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【連載】いま知りたい! 心不全の緩和ケア

第3回 薬物療法による症状緩和の実際|心不全の緩和ケアはこう行う①

  • 公開日: 2017/7/23
  • 更新日: 2020/3/31

 呼吸困難や倦怠感など、心不全による患者さんの苦痛に対する緩和ケアついて、主となる薬物療法を中心に、その提供体制も含めてお伝えします。


▼心不全の看護について、まとめて読むならコチラ
心不全の看護|原因、種類、診断、治療


薬物療法による症状緩和の実際

 進行した心不全は、多岐にわたる症状や併存疾患のため、症状の緩和は容易ではありません。その場合、先行しているがん緩和の領域を参考にすることも多く、それを踏まえながら薬物療法1)2)による症状緩和を行います。

 まず、モルヒネなどの強オピオイド、コデイン、鎮静薬などの薬物投与を考慮する前に、心不全の経過を見直し、適切な治療が行われているかを検討することが必要です。そのうえで薬物治療の追加を判断します。多くの場合、心不全患者さんは、末期でも利尿薬、硝酸薬、強心薬の投与を受けながら、オピオイドなどの追加投与を受けることになります。このとき、適切に症状評価を行い、投与された薬剤についてはその効果を判定することが重要となります。

症状緩和のための治療選択肢

 具体的な症状緩和を目的に使用する薬物を表11)2)に示します。さらに、多くの患者さんが訴える呼吸困難、倦怠感について詳しく説明します。
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症状緩和のための薬剤使用一覧
表1 症状緩和のための薬剤使用一覧

呼吸困難(息切れ)

 発作性夜間呼吸困難のような急激に進行する呼吸困難から徐々に増悪する労作時呼吸困難まで、息切れは心不全において最も頻繁に認められる主訴の1つです。息切れは、筋力低下、呼吸筋疲労とも関係し、明らかなうっ血所見や体重増加のない場合にも呼吸困難を訴えることがあります。

 まずは、改善可能と考えられる要因を検討・治療します。体液貯留のある場合には利尿薬を使用し、利尿薬を投与しても大量の胸水貯留を認めるときはドレナージを検討します。肺炎などの呼吸器感染症であれば抗菌薬で治療します。うつ病や不安が呼吸困難の増悪因子にもなるので、心理的側面からの介入も重要です。呼吸リハビリテーションや認知行動療法を用いたパニックへの対処法などの支援も、呼吸困難緩和には有用です。

 このような治療介入の後、オピオイドの追加を検討します。

◆オピオイド(塩酸モルヒネ等)
 化学受容体の感受性亢進の軽減、続発する心不全で認められる異常な呼吸パターンの改善を促し、緩和治療に有用であるとされています。慢性期の経口用モルヒネでは、臨床的に息切れが著明に改善し、忍容性も良好であるとの報告があります。しかし、エビデンスは十分とはいえません。内服は総量として多くなる可能性があるので、当院では持続静脈注射もしくは皮下注射で使用しています。重篤な腎不全があるときには、フェンタニルなどの使用を検討することもあります。

 主な副作用とその対処法を表2に示します。呼吸抑制はまれですが起こり得る副作用です。特に呼吸状態が不安定な終末期では、呼吸回数や呼吸パターン(チェーン・ストークス呼吸、浅い呼吸、あえぎ様呼吸の出現)には注意が必要です。また、腎機能障害がある場合、作用が増強・遷延し、副作用出現の危険性が高まります。

オピオイドの副作用に対する対処法
表2 オピオイドの副作用に対する対処法

倦怠感

 倦怠感は、非常に治療抵抗性であり、緩和に難渋します。利尿薬による低カリウム血症や過剰利尿、β遮断薬の影響、睡眠障害、貧血、うつ、コンディション不良などの改善可能な因子があれば介入します。原因に合わせて、貧血の改善、睡眠時無呼吸への介入(在宅酸素や陽圧換気:CPAP、ASV)、心理的支援のほか、血行動態が安定している場合には運動療法や和温療法などを行います。

 その薬物療法としては、貧血の改善が必要な場合の鉄剤投与、エリスロポエチン製剤やステロイドの投与、強心薬の投与などが考慮されます。

◆ステロイド
 ナトリウム貯留から血管内容量の増加をきたし、心不全の増悪因子になり得るとされます。がん領域では、倦怠感緩和の目的で使用されますが、心不全においては基本的には使用すべきではないとされます。

◆強心薬
 心拍出量低下が原因の倦怠感には、強心薬によって症状が改善することもあります。しかし、離脱困難な状態となることも多く、2013年のAHA/ACC(米国心臓協会/米国心臓学会)のガイドラインでは、「機械補助や移植適応のない患者への緩和医療としての長期間投与に関しては、容認されるが有用性は不確実で異論もあり得る(classⅡb) 」とされます。

 臨床では、心拍出量低下による心不全増悪に対しては、症状緩和目的でなく、心不全治療の選択肢として強心薬が使用されていることが多いと思われますが、意思決定支援が良好に行われている場合には、強心薬は投与せず、オピオイドや鎮静薬の追加使用を、患者さん、家族、医療者によって選択することもあります。

引用文献

1) Miriam Johnson, et al.:Heart Failure and Palliative Care:A Team Approach, Radcliffe Publishing,Oxford,Seatlle,2006.
2) 大石醒悟,他:末期心不全の症状緩和.心不全の緩和ケア.大石醒悟,他編.南山堂,2014,p.63-89.

(ナース専科マガジン2017年1月号より転載)