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高血糖(糖尿病による)の看護|原因、症状、血糖コントロール、看護計画など

  • 公開日: 2022/11/22

高血糖とは

 高血糖とは、血液中のブドウ糖の濃度、つまり血糖値が高い状態を指します。①空腹時血糖値≧126mg/dL、②糖負荷試験(75gOGTT)2時間値≧200mg/dL、③随時血糖値≧200mg/dLのいずれかが2回以上認められた場合、あるいは、①~③のいずれかとHbA1c≧6.5%が認められた場合に糖尿病と診断されます1)

 また、食後2時間の血糖値が140mg/dL以上となる状態を食後高血糖といいます。空腹時血糖値が正常であっても、食後の血糖値を測定すると基準値以上のケースでは、糖尿病や糖尿病予備軍である可能性が高いと考えられます。

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高血糖の主な原因

 高血糖の主な原因として、インスリンの作用不足が挙げられます。インスリンの分泌量が低下する、インスリンに対する細胞や各器官の反応が乏しくなる(インスリン抵抗性)などにより、インスリンが十分に作用しなくなると高血糖となります。

 ほかに、糖質の過剰摂取も高血糖の原因として考えられます。通常、健康な人であれば食後の血糖値が基準値を大幅に超えることはありませんが、甘いものや炭水化物といった糖質中心の食事頻度が高いと、血糖値が下がりきらず高血糖のリスクが高まります。

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高血糖の主な症状

 高血糖による主な症状としては、口渇、多飲、多尿、倦怠感、空腹感、易疲労感などが挙げられます。細胞内にエネルギー源となる糖質が十分に取り込めず、細胞がエネルギー不足の状態になることから体重が減少したり、尿中の糖が増えると、尿の泡立ちを認めることもあります。

 ただし、初期の段階では自覚症状に乏しく、健康診断や他疾患での受診で高血糖を指摘されて気がつくケースも多くみらます。

高血糖の看護

 高血糖の看護で大切なことは、血糖コントロールを通した合併症予防です。食事療法、運動療法、薬物療法を中心に血糖コントロールを行っていきますが、良好な血糖コントロール維持には自己管理を継続する必要があり、患者さんの負担も少なくありません。

 また、長年の習慣を変えることは困難な面もあるため、患者さんに寄り添いながら、前向きに血糖コントロールに取り組めるよう支援できるとよいでしょう。

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食事療法

 食事療法は、血糖コントロールに欠かせないアプローチの一つです。患者さんのこれまでの食生活を見直し、一人ひとりの状態に合った食事内容への改善を目指します。

 単にカロリー制限をするだけでなく、1日に必要なエネルギー量と栄養素のバランスを適正に保った献立を考える必要があります。その際、食品交換表を使うと食材の選択がしやすいでしょう。

 食品交換表では、日常で摂取する食品を主に含まれる栄養素(炭水化物、蛋白質、脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維)ごとにグループに分けしているほか、各食品の1単位(80kcal)分の重さも把握できるようになっているため、医師や管理栄養士が指定したエネルギー摂取量(指示単位)と6つの栄養素の割合をもとに、患者さん自身で献立を組み立てることが可能です。

 食事療法というと、「好きなものが食べられない」「調理法が限られ満足感が得られにくい」といったイメージを抱く患者さんもいますが、設定されたエネルギー摂取量の範囲内であれば、食べられるものは多くあります。患者さんに介入する際は、「食べられない」ではなく、「こうすれば食べられる」という思考の置き換えをサポートできるように配慮しましょう。

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運動療法

運動の種類と方法

 運動療法の目的は、筋肉内でのブドウ糖と脂肪酸の利用を促進させることです。適切な運動を通して、インスリン作用不足によって十分に消費できなかった糖の代謝を図り、血糖値の上昇を抑えていきます。運動は、有酸素運動とレジスタンス運動の大きく2つがあります。

◆有酸素運動

 ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなど、筋肉を動かす際のエネルギーとして酸素を用いる運動を有酸素運動といいます。『糖尿病ガイドライン2019』では、中等度(最大酸素摂取量の40~60%)の有酸素運動を週3日以上(週150分かそれ以上)行い、運動をしない日が週2日以上続かないようにするべきとしています2)。なお、有酸素運動を食後に実施すると、食後高血糖の改善が期待できるとされています2)

◆レジスタンス運動

 レジスタンス運動とは、いわゆる筋力トレーニングのことです。スクワット、腹筋、かかと上げなど、自宅で簡単に取り組めるものを8~10種類用意し、1種類につき10~15回ずつ取り組みます。慣れていないうちは、取り組みやすい運動から数種類ずつ行うといよいでしょう。徐々に数を増やしていき、連続しない日程で週2~3回の頻度で実施できるようにします。

運動療法における注意点

 運動療法の実施可否、運動量、運動強度については医師の指示に従い、患者さんの生活スタイルも加味しながら、無理なく継続できるメニューとなるように設定します。

 運動時に注意すべき点は、血糖値の変動への対処です。患者さんの状態や服用している薬剤の種類によっては、運動中に高血糖や低血糖発作を起こす可能性があります。体調の変化に注意するのとあわせて、必要に応じてブドウ糖を持ち歩いて低血糖発作に対処できるようにしたり、場合によっては運動強度の変更などを検討したりします。

 目標設定の仕方にも注意が必要です。例えば、「HbA1c値を下げる」という目標を立てると、1~2カ月先まで評価ができず、達成できなかったときのダメージも大きくなってしまいます。「毎日4種類の運動に取り組む」といったように、患者さんの達成感が得られやすい設定を心がけるようにします。

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薬物療法

 インスリン非依存状態の患者さんで、食事療法や運動療法を2~3カ月継続しても良好な血糖コントロールを得られない場合は、血糖降下薬による治療が検討されます3)

 血糖降下薬は、インスリンの分泌促進やインスリン抵抗性を改善させることを目的とした薬剤です。生体への影響や副作用を考慮し、基本的に単剤で少量から使用が開始されますが、血糖コントロールの効果が十分得られない場合は、徐々に増量したり、使用する薬剤を追加・変更したりするほか、インスリン製剤の併用などについても検討が行われます。

 薬物療法において大切なのは、患者さんが薬剤の特性を理解した上で服用できるようにサポートすることです。例えば、スルホニル尿素(SU)薬とインスリン製剤は低血糖を起こしやすいため、投与開始時には低血糖発作への対処に関する指導を必ず行うようにします。薬剤によって、食前や食後など服用のタイミングもさまざまなため、患者さんの年齢や認知能力によっては、適切に服薬できているかのアセスメントも必要となります。

 インスリン製剤導入に拒否や不安感を示した際は、患者さんがどのようなことで拒否や不安感を抱いているのかをアセスメントし、時には時間をかけて患者さんが気持ちを整理できるようにサポートしていきます。場合によっては、医師からの説明や服薬指導を依頼し、適切な知識のもと治療に取り組める環境を整えることが大切です。

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看護計画

「不規則な生活で高血糖になりやすい患者さん」を例に看護計画を紹介します。

看護問題
# 不規則な生活に関連した血糖不安定リスク状態

看護目標
・日常生活の見直しを通して血糖のコントロールがつき、穏やかな日常生活を送ることができる

観察計画(O-P)
・バイタルサイン
・血液データ(空腹時血糖・食後2時間血糖・HbA1c)
・食事摂取量
・水分摂取量
・1日の生活リズム
・仕事内容
・排泄状況
・服薬状況(自己管理の状況)
・運動量
・睡眠状況
・治療に対する意欲

ケア計画・援助計画(T-P)
・測定した血糖値の記録を確認する
・血糖測定の見守りあるいは実施
・服薬が適切なタイミングで行われているか確認する
・(インスリン導入済みの場合)インスリン注射の見守りあるいは介助
・適切なタイミングで運動療法の声掛けを行う
・食事内容の記録を行う
・患者さんと家族の病識を確認する
・運動療法、食事療法、薬物療法への意欲と理解度を確認する

教育計画(E-P)
・高血糖と合併症予防に関する知識を確認し説明する
・食事療法の目的と必要性について説明する
・食品交換表の活用方法について指導する
・使用している薬剤の特徴と薬物療法について説明する
・運動療法の目的と必要性について説明する
・生活リズムの見直し方について説明する
・自己血糖測定の方法について説明する
・低血糖発作時の対処法について説明する
・(インスリン導入の場合)インスリン自己注射の手技について説明する

【関連記事】
血糖コントロールに関する看護計画|糖尿病の患者さん
服薬管理に関する看護計画|糖尿病患者さんの服薬管理
食事指導に関する看護計画|糖尿病の患者さんへの食事指導

引用・参考文献

1)日本糖尿病学会,編・著:糖尿病診断の指診.糖尿病ガイドライン2019.南江堂,2019,p.5-10.(2022年11月16日閲覧)http://www.fa.kyorin.co.jp/jds/uploads/gl/GL2019-01.pdf
2)日本糖尿病学会,編・著:運動療法.糖尿病ガイドライン2019.南江堂,2019,p.61-2.(2022年11月16日閲覧)http://www.fa.kyorin.co.jp/jds/uploads/gl/GL2019-04.pdf
3)日本糖尿病学会,編・著:血糖降下薬による治療(インスリンを除く).糖尿病ガイドライン2019.南江堂,2019,p.69-82.(2022年11月16日閲覧)http://www.fa.kyorin.co.jp/jds/uploads/gl/GL2019-05.pdf
●日本糖尿病学会,編・著:インスリンによる治療.糖尿病ガイドライン2019.南江堂,2019,p.93-101.(2022年11月16日閲覧)http://www.fa.kyorin.co.jp/jds/uploads/gl/GL2019-06.pdf
●厚生労働省:e-ヘルスネット 食後高血糖.(2022年11月16日閲覧) https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-086.html
●厚生労働省:重症副作用疾患別対応マニュアル 高血糖.(2022年11月16日閲覧)https://www.pmda.go.jp/files/000224773.pdf

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