位となっています(図1)1)。また、2012年時点での部位別死亡数をみると、大腸がんは男性では第3位、女性では第1位で、多くの患者さんが大腸がんで亡くなっています1)。
大腸がんのリスクファクターとしては、加齢や生活習慣(飲酒、喫煙、赤身肉・加工肉が多く繊維質の少ない食事)、既往疾患(大腸腺腫、炎症性腸疾患など)、遺伝などが考えられています2)~4)。
図1 部位別がん罹患数(2008年)
大腸がんはS状結腸から肛門側の部位に多く発生します
大腸がんの好発部位は、S状結腸と直腸で、これらの部分で大腸がん全体の約70%を占めます(図2)5)。
図2 大腸がんの好発部位
大腸がんの代表的な自覚症状は出血(血便、下血)、便通異常(下痢、便秘、便が細くなる)です。ほかに、おなかが張る、腹痛、貧血、原因不明の体重減少などの症状がみられることもあります。しかしながら、初期では自覚症状がみられないことが多いため、大腸がんが発見されたときにはある程度進行していることも少なくありません。
大腸がんの症状は、大腸のどの部位にがんができるかによって異なります。がんの発生部位が上行結腸、横行結腸、盲腸の場合は進行するまで症状がでにくく、腫瘤(しこり)として見つかることが多く、慢性的な出血による貧血もみられます。直腸、S状結腸、下行結腸の場合は出血や便秘、下痢などの症状を契機に診断されることが多いのが特徴です6)。