分時換気量下限アラームの原因と対応
- 公開日: 2013/11/7
メーカーや機種によって、表示も名称も異なるのが人工呼吸器のアラーム。たくさんの種類をすべて記憶するのは大変難しいことです。そこで、人工呼吸器にとって主要なアラームをピックアップし、原理原則と対応の基本をまとめました。
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人工呼吸器のアラームの原因と対応
どんなアラーム?
患者さんから人工呼吸器に戻ってくる呼気の量をモニターし、1分間の換気量(呼吸回数×1回換気量)が設定値に満たないときに鳴るアラームです。
まず、呼吸回路のはずれや漏れ、折れ曲がり、痰の貯留などによる閉塞で、1回換気量が低下したことが考えられます。
例えば、呼吸回路の一部にわずかなゆるみがある場合に、このアラームが鳴ることがあります。また、気管チューブのカフからのリーク、気管チューブが抜けたり抜けかかっていることも原因になります。
患者さん側の問題としては、無呼吸や呼吸回数の減少、1回換気量の低下が考えられます。特に補助換気モードの場合は、呼吸回路のリークよりも、患者さんの呼吸に問題が起きたことを疑うことが大切です。アラームの設定が高すぎたり、1回換気量や呼気圧、呼吸回数などの設定が不適切なことが原因になることもあります。
圧規定では、体位変換をきっかけに気道内の分泌物が移動して閉塞したり、気管チューブが動いて片肺換気になり、アラームが鳴ることもあります。そこで、人工呼吸器を使用している患者さんの体位変換をするときは、誰かが頭部と気管チューブの保持に責任をもつようにするとよいでしょう。
対応の原理原則
ただちに用手換気を開始し、SpO2などを確認します。一目で回路のはずれなどが発見できれば、元通りにつなぎ直します。
患者さんの換気が確保できたのち、回路のリークをしっかりと確認します。気管チューブのカフからのリーク、各接続部のゆるみや破損は小さい可能性もあるので、注意深く調べます。気管チューブが抜けたり、カフが破損しているときには、入れ替えが必要です。
患者さんの呼吸音や胸郭の動き、モニターの呼吸曲線にも注目し、気管チューブが痰で閉塞している場合は気管内吸引を行います。
また、病態の悪化や薬物の影響などにより、患者さんの呼吸に問題が疑われる場合は、処置とともに1回換気量や呼吸数などの設定を変更する必要があるため、速やかに医師に報告します。
設定値のめやす
1. 安定状態での実測値の70 ~ 80%程度に設定する
2. 補助換気モードの場合は、換気量の変動が大きいので、それよりやや少なく設定することもある
(図)分時換気量下限アラーム対応の流れ
Q&A
Q. COPDの患者さんに100%酸素を投与したら、分時換気量下限アラームが鳴り出しました。この理由は何ですか?
A. COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、慢性の呼吸不全を示す病態であり、このような患者さんは呼吸のコントロールを延髄のCO2受容体ではなく、末梢のO2受容体で行っています。そこで100%酸素を投与することで動脈血中酸素分圧の過度の上昇を招くと、呼吸が抑制され、換気が下がる場合があります。
換気が落ちれば血中のCO2分圧はさらに上昇し、CO2ナルコーシスを招きます。ただし挿管により換気は維持できるため、100%酸素は挿管して使用すべきという意見もあります。
*次回は「分時換気量上限アラーム」の原因と対応について解説します。
(『ナース専科マガジン2012年12月増刊号 一冊まるごと呼吸ケア』より転載)