新型コロナウイルス感染症の重症度分類
- 公開日: 2025/2/4
新型コロナウイルス感染症の重症度分類は何を判断するもの?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症度分類は、感染症指定医療機関や一般医療機関において、患者さんの状態を適切に評価し、治療方針の決定や入院の必要性を判断するために用いられる基準です。特に救急外来や一般病棟での初期評価、そして経過観察時に活用され、医療リソースの適切な配分や転院の判断にも重要な役割を果たします。
新型コロナウイルス感染症は、急性呼吸器感染症の1つです。感染すると、咽頭痛、鼻汁・鼻閉、疲労感・倦怠感、発熱、関節痛、筋肉痛といった症状がみられますが、軽症の患者さんではほとんどの場合、1週間程度で軽快します。
オミクロン株への置き換わりやワクチンの普及などにより、重症化する患者さんは減少したものの、高齢者や基礎疾患(がん、糖尿病、脳血管疾患、心不全、間質性肺疾患、気管支喘息、肝硬変など)のある患者さんでは、依然として重症化リスクが高いのが現状です。重症化すると呼吸不全に陥り、死に至るおそれもあるため、重症度を評価し、状態に応じた治療・管理を行うことが求められます。
重症度分類を用いるメリットとして、客観的な指標に基づいた重症度の判定が可能で、個々の患者さんの状態に応じて適切な治療を選択できること、医療機関間での情報共有が容易になることなどが挙げられます。ただし、高齢者や基礎疾患のある患者さんでは、典型的な症状を示さないことがあるため、慎重な判断が必要です。
新型コロナウイルス感染症の重症度分類はこう使う!
新型コロナウイルス感染症の重症度分類では、酸素飽和度と臨床状態(呼吸状態)から、新型コロナウイルスを「軽症」「中等症Ⅰ」「中等症Ⅱ」「重症」の4段階で評価します。
軽症の患者さんは、呼吸不全や酸素飽和度の低下は認められず、発熱や咳、咽頭痛といった上気道症状が主にみられます。解熱剤の服用や水分補給といった対症療法が中心となり、自宅療養が一般的ですが、高齢者や基礎疾患を持つ患者さんは重症化リスクが高いため、経過観察が欠かせません。
中等症~重症では酸素飽和度の低下がみられます。93%をカットオフとして、中等症Ⅱでは呼吸不全があると判断され、酸素投与が必要となります。また、酸素療法に加え、抗ウイルス薬やステロイド薬などの治療が行われることもあります。重症の場合は、人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)など、生命維持を目的とした集中治療が行われます。
重症度分類を適切に活用することで、患者さんの状態変化を早期に把握し、適切な医療介入のタイミングを逃さないようにすることが重要です。
表 新型コロナウイルス感染症の重症度分類(医療従事者が評価する基準)
重症度 | 酸素飽和度 | 臨床状態 | 診察のポイント |
---|---|---|---|
軽症 | SpO2≧96% | 呼吸器症状なし or 咳のみで呼吸困難なし いずれの場合であっても肺炎所見を認めない | ・多くが自然軽快するが、急激に病状が進行することもある ・高齢者では全身状態を評価して入院の適応を判断する |
中等症Ⅰ 呼吸不全なし | 93%<SpO2<96% | 呼吸困難、肺炎所見 | ・入院を考慮するなど慎重な観察が望ましい ・低酸素血症があっても呼吸困難を訴えないことがある |
中等症Ⅱ 呼吸不全あり | SpO2≦93% | 酸素投与が必要 | ・呼吸不全の原因を推定 ・高度な医療を行える施設へ転院を検討 |
重症 | ICUに入室 or 人工呼吸器が必要 | ・ウイルス性肺炎とARDSに移行したものがみられる ・個々の患者に応じた治療が重要 | |
・COVID-19 の死因は呼吸不全が多いため、重症度は呼吸器症状(特に呼吸困難)と酸素化を中心に分類した。 ・SpO2を測定し酸素化の状態を客観的に判断することが望ましい。 ・呼吸不全の定義は PaO2≦60 mmHgであり SpO2≦90%に相当するが、SpO2は 3%の誤差が予測されるので SpO2≦93%とした。 ・肺炎の有無を確認するために、可能な範囲で胸部 CT を撮影することが望ましい。 ・酸素飽和度と臨床状態で重症度に差がある場合、重症度の高い方に分類する。 ・重症の定義は厚生労働省の事務連絡に従った。ここに示す重症度はWHOや米国NIH等の重症度とは異なっていることに留意すること。 ・この重症度分類はSARS-CoV-2による肺炎の医療介入における重症度である。入院に関しては、この分類で軽症に該当する患者であっても全身状態などを考慮する必要がある。 |