糖尿病黄斑浮腫の国際重症度分類
- 公開日: 2025/2/12
糖尿病黄斑浮腫の国際重症度分類は何を判断するもの?
糖尿病黄斑浮腫の国際重症度分類は、糖尿病網膜症に伴う黄斑浮腫の程度を評価するために用いられる指標です。
網膜は眼底に広がる薄い膜状組織で、毛細血管が張り巡らされており、神経細胞に酸素や栄養を供給しています。糖尿病により血糖コントロールが不良な状態が続き、網膜の毛細血管が障害されることを糖尿病網膜症といい、進行すると視力低下や失明につながるおそれがあります。
また、網膜の中心部である黄斑(黄斑部)に浮腫が起こることを黄斑浮腫といいます。糖尿病網膜症に合併して起こる黄斑浮腫を糖尿病黄斑浮腫といい、糖尿病網膜症の病期に関係なく発症する可能性があります。黄斑浮腫が中心窩(黄斑の中央)に及ぶと著しい視力障害が生じ、仕事や生活の質が大幅に低下するため、定期的な検査と重症度評価を行い、早期発見・早期治療に努めるとともに、経過観察を続けることが重要です。
糖尿病黄斑浮腫の国際重症度分類はこう使う!
糖尿病黄斑浮腫の国際重症度分類では、眼底所見から糖尿病黄斑浮腫の重症度を評価します。具体的には、網膜肥厚や硬性白斑の有無により糖尿病黄斑浮腫があるかないかを評価し、黄斑浮腫があると判断した場合は、それらの病変の中心窩からの距離をもとに、「軽症」「中等症」「重症」に分類します(表)。
重症度にかかわらず、血糖コントロールが治療の基本となり、血糖コントロールを行ったうえで、抗VEGF薬治療、ステロイド局所投与、レーザー光凝固術、硝子体手術などの治療が実施されます。
表 糖尿病黄斑浮腫の重症度分類
重症度分類 | 眼底所見 | 判定 |
---|---|---|
糖尿病黄斑浮腫なし | 眼底後極部に網膜浮腫による肥厚、硬性白斑を認めない。 | A |
糖尿病黄斑浮腫あり | 眼底後極部に網膜浮腫による肥厚、硬性白斑を認める。 | D2* |
軽症糖尿病黄斑浮腫 | 網膜の肥厚、硬性白斑があるが、黄斑部から離れている。 | D2 |
中等症糖尿病黄斑浮腫 | 網膜の肥厚、硬性白斑があるが、黄斑中心を含まない。 | D2 |
重症糖尿病黄斑浮腫 | 網膜の肥厚、硬性白斑があり、黄斑中心を含む。 | D2 |
*無散瞳眼底カメラにより撮影された眼底写真では糖尿病黄斑浮腫の検出、重症度判定は困難である。 可能な場合に限りさらに軽症、中等症、重症に分類する。 判定区分 A:異常なし B:軽度異常問題なし C:要経過観察 D:要医療(D1:要治療、D2:要精査) E:治療中 |
参考文献
●日本糖尿病眼学会診療ガイドライン委員会:糖尿病網膜症診療ガイドライン(第1版).日本眼科学会雑誌 2020;124(12):955-81.●井上真:糖尿病の眼症状.杏林医学会雑誌 2018;49(3):259-63.
●林思音,他:糖尿病網膜症の治療戦略.日本視機能訓練士協会誌 2018;47:1-5.