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【連載】今度こそ「できる!」血糖コントロール

第5回 こんなときどうする? 低血糖を起こした!

  • 公開日: 2015/9/4

糖尿病の患者さんが低血糖を起こしてしまったら?
まずは、その原因は何かをチェックしてみましょう。患者さんが「できない」ことを明確にし、ポイントを押さえて指導することが大切です。


▼糖尿病、血糖コントロールの記事をまとめて読むならコチラ
【糖尿病】血糖コントロールの指標と方法


ケース1 患者さんが低血糖を起こしてしまった!

低血糖を起こした時はこうする!

 低血糖は糖尿病の治療中には頻繁に起こりやすいトラブル。インスリン製剤や経口血糖降下薬による薬物療法を実施している患者さんに起こります。

 患者さんが低血糖を起こしたらすぐに糖質を摂取させます。補給する糖質としては、市販のブドウ糖製剤や角砂糖、糖分(ブドウ糖)の入った飲料水などをお勧めします。

 糖分補給としてイメージするのは、飴やキャラメル、チョコレートなどが多いと思いますが、これらは体内で消化吸収されるまでに時間がかかり、糖の吸収が遅れてしまいます。当クリニックの患者さんの例ですが、グレープフルーツジュースを200ccぐらい飲むのが、血糖が上がり過ぎずによいという声を聞きました。

 また、意識障害などを伴う重症低血糖の場合、病棟で対応できるときは、まずは血糖値を測定して低血糖であることを確認し、医師の指示に従い、50%グルコース注射液20mL以上を静脈内に投与します。その後、意識の回復と血糖値の上昇を確認したら、炭水化物の経口摂取を促します。

 続いては、低血糖の原因と指導法を説明します。

このケースの原因をチェックしよう!

□適切な食事ができていない。
□適切な強度・時間での運動ができていない。
□運動を中断しなければいけない場合を知らない。
□正しい薬物療法が理解・実施できていない。

ポイントを押さえて指導しよう!

 生活状況の変化によって誘発されるのが、低血糖の大きな特徴です。食事時間が遅れた、食事量または炭水化物量の摂取が少なかった、いつもより強く長い運動をした(発症のタイミングは、当日またはその日の夜間、翌日の早朝)、飲酒した、などがその例です。

 また、インスリン製剤や経口血糖降下薬の種類や量を誤ってしまい起こることもあります。同じ経口薬でも、低血糖の危険があるもの(SU薬、速効型インスリン分泌促進薬)と、危険がないもの(ビグアナイド薬、インスリン抵抗性改善薬、α-グルコシダーゼ阻害薬、DPP-4阻害薬)があります。

 前者を服用している患者さんには、自分がどんな薬を服用しているかきちんと理解してもらい、どんな状態で低血糖が起こりやすいか、低血糖が起きたときにどのように対処すればよいかについて、患者さんが納得できるまでしっかり説明しておくことが必要です。これはインスリン療法でも同じです。

 また、GLP-1受容体作動薬(ビクトーザ(R))は、それ自体に低血糖の危険性はありせんが、SU薬を併用するときには低血糖が生じる恐れがあるので、注意が必要です。

 患者さんには、日頃から低血糖への備えとして、ブドウ糖を含む食品や、ジュース類を常備・持参すること、低血糖が起こりそうだと感じた場合には、炭水化物を1単位程度摂取することをあらかじめ説明しておくことが大切です。

 次ページでは、低血糖の見極め方について説明します。

低血糖の見極め方

 低血糖が起こったかどうかの見極めは、血糖値と症状でみていきます。

 血糖値で見極めるときは、正常範囲(60~140mg/dL)より低いかどうかでみます。目安としては一般的には60mg/dL未満と定義されていますが、治療が遅れて重症化すると昏睡や脳機能障害をきたすなど非常に危険な場合もあるため、臨床では70mg/dL以下を低血糖として対応することが多くなっています。

 ただし、年齢や性別、生活環境などによって、血糖値の変化と症状が一致しないこともあり、また、人によって低血糖症状を呈するボーダーラインが異なることもあります。

 糖尿病患者さんの場合、拮抗調節機能が働かないため、いったん低血糖になると、糖を補給しない限り、そのまま血糖値が低下し、その程度に応じたさまざまな症状が出てきます(図)。

低血糖時の主な症状図 低血糖時の主な症状

 その場で血糖値測定ができないような状況では、症状から判断します。発汗や頻脈、頭痛、意識レベルの低下など、さまざまな症状が現れます。ただし、このような症状がないまま、いきなり昏睡状態になること(無自覚性低血糖)もあります。

 特に、糖尿病神経障害による自律神経障害で交感神経刺激症状が欠如している場合、あるいは繰り返し低血糖を発症している場合には注意が必要です。

 特にインスリン注射を行っている患者さんに低血糖が頻発すると、低血糖症状が出現し始める血糖の値が低下する「閾値の低下」につながります。そうすると、低血糖に対する自覚が鈍化し、低血糖時の拮抗ホルモンの反応も低下してしまいます。これを防ぐためには、低血糖状態は週に1~2回にとどめることが大切です。

 次回は、シックデイの理由と対応を解説します。

参考・引用文献

 1)牧田善二 著:糖尿病専門医にまかせなさい、文藝春秋、2009.
 2)牧田善二 著:糖尿病はごはんよりステーキを食べなさい、講談社、2010.
 3)日本糖尿病学会 編:糖尿病治療ガイド2010、文光堂、2010.
 4)日本糖尿病学会 編:糖尿病療養指導の手びき(改訂第3版)、南江堂、2007.
 5)日本糖尿病学会 編:科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン、南江堂、2004.
 6)森加苗愛 監修:次は必ずうまくいく! 糖尿病と指導の「悩み解消」ポイント、エキスパートナース23(9)、照林社、2007.
 7)日本糖尿病学会 編:糖尿病治療の手びき(改訂第55版)、南江堂、2011.
 8)門脇 孝、真田弘美 編:すべてがわかる 最新・糖尿病、照林社、2011.

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