頭部CT検査の看護|種類、目的、検査前・検査後の観察項目、注意点
- 公開日: 2022/4/29
頭部CT検査とは
頭部CT検査とは、頭部にX線を連続的に照射し、X線の吸収値の差をコンピュータ処理することで、頭蓋内の断層画像を得る検査方法です。撮影時間が短く簡便に行えるため、緊急時やスクリーニングに活用でき、広く普及したデジタル画像撮影法といえます。
頭部CT検査のメリットは、出血性病変や骨病変、頭部外傷の評価に優れていること、体内金属(ペースメーカーなど)があっても撮影が可能であることです。造影剤を使用すれば、脳腫瘍や血管の評価に用いることもできます。デメリットとしては、亜急性期の脳梗塞の診断が難しい点が挙げられます。
頭部CT検査の種類
頭部CT検査には、頭部単純CT(plain CT)、頭部造影CT(造影剤増強CT、contrast enhanced CT)、3D-CT血管造影法(3次元血管造影法、3D-CT angiography:3D-CTA)、灌流CT(perfusion CT)、4D-CT血管造影法(4次元血管造影法、4D-CT angiography:4D-CTA)があります(表)。これらは神経学的検査やその他の情報を踏まえ、目的によって使い分けたり、組み合わせたりして行われます。
表 頭部CT検査の種類
CTの種類 | 撮影方法 | 目的 |
---|---|---|
頭部単純CT | 造影剤を投与せずに撮影する | ●病変部位の特定 ●脳全体の環境の把握、治療法の判断 |
頭部造影CT | 造影剤を静脈内注入し、頭部単純CTよりも描出を強調して撮影する | ●血液脳関門(blood-brain barrier:BBB)の存在しない構造物(脳動脈、脈絡叢、下垂体、松果体、硬膜)の病変の診断 ●BBBの破綻の有無の判断 ●脳腫瘍の良性・悪性の判断 |
3D-CT血管造影法 | 造影剤を静脈内に大量に注入することで血管内に造影剤を充満させ、血管描出を増強して撮影する。また、血管以外の構造物を除外処理することで、血管のみの3D画像が得られる | ●脳動脈病変の診断 ●さまざまな病変と脳動脈・脳静脈との位置関係の把握 |
灌流CT | 造影剤を急速に静脈内投与するか、キセノンガスの吸入させることにより、頭部の特定断面を経時的に連続撮影する | ●脳血流量の把握 |
4D-CT血管造影法 | 3D-CTAに時間軸を加えた撮影法で、動きのある立体画像が得られる | ●拍動している脳動脈の把握 |
また、頭部の断面には、水平断、矢状断、冠状断の3種類がありますが(図)、頭部CTは基本的に水平断で撮影されます。
図 頭部断面の種類頭部CT検査の目的
頭部CT検査は、病変部位を診断するために行います。病変部位の形状、大きさ、性状、周囲および頭蓋内環境全体への影響についても診断することで、早期に適切な治療法を判断するための手立てとなります。
脳梗塞の場合は、部位・範囲、脳浮腫の程度、周囲組織への圧排の程度、出血性梗塞の有無・程度を評価でき、脳出血においては、血腫の部位や大きさ、脳室への穿破について評価することができます。脳神経外科の診療では、症例によって手術が必要かどうか判断する際の重要な情報となります。
頭部CT画像の写り方
CT画像は、水を0、空気を-1000と定めたX線吸収度によって、基本的に黒~白までの濃淡で表示され、空気は黒く、水分は白く写ります。
頭部CTでは、脳白質とほぼ等しい濃淡を示す領域を等吸収域(iso-density area:IDA)、脳白質よりも白い領域を高吸収域(high density area:HDA)、脳白質よりも黒い領域を低吸収域(low density area:LDA)といいます。梗塞巣や浮腫は黒っぽく写り、出血は白っぽく写ります。また、発症時期によっても写り方が変わります。
▶低吸収域⇒黒く見える(空気、髄液、脂肪、発症から数時間経過した梗塞巣、浮腫) ▶高吸収域⇒白く見える(頭蓋骨、石灰化、急性期の出血)
脳梗塞の場合
発症6時間以内の超急性期では、梗塞巣は低吸収域として現れません(脳塞栓症では梗塞が広範囲に及ぶため、早期CT所見で異常を認めることもある)。
発症24時間が経過すると梗塞巣は低吸収域として現れ、発症後1週間以内に低吸収域は鮮明化し、周囲に浮腫を伴い、圧迫所見が出現します。正中が圧迫されていることが確認できる所見を正中偏位といい、発症1~2週間で圧迫所見は改善します。
梗塞巣内に出血性変化を認める場合がありますが、これは心原性脳塞栓症において、閉塞血管の再開通により出血性梗塞を起こすことがあるためです。出血性変化は高吸収域として現れ、点状出血や広範囲の出血として示されます。
発症2~4週間経過すると、新生血管の増生や肉芽組織の形成によって、低吸収域が一時的に不鮮明化します。
脳出血の場合
超急性期~急性期では、血腫は高吸収域として現れ、その周りは低吸収域がみられます。血腫は発症後~6時間は増大するおそれがあり、脳浮腫は発症3日~1週間が最も強く現れます。発症1~2週目になると血腫は徐々に吸収され、高吸収域の範囲は縮小されてみえます。3~4週目にはほぼ等吸収域となり、次第に低吸収域へと移行していきます。
頭部CT検査の看護(検査前・検査後の観察項目、注意点)
検査前
検査の内容、検査により生じる合併症や副作用について、十分な説明が患者さんにされているか、患者さんが説明を理解しているか確認します。必要時は補足説明を行い、安心して検査を受けられるようにします。
検査では患者氏名を確認しますが、ネームバンドでの確認だけでなく、患者さん本人に氏名を名乗ってもらうことが重要です。何度か本人確認があることを必要性も含めて説明しておきます。
造影CT検査では、前処置として食事を摂らないよう指示される場合があるため(食止め)、食事と服薬の指示を前日から確認し、患者さんに伝えます。高齢者では、食止めによって脱水症状を引き起こさないよう、検査前から補液をする場合もあります。
循環器治療薬や降圧薬といった、定期的な内服が必要な薬剤を服用している場合は、検査前に少量の水で内服してもらいます。特に糖尿病治療薬については、検査の時間帯や食事の有無によって服薬・投与の仕方が変わるため、指示を確認するとともに、患者さんの状態(低血糖・高血糖症状の有無)も観察します。
検査室まで移動する際は、患者さんに検査の所要時間を伝え、あらかじめ排泄をすませておくよう伝えます。患者さんの移動に支援が必要な場合は、検査室までの所要時間を勘案し、時間通りに検査室に到着するよう配慮します。また、ヘアピンなど頭部の金属類は全て外しておきます。
検査中
検査室では、患者氏名、検査内容・目的、前処置・前投薬の有無、点滴ラインなどの医療デバイスの確認を行い、検査室担当看護師に引き継ぎます。
造影CTでは造影剤を使用するため、造影剤アレルギーの出現歴、腎機能障害、気管支喘息、食物・薬物アレルギー、重症の甲状腺疾患、妊娠の有無をあらかじめ確認し、申し送ることが必要です。
検査室看護師は検査台まで患者さんを案内し、これからの手順を伝えます。検査に対する緊張感や不安感が強い場合、検査中に一定時間安静にしていることは患者さんにとって大変苦痛です。閉所恐怖症などで、薄暗く閉塞した検査環境に不安を感じる患者さんもいます。所要時間を伝えるほか、掛け物をかけて保温に努めたり、深呼吸を促したりタッチングしたりすることで、患者さんが落ち着いて検査を受けられるようにします。
検査後
検査後は気分不快、悪心、呼吸困難感の有無を確認します。特に造影剤使用後は、皮膚に発赤や掻痒感がないか確認し、飲水および尿排泄を促すことも重要です。腎機能障害を有する患者さんでは、尿量やクレアチニンの変化を確認し、造影剤使用による腎機能悪化がみられないか注意して観察します。
検査後、体調に問題がなければ、普段の生活に速やかに戻れるようにすることも大切です。造影剤使用後の患者さんの場合、食止めとなっていた食事を再開できるように配慮します。
患者さんにとって、検査の結果は気にかかるものです。主治医からの結果説明がいつ頃あるのか見通しを伝えることも患者さんの安心につながります。