第3回 褥瘡の状態を評価する 褥瘡の評価表DESIGN-Rについて
- 公開日: 2009/4/30
褥瘡の状態評価の重要性
褥瘡をケアする際に、創の状態はどのように評価されていますか?
褥瘡の治療にあたっては、創の状態を知り、どのように取り組んでいくのかを知ることが重要です。しかし、ケアにかかわるメンバーが共通の視点で創の状態を判定しないと、同じ褥瘡に関わっているにもかかわらず、バラバラのケア・治療方法を選択してしまうということが起こりかねません。
そこで、統一の評価ツールを用いて創の状態を客観的にアセスメントしてゆけば、その評価を見直し、チームで統一した治療およびケアに役立てることができます。わが国では2002年に日本褥瘡学会学術教育委員会によって開発された、DESIGNという褥瘡状態判定スケールが広く用いられてきています。
そして、2008年にDESIGNが改訂され、『DESIGN-R』というスケールが公表されました。
今回は、DESIGNの評価方法とDESIGN-Rへの変更点の解説します。
DESIGNの特徴
DESIGNスケールの特徴は、褥瘡の重症度を分類して治癒の過程を数字で示す(数量化)ことができます。
継続的にDESIGNを用いてアセスメントすることで、褥瘡が治癒傾向にあるのか、悪化しているのかを客観的に判断でき、その後の褥瘡治療・ケアに生かすことができます。
また「褥瘡経過評価用」と「重症度分類用」の2種類があり、「重症度分類用」では簡単に重症度がわかり、治療・ケアの指針を得ることができます。
※各表については、日本褥瘡学会のホームページからPDF文書で掲載されていますので、ご参照ください。
左表:褥瘡経過評価用 右表:重症度分類用
DESIGNの評価項目
DESIGNは、
1. 深さ(Depth)
2. 滲出液(Exudate)
3. サイズ(Size)
4. 炎症・感染(Inflammation / Infection)
5. 肉芽組織(Granulation tissue)
6. 壊死組織(Necrotic tissue)
の6項目のそれぞれ英語の頭文字をとって、DESIGNと表記されました。
また、褥瘡治療においてポケット(Pocket)の有無はとても大きな要因となりますので、ポケットがある場合『P』の項目を評価します。
重症度が高いほど点数が高くなり、治癒してくれば点数が減少する仕組みになっています。
創の評価をした際には、アルファベットと該当する点数の数字を並べて表記します。
DESIGNの評価の視点
1)Depth:深さ
創の中でいちばん深いところで判定します。真皮全層の損傷までをd、皮下組織を越えた損傷を[D](深い創)と判定されます。
[D](深い創)の治癒が進み、創底が浅くなってきた場合は、それに応じて評価も[D]→[d]と変化します。
皮下組織に達する創(深い創)では、創底から肉芽組織が盛り上がり、徐々に浅くなるとともに、創周囲から上皮の遊走が進んで創が閉鎖し、治癒していきます。
真皮より浅い創(浅い創)では、創底に残存する基底細胞から上皮が形成されるのと、創周囲からの上皮の遊走によって、皮膚が再生され治癒に至ります。
2)Exudate:滲出液
滲出液の量は、ドレッシング交換の回数で判定します。
ドレッシング材の種類は詳しく限定されていません。1日1回以下の交換の場合を[e]、2回以上の交換の場合を[E]とします。
3)Size:大きさ
褥瘡の皮膚損傷部位の長径(cm)と、それに直角に交わる一番長い径(cm)を測定し、それぞれを掛けた数値により分類します。
毎回、同一体位で測定することが重要です。体位が変わってしまいますと、皮膚のたるみなどで創の大きさが変わり、正確に評価できないことがあります。
4)Infection/Inflammation:炎症/感染
創および創周囲の感染兆候を評価します。
創周囲に発赤・腫脹・熱感・疼痛などの炎症兆候がある場合は[i]とし、炎症の4兆候に加え、排膿・悪臭・全身の発熱などがある場合は[I]と評価されます。
[I]感染については、「局所感染」と褥瘡部の感染が原因で全身の発熱を来しているなど「全身に影響を及ぼしているか」を見極めて分類します。
5)Granulation:肉芽組織
この項目では、良性肉芽が創面に占める割合で評価します。
良性肉芽が50%以上を占める創は[g]、50%未満の創には[G]と評価します。
肉芽であっても、血流が豊富な、赤く適度な湿潤のある良性肉芽でなくてはなりません。(「牛肉色の肉芽」と言い表わされている海外の文献もあります)
貧血や低栄養などで肉芽が白っぽく(「豚肉色の肉芽」)なっていたり、浮腫状態の肉芽などは良性肉芽には入りません。
また、[d]浅い褥瘡の場合は、創の治癒過程が肉芽を形成して治癒するのではなく、上皮の遊走によって治癒するので、この項目は[g0]の評価となります。
6)Necrotic tissue:壊死組織
壊死組織がない場合は[n]、壊死組織があれば[N]と分類されます。
[N]は壊死組織の色ではなく「柔らかい」か「固い」か評価をします。
“黒色壊死”でも、柔らかければ[N1]となりますし、黄色や白っぽくても固く乾燥していれば[N2]となります。
7)Pocket:ポケット
ポケットの測定方法は、ポケットの範囲を特定し、ポケットと創面全体を合わせて一番長い径と、それに直角に交わる一番長い径を測定し、かけ合わせます。
そして、その値から[S]で導き出した値を引き算し、値を算出します。
ポケットの大きさも体位によって異なりやすいので、必ず同一体位で測定します。
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