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【連載】循環器看護のQ&A! 皆さんの疑問にお答えします!

末期心不全の呼吸困難を緩和するためにできることはある?

  • 公開日: 2026/3/17

Q.末期心不全で呼吸器困が強い患者さんがいます。日常生活援助の際も苦しく、つらそうです。呼吸困難を緩和するためにできることはありますか?
A.①病態・併存症・心理社会面を含む包括評価と可逆因子の是正、②利尿薬・血管拡張薬・強心薬によるうっ血と後負荷の調整、③残存する呼吸困難に対するオピオイド療法、④非薬物療法(NPPV、姿勢、環境整備、呼吸法・動作、心理的支援など)を重層的に組み合わせることで、呼吸困難の緩和を図ります。

末期心不全おける呼吸困難の病態生理と包括的評価・可逆因子の是正

 末期心不全では、心拍出量低下と体液貯留に伴う肺うっ血、および間質性浮腫によって、肺の伸展性(コンプライアンス)が低下します。その結果、通常と同じ換気量を得るためにより大きな呼吸筋努力を要し、「呼吸のしづらさ」として自覚されます。

 さらに、肺実質の伸展障害に、低酸素血症や高二酸化炭素血症による化学受容体刺激、肺迷走神経受容体(J受容体を含む)や胸壁の機械受容体の刺激が加わり、「息苦しさ」としての知覚が増強します1)。これらの機械的・化学的要因が重なり合うことで、末期心不全では強い呼吸困難が生じます。特に、全身血管抵抗(後負荷)が上昇すると、左室駆出がさらに障害され、左室拡張末期圧および肺毛細血管圧が上昇します。これにより肺うっ血や間質性肺水腫が悪化し、呼吸困難感が一層増強します。

 加えて、不安・痛み・せん妄などの心理的要因、貧血や感染、胸水・腹水、睡眠時無呼吸症候群やCOPDなどの併存疾患も、呼吸困難感を増悪させます。

 したがって、まず身体面・心理面・スピリチュアル面・社会面を含めた包括的評価を行い、併存疾患、胸水・腹水、薬剤、生活環境などを踏まえた臨床評価を通じて、可逆的因子を可能な限り是正することが重要です。

利尿薬・血管拡張薬・強心薬によるうっ血と後負荷の調整

 病態に応じた薬物療法の基本は、うっ血の解除または軽減と、後負荷の低減です。利尿薬によって体液過剰を是正し、血管拡張薬(硝酸薬を含む)によって前負荷および後負荷を軽減することで、肺毛細血管圧が低下し、呼吸困難の緩和が期待されます。一方、低心拍出や臓器低灌流を伴い、うっ血が遷延する場合には、強心薬(ドブタミン、ミルリノンなど)を使用して心拍出量を改善し、臓器灌流の回復とうっ血の改善を図ります。

残存する呼吸困難に対するオピオイド療法

 これらの治療を尽くしても、主観的な呼吸困難感が強く残る場合は、オピオイドによる対症療法を検討します。

 末期心不全におけるオピオイドの使用は、急性心不全における使用に比べて適切な用量に関するエビデンスが十分ではありません。しかし、がん領域では、疼痛緩和に比べて少量のオピオイドで呼吸困難が緩和されることが知られており、心不全においても同様に、少量で使用されている現状があります(表)。

 看護師はオピオイド投与後、2〜4時間ごとを目安に、VASやNRSを用いて呼吸困難の緩和状況を評価します。同時に、呼吸回数や意識レベル、SpO2、血圧、脈拍などのバイタルサイン、および副作用(便秘・悪心・眠気など)を系統的に観察します。これらの臨床所見に基づき、「日常労作でQOLを損なわない程度」を目標に最小有効量で管理されるよう、主治医と共有します。なお、呼吸回数が10回/分以下に低下した場合や、過度の傾眠・せん妄が遷延する場合は速やかに主治医へ報告し、減量・中止の判断を仰ぎます。

 オピオイド投与に伴い便秘が生じた場合には、下剤や末梢性オピオイド受容体拮抗薬(例:ナルデメジントシル酸塩)を併用します。悪心は開始初期や増量時に出やすいですが、多くは数日で耐性がついて軽減します。また、腎機能障害がある患者さんに対して、オキシコドンの使用が検討される場合もあると考えられますが、日本では心不全における呼吸困難感に対する使用は保険適用外であり、注意が必要です2)、3)

表 心不全におけるオピオイド開始例

薬剤開始例留意点
コデインリン酸塩10mg/回を頓用または1日3回から開始呼吸器疾患の鎮咳には保険適用があるが、心不全に対する適用はない
経口塩酸モルヒネ2.5〜5mg/回を1日3~4回の少量から開始心不全は適用外だが、激しい咳嗽には使用可能。日本で使用可能な経口塩酸モルヒネは10m錠であり、粉末での使用が必要
塩酸モルヒネ注5〜10mg/日の持続静注または持続皮下注から開始経口摂取が困難な場合などに実施
腎機能障害では、代謝物蓄積による過鎮静、せん妄、呼吸抑制などのリスクが上がるため、1/2〜1/4 量で開始し、慎重に漸増する

非薬物療法による呼吸緩和と生活支援

非侵襲的陽圧換気(NPPV)

 非薬物療法としては、非侵襲的陽圧換気(NPPV)が有用です。治療抵抗性の呼吸困難や増悪期における短期的な症状緩和に効果があり、呼吸筋負荷軽減およびガス交換の改善をもたらすことが、大規模試験やメタ解析で示されています4)、5)

姿勢、環境整備、呼吸法・動作、心理的支援など

 そのほかの非薬物的介入は、根拠の多くが呼吸器ケアや緩和ケア領域に由来しますが、末期心不全でも支持的効果が期待できます。

姿勢の工夫、ファン(送風)療法の実施

 上体挙上と上肢支持(胸郭運動を妨げない軽い前傾+前腕支持)の姿勢をとることで、呼吸補助筋の負担を減らします(図)。さらに、携帯扇風機などで顔面に微風を当てて三叉神経を刺激することで、息苦しさの緩和が期待できます。

図 姿勢の例

環境整備

 室温・湿度の調整、移動の動線短縮を考慮した環境整備によって、労作時の負荷を減らします。

呼吸法・動作の指導

 患者さん自身が呼吸をコントロールできるよう、口すぼめ呼吸などの呼吸緩和スキルを一緒に練習します。また、動作を細分化し、動作前にゆっくり息を吐いてから動くなど、呼吸のリズムに合わせて一動作ずつ進めると労作時の息切れが和らぎます。

排液管理

 胸水・腹水が強い場合は、体位を工夫し、苦痛の軽減を図ります。加えて、穿刺の適応を検討するための指標として、浮腫・体重・利尿反応を日々確認します。

栄養管理

 食欲不振が強い場合は、小分けの高エネルギー補食や冷たく匂いの少ない食品を提案し、エネルギー不足を避けます。

心理的支援

 呼吸困難感のある患者さんは、強い不安からパニック状態に陥り、情報を処理する能力が著しく低下することがあります。そのため、短くわかりやすい説明を心がけ、患者さんと一緒に呼吸を整えることで、不安の高まりを抑えます。こうしたかかわりを行っても呼吸困難や不安の改善が難しい場合には、医師の指示に基づき薬物介入を加えます。

 なお、オピオイド用量や一部の非薬物療法は、エビデンスが限定的です。最新のガイドラインおよび多職種連携のもとで、個々の患者さんに応じた最適化を図ることが望まれます。

引用文献

1)Dyspnea. Mechanisms, assessment, and management: a consensus statement. American Thoracic Society.Am J Respir Crit Care Med 1999;159(1):321-40.
2)日本循環器学会,他:2021年度改定版 循環器疾患における緩和ケアについての提言. p.37.(2026年1月7日閲覧) https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/03/JCS2021_Anzai.pdf
3)日本病院薬剤師会:心不全緩和ケアの薬剤業務に関する進め方. 日本病院薬剤師会雑誌 2022;58(8):883-8.
4) Gray A,et al:Noninvasive ventilation in acute cardiogenic pulmonary edema.N Engl J Med 2008;359(2):142-51.
5) Vital FM,et al:Non-invasive positive pressure ventilation (CPAP or bilevel NPPV) for cardiogenic pulmonary oedema.Cochrane Database Syst Rev 2013;(5):CD005351.

イラスト/たかはしみどり

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